腎精不足と腎気虚の違い

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 学生の頃は何が違うのだか分からないので、腎精不足も腎気虚も似たようなものとして考えていたのですが、厳密な違いがあるというのは理解を出来ているので、腎精不足と腎気虚の違いについて書いてみたいと思います。

 腎精不足と腎気虚は腎の働きが低下をしているということでは同じことなので、意味としては似たような物になりますね。何が違うかと言うと、腎の生理と大きく関係をするので、腎の働きである蔵精、主水、納気について知っている必要があります。

 

 蔵精は生命力と関係をする精を納めておくという意味であり、精がおさまっていることで腎が機能出来ると言う琴なので、腎の働きが低下をしているということは腎精の問題が発生をしていると考えることが出来ますね。この考えがもとになると、腎精不足と腎気虚は似たようなものだと言えます。

 

 主水の働きは、身体にある余分な水分を排泄する機能があり、膀胱からの排尿調節をする機能になります。主水の働きが低下をすると排尿調節をすることができないので、尿が漏れてしまったり、尿が出なくなったりしてしまいます。

 

 納気作用は呼吸の中で、吸気と関係をしていくので、納気作用が低下をしてしまうと、息を吸うことが難しくなってくるので、呼吸困難が発生をしてしまいます。

 

 腎精不足は精が蔵精の機能が低下をしていると考えることができるもので、腎気虚は蔵精、主水、納気の働きが低下をしているものになるので、範囲が広くなります。

 

 精は身体の成長と発育、生殖機能と強く関係をするので、成長と発育、生殖の問題は腎精不足として考えていくことが出来ます。

 

 腎気虚は蔵精、主水、納気の働きが低下をしているものなので、成長、発育、生殖、排泄、吸気の問題として考えることができるので、この考え方で言えば、腎精不足と腎気虚は同じ物として考えることが出来てしまいます。

 

 それなのに、何故、二つ物を名前で分けているのかと言えば、身体の状態を示すためには重要な考え方があるからだと思います。

 

 腎精は身体の成長、発育、生殖と関係をするので、成長障害、発育障害、生殖機能が発揮する力がないという先天的な問題だと考えられることを示すことが多いですね。成長・発育障害と関係をするところでは、早期老化も腎精不足と強く関係をする物と言えます。

 

 腎精が充実していると、骨や髄の働きが活発になるので、骨は髄を生じ、髄は骨を栄養することができ、髄がまた生まれて充実するので、髄海は力を発揮することになるので、頭部・脳の働きが正常になるので、記憶・耳の機能が発揮をでき、弱くなってしまうとめまいになってしまいます。

 

 腎気虚は腎気不固と腎不納気と分けて考えていくのですが、腎気不固は蔵精の低下、主水の低下にも関与をするので、腎の封藏という働きが低下をした病能になります。主水は排泄に関与をするので、不固の状態だと、尿が漏れてしまう状態になってしまいます。

 

 蔵精の低下ということでは、腎精不足と同じことになってしまうのですが、腎精不足は先天的な異常、構造的な異常、生命力の強い低下がある場合に用いる物になります。腎気不固での蔵精低下は、生殖機能は十分なはずなのに、遺精(いせい:精が漏れ出す)や流産・早産が起こります。妊娠は、胎児を身体の中で押さえておくという封藏の働きによって成り立っているので、生殖器に問題がなく、遺精・流産・早産が起きているようであれば、腎気不固として考えることになります。

 

 腎不納気は、納気作用の低下になるので、吸気をすることができないので、咳嗽や喘息、呼吸困難などの呼吸に関する症状が現れます。

 

 腎精不足か腎気虚かを悩んだとしたら、呼吸の問題が出ている場合は、腎気虚と考えていくことが出来、生殖器の問題や発育、老化に異常が発生をしているときに、腎精不足か腎気虚かを考えていくことが大切になります。

 

 腎精不足・腎気虚(特に腎気不固)は封藏が低下をしているということでは同じ意味になりますが、生命力・構造の問題が発生しているようであれば、腎精不足の方が適していると言えます。腎気不固は下焦の話しになることが多いので、頭部の症状が発生をしているときには、腎精不足と考えていく方がいいですね。

 

 個人で治療をする場合であれば、腎の働きが弱っているという意味では全く同じなのですが、生理で説明をするときには違いがあります。中医学の用語は、用語で意味を伝えるという部分があるので、カルテを使って情報共有するのであれば、腎精不足と腎気虚を使い分ける方がいいと思います。

 

 例えば、流産があった方に対する弁証が腎精不足であれば、治療にはかなり時間がかかるし、難しいなと思うでしょうし、精を補わないといけないので、後天の精と関係する脾を治療で使わないといけないということになるでしょうね。さらに症状は頭部まで出てきているようであれば、髄海にも問題が生じているということになるので、髄海の治療を考えないといけないですね。

 

 流産があった方に対する弁証が腎気虚であれば、治療は腎の働きを強めていけば、改善をすることが多いので、治療はやりやすいかなと考えることが出来ますね。

 

 お互いが用語と意味を覚えていれば、十分に通用するものなのでしょうが、卒業して1年も経てば、学校で習ったことは忘れてしまうことが多いと言う状況でしょうし、同級生や鍼灸師と話しをしても用語を忘れていることが多いので、お互いに交流するために使うという場面は少ないかもしれないですね。

 

 さらに、流派として、こういった用語とは全く違う治療方法もあり、そういった方とは同じ用語で話しをするのは難しいので、病能の把握は同じでも単語が違う場合も情報交換が難しい状態になりますね。

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