急脈は足厥陰肝経の経穴で、恥骨結合上縁の高さで正中から外方2寸5分にある経穴です。
身体の正中線から上前腸骨棘までは6寸なので、約半分のところが急脈になります。急脈の「急」は脈の去来についての意味があり、「脈」は脈なので、位置的には血管裂孔に近い場所になるので、大腿動・静脈と関係をしているという意味になります。
位置的に微妙なところにあるので臨床の中で使おうとすると、かなり注意をしないといけないところになりますし、男性が女性の急脈に刺入をするのであれば、余程の信頼関係がないと難しい場所ではないかと思います。
急脈は少腹の痛みや疝気に対して治療効果があると言われていますが、位置的には少腹の下になるので、局所的にも経脈の流注としても治療効果が高いので当然かもしれないですね。
疝気は、冷えによって睾丸から下腹部まで冷えるような痛みなので、下腹部に近い急脈は治療として効果的なのは当然でしょうね。
臨床で使いにくいところなのに、ブログにするのはどうかというところなのですが、急脈は個人的には好きなので、自分の治療穴として使っているところです。どういったときに使うかと言うと、腰が少しだるくなってきたかなと感じたときに、急脈、その下部、左右に鍼をすることが多いです。
普段、刺入したことがない人に取ってみたら、痛いのではないかと思うかもしれませんが、痛みを感じることも少ないですし、響きも少ないことが多いと思いますよ。ただ、皮膚の滑りが大きいところなので、押手をしっかりと構えて、鍼管を置いたときにしっかりとずれないようにしておかないと、切皮した後の刺入がずれてしまうので、切皮する前の押手と鍼管の押し当てが重要なところになります。
刺入深度は、2㎝程度で十分に効果的だと思います。刺入をした後の響きはその場所に感じることもあれば、股関節の中の方に感じることもありますね。付近には筋裂孔があり、腸腰筋が出てくる場所にもなるので、急脈の外方も使っていくと、腸腰筋への刺鍼ができるので、腸腰筋が硬くなってしまった腰痛であれば効果的ですね。
急脈は個人的には、腰の状態を診断する場所として考えているので、急脈が硬くなってきたら腰痛が発生をしやすくなる前駆状態だと考えるようになっているので、たまに急脈の硬さを確認しています。
臨床の中では使いにくいところですが、手技療法であれば使えるギリギリの範囲だと思うので、手根で押すことが多い場所です。手根で触れるときには仰向けの状態で患者さんが寝ているときに、右の急脈に刺激をするのであれば、右側・左側のどちらに立っていても出来るのですが、急脈に手根がくるようにして、外方にはがすように使っていくことが多いです。
大腿前面は筋層が分かれていますし、一つ一つの厚みが薄いところになるので、圧をかけていくと滑ってしまうことがあるので、大腿前面は治療者同士で触る練習をよくしておく方がいいですね。
手技で使っていくときには、急脈に対して10秒ぐらい持続圧迫を加えていくと足への血流が減少していくのですが、一気に手を離すと、下肢まで流れるような感覚があり、すっきりもしやすいので、たまに使っていますね。その場合は、両方の急脈を同時に行うことが多いですね。
急脈からベッドの方向に押すのではなく、第2・3腰椎前面の方向に向けて持続圧を加えていくと、お腹に響きを感じる人が多いので、消化器系の疾患がある人には、上方に向けて圧を加えることが多いですね。
患者さんには症状によって急脈の使い方を分けているのですが、自分には刺入が出来るので、いろいろと使っていますね。
急脈で非常に気持ちがいいのは、股関節の奥にジワって感じる程度の響きですね。毎回、当る訳ではないのですが、ちょっとは感じる方が鍼をした後がすっきりしやすいですね。足が冷えているときで、下肢に治療をしても改善をしない場合は、急脈に刺入をしていくことも多いです。