飛揚は足太陽経の絡穴で、腓腹筋外側下縁とアキレス腱の間、崑崙の上方7寸にあります。
学生時代から数年前まで、飛揚のツボの良さが全く分からなかったのですが、絡穴だし、いろいろな書籍の中でも出てくるツボなので、効果があるはずなので、何度も使ってみたのですが、数年前に飛揚が分かったと理解できた経穴です。
飛揚という言葉は、漢の高祖が大きな風が起こることを飛揚と表現をしたことから、勢いがあって動きが活発という意味が入ってくるもので、膀胱経から腎経に繋がるということから、膀胱の絡穴を飛揚と名づけたのではないかと考えられています。
飛揚のツボの別名は厥陽とも言われていたようで、陽が尽きて、陰に向かう絡穴という意味が込められているようなので、腎経との関係が密接だと考えられます。
膀胱経を使用すると背腰部、下肢後面が緩むだけではなく、流注として脳や目にもつながっているので、頭や目がすっきりしたと言われることが多い経絡ですね。
学生の頃から、筋肉をしっかりと触り分けられなければいけないし、触りにくいところにある経穴だなと思っていて、現場に出ても同じように思っていたのですが、自分や人の下腿をマッサージしていくことで、下腿三頭筋の構造と位置が把握できるようになったから、最近は鍼で効果が出るようにもなったのだと思います。
自分の治療、患者さんの治療でも下腿が緩むとお腹の調子がよくなるだけではなく、背腰部の辛さも改善することが多いので、一時期、下腿に集中して施術をしている時期が1年ぐらいあったのですが、その時に、いろいろな方の下腿を触って、下腿三頭筋の構造と位置だけではなく、硬結、治療効果の高い場所を探すようになって、飛揚が具体的な構造として捉えられるようになってきました。
鍼に持ち代えたときに、手技で触っていた、線維上の硬結を狙うようになってからは、飛揚に鍼を刺入すると、下腿全体が緩むだけではなく、背腰部が緩むのを実感することになりました。
以前は刺入深度を使っていたのですが、最近では飛揚の刺入深度は1㎝もあれば十分だと思うようになりました。以前と変わったと感じたのは、刺入方向を変えるようになりました。
以前の刺入方向は、脛骨後面に向けて刺入をしていたのですが、最近では、腓腹筋とヒラメ筋の間をはがすようにイメージをして刺入をするようになりました。方向としては腎経に向けてになるので、やっぱり経絡の場所は意識をしないといけないのだなと思いました。
ツボに刺入をするときには中の構造を意識することはあるのですが、他の経絡の位置を確認して刺入をしていくことが大切なのだなと理解できた感じですね。絡穴であれば、表裏経の位置を確認して、その方向に向けて刺入することが大切だと考えるようになったので、ずっと悩んでいた甲斐がありました。
飛揚から腎経に向けて刺入をしていくと、下腿の皮下脂肪が少なく、筋量がそれなりにある人であれば5㎜程度で抵抗を感じることが多いですし、そうでない方でも1㎝あれば非常に細い線のような硬結に届くと思います。
索状の硬結に触れて刺入をしていくと、鍼に硬結が食いつくような感じがあるのですが、その状態まで刺入をすると、響きが強くなることが多いので、手前で止めるようにしています。
治療の効果としては、どちらでも同じぐらいの効果があると感じているので、最近は、響きを求めていないです。最初の頃は、刺入して当っているのかがはっきりと分からないときもあったので、少し響きを出していたのですが、最近は、硬結に触れて、下腿や他の部位に緩みが出たら刺入を止めるようにしています。
飛揚の硬結が緩むと腰痛も大きく改善することが多いので、最近はぎっくり腰の治療だけではなく、腰が痛くなりやすい人の飛揚を確認して、予防としても使うことが多くなりました。飛揚以上の効果が出るところがあれば、そちらを使っていくと思いますが、最近は飛揚で満足をしています。そんなことを言っても、まだ自分が使いこなせていないツボを研究すると思うので、いつかはわかりませんが、腰痛には違うツボを使うようになるでしょうね。
膀胱経は後頭部だけではなく、目のところまで流注をしているので、後頭部の痛み、目の疲労でも飛揚を使っていくことが多いです。
飛揚を使うと下腿の浮腫みが一気に改善をすることが多いので、下腿の浮腫み、下腿の冷えがある人にもよく使うようになっていますね。治療に敏感な人だと、飛揚の硬結に鍼が触れて少ししたら、下腿が緩んで温まってくると感じる人が多いので、冬の時期にも外せないツボの一つになりましたね。
こうやって、自分の得意なツボが出てきて、治療に取り入れ、他に特異なところが出てきて、今まで使っていたツボを使わなくなり、使いこなせるツボが多くなっていくのが鍼灸の臨床なのだろうなと勝手に思っています。