相手の身体に触れると言うことは、身体に負担にならない触り方を出来るということでもあるので、触れ方を身につけていくことが必要になります。
相手がリラックスをした状態は、力が伝わりやすい状態になっているので、早すぎない、遅すぎない自然な触れ方が出来ていると、身体にゆっくりと力が伝わり、その力が全身に波のように加わっていくので、相手の身体が揺れることが多いです。
早すぎない、遅すぎない触れ方というのは、治療者側も力が抜けた状態になっていることが大切で、力を加えようとしたときに無理な動きになっていないことが重要になります。人の身体を触っていて疲れてしまうというのは、自分の身体に無理な力が入っていることが多いので、まずは脱力をすることが大切ですね。
身体が揺れる、早すぎない、遅すぎないことを理解するために使えるのが、手技療法で行われる金魚運動(金魚ゆらし)ですね。そんな名前なのかは分からないですが、金魚が泳いでいるように揺れるというので、金魚と言っていたような気がします。または単純に全身揺らしですかね。
受ける側が仰向けでベッドに寝て脱力をします。揺らす側は足側に立ち、利き手で両足関節を保持します。手の大きさが小さい人は難しければ両手で保持するといいのですが、両手で揺らす方が難しい傾向にあります。
イメージとしては両足関節をひもで結んだ状態にすると思ってもらえればいいかと思います。保持した手で足首を左右に揺らします。慣れてくれば揺らすことで全身が揺れるのを体感することができます。左右に揺らすというのがイメージとして分かりにくければ、両足関節を左右に倒す(回旋)ようにすると出来ると思います。
左右への動きがリズミカルに行うことができると、揺れる振動が足から膝、股関節、腹部、胸部、頚部に伝わっていくので、足関節を揺らす刺激をすると、頚部が左右に回旋する動作を起こさせることができます。
手技療法で慣れている人であれば簡単に出来る人が多いのですが、初心者は揺らすことが出来ない人が多いので、揺らしている力がどこかで停滞をしてしまいます。
揺らし運動を行っていくと、微振動を身体に与えていくことができるので、関節や筋肉を緩ませることができます。治療の前に全身揺らしを行えば、過緊張の物がほぐれていき、治療で触りやすくなりますし、治療後に使っていけば、緩んだところと緩んでいないところのバランスを取ることができるので、仕上げとして使うことができます。
鍼灸治療の中に取りいえることもできますが、手技療法だと行っている人も結構いるのではないですかね。
この左右に動かす力のリズムが身体に刺激を伝えるリズムでもあるので、相手の身体に触れる力の基礎として考えていくことができます。
触るスピードが適切であれば、例えば、背部の触診で触れたときにも心地よい振動が身体に力として伝わり、全身に波及する力になるので、鍼を刺すだけではない効果が生まれます。
鍼灸の治療が上手い方は鍼を刺す技術が高いだけではなく、触れ方が気持ちいいので、鍼灸プラスアルファの効果が発揮されているのだろうなと思います。
手技でも触れ方な上手な方に軽擦をしてもらうと、それだけでも揺れが出るし、緩みが出てくるので、適切な触れ方のスピードと力はあるなといつも思っています。
ただ、そのスピードは時間で計測すると、どれぐらいになるのかという数値を出すことが難しいので、この金魚運動を出来る手というのが、一つの指標ではないのかなと思います。友人たちとやったときに、出来る人は当たり前のようにでき、出来ない人は全くできないという状態で、出来る人は確かに触り方がいいなと思う人たちでした。
鍼灸をするのであれば、身体を触りまくった方がいいという話がありますが、確かにその通りだろうなと思いますね。手技は身体を理解するために重要な物ですが、ただ押すということにだけ集中しているようだと、触る手を作ることができないので、普段からどういった触れ方がいいのかを考えながら触っていくことが将来の手を作っていくことになると思います。