左右の脈の違い

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 東洋医学では橈骨動脈と言って、手首の動脈の拍動を診る脈診という診察法がありますが、脈を診るだけでいろいろなことが分かります。

 例えば、運動をしているときであれば、拍動も強く、拍動のスピードが早いですよね。運動をしていないのに、拍動が強く、拍動のスピードが早い場合は、身体に熱があるのではないかと考えていきます。

 

 身体に熱があると言っても発熱があるかどうかは重要ではありません。発熱をしていれば、身体が熱く、脈が強くて早くなっているのは当然ですが、発熱がないのにも関わらず、脈が強くて早いというのは異常だと考えていきます。

 

 これだけではなく、脈の強さ、触れた感覚によって、いろいろな分類をして、身体の状態を想像していくのが脈診という診察法になるので、東洋医学を行っている漢方や鍼灸ではよく脈診を行います。症状として出てきている物は、話しを聞けば分かりますが、症状が出る前の身体の状態を診る方法とも言えるので、身体の声を聞くという表現に近いのではないかと思います。

 

 脈診は片側の脈をみて診察することが出来るのですが、左右差を診て、身体の状態を考えて行くことも出来ます。身体の左右は陰陽で分けることができ、左は陽、右は陰になり、陽は気、陰は血になるので、左右の脈の違いから、気の病なのか、血の病なのかを考えて行くことが出来ます。

 

 陰陽の分類は他にも使っていくことが出来、陽は表、陰は裏になるので、病が表にあるのか裏にあるのかを考えて行くこともできます。身体の外側の病は治りやすく、身体の内側の病は治りにくいと考えると、左右の脈の違いによって、病態の予後を考えて行くことが出来ます。

 

 通常は、脈診だけではなく、問診やその他の診察を行っていくので、本当に正しいのかを何度も確認をしていきますが、脈診だけでも身体から情報を得ることが出来るので、脈診をした結果によって、身体の状態に対していろいろと考えていくことが可能になります。

 

 左右の脈の違いを考えていくには、例えば、左の方が弱ければ気の病であり、表側の病と考えていくことが出来るだけではなく、現在の身体の状態が悪くなってからそれほど時間がかかっていないのではないかと考えることができ、治療の効果も良さそうで、治るのが早いのではないかと考えることもできます。

 

 逆に、右の方が弱ければ血の病であり、裏側の病と考えていくことが出来るだけではなく、現在の身体の状態が悪くなってから時間が経過していると考えることが出来るので、治療の効果があまり出ないし、治るまでは時間がかかるのではないかと考えていくことができます。

 

 東洋医学だけではなく、現代医学でも脈の左右差を診ていくことがありますが、その場合は動脈の狭窄が発生しているのではないかと考えることがあるので、一般の方が触れて分かるぐらい、脈の違いが大きいと感じるようであれば、一度、病院で相談をするのがいいと思いますね。

 

 左右の脈の差という単純な物をさらに虚実という概念と合わせて考えていくと、身体の診方についての深みが出てくるようになります。

 

 例えば、左が弱くて、右が強い場合、外側は気と言え、内側は血と言えるので、気は虚で、血は実と考えていくことができます。その場合は、弁証として考えていけば、気虚血瘀の状態として考えていくことができるので、気は補、血は瀉として考えることが可能になります。

 

 または、外側の力が内側に向かってしまっていると考えることもが出来るので、治療を外側に行うことで、内側に向かってしまった力を外側に向かわせて、身体のバランスを整えるという考え方をすることが出来るので、治療は皮膚表層に対して行うことがいいと考えることが可能になります。

 

 一方、右が弱くて、左が強い場合は先ほどの例とは逆になるので、気は実、血は虚と考えて行くことが出来、弁証としては気滞血虚と考えていくことができます。気滞血虚は中医学の用語ではあまり見られない物ですが、気の血を生成する気化の働きが低下をしたら、血虚にもなるので、発生する可能性はありますね。

 

 先ほどに力の方向で考えていくときには、内側の力が外側に向かってしまっていると考えれば、外側に向かった力を内側に向かわせて身体のバランスを整えると考えれば、治療は、内側に対して行うことが必要なので、刺入をした方がいいのではないかと考えて行くことが出来ます。

 

 こうやって考えていくと、ただ単に左右の脈が違うかもという感覚だけでしかないものでも、身体の状態をいろいろと考えていくことが出来るので、陰陽や気血という東洋医学をしっかりと知っておくことが大切になりますね。

 

 左右差に関しては、有名なのが比較脈診の一つである、六部定位脈診があるので、六部定位脈診を使うと、臓腑の問題を考えていくことができます。

 

 六部定位脈診は、両手の橈骨動脈を指三本で診ていく方法で、手首側を寸口、橈骨茎状突起の付近が関上、その上部が尺中といい、左右で6か所の場所があるので、六臓六腑を配当して、どの臓腑の異常が生じているのかを判断していく方法です。

 

 寸口は上焦(胸)、関上は中焦(お腹)、尺中は下焦(下腹部)として考えていくことが出来るので、診方を足していくことで、身体の状態をいろいろと推察していくことが出来ます。

 

 左右の脈が違うかなと思ったときには、身体の状態をいろいろと考えていくことが出来るので、東洋医学を勉強している人に取っては大切な情報の一つになります。

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