上脘・中脘・下脘―三脘

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 任脈の経穴に上脘・中脘・下脘と同じような名前のツボが並んでいますが、働きに違いがあるのでしょうか。

 上脘・中脘・下脘を個別に考える前に、同じ漢字である脘(かん)とは何かを考えると、この漢字の意味には胃という意味が含まれていくので、上脘・中脘・下脘は胃上・胃中・胃下と考えていくこともできます。

 

 上脘は任脈、足陽明胃経、手太陽小腸経との交会穴、中脘は胃の募穴であり、任脈、足陽明胃経、手太陽小腸経、手少陽三焦経との交会穴、下脘は任脈、足太陰脾経との交会穴になるので、上脘・中脘・下脘は腹部との関係が密接と言えます。

 

 胃の働きは受納、腐熟、通降と言われていき、水穀(飲食物)が入ってくるところであり、下に降りるのが正常な働きになります。入ってくる門は賁門と言われ、出ていく場所は幽門と言えるので、上脘と賁門と関係をしやすく、下脘は幽門と関係をしやすいと考えていくことができます。

 

 胃の病変は食事に関係することも多いのですが、降りる性質を持っているので、降りることが出来ないために、上に昇ってくる上逆とも関係をしやすいので胃気上逆という状態を発生させてしまいます。胃気上逆に関しては過去のブログを参考にしてください。

気逆という考え方

 

 気逆を解消していくためには入口が開き、中の働きが活発になるだけではなく、下の入り口が開かないと胃の機能である降りることができなくなるので、腹部疾患に対して用いていく場合は、上脘・中脘・下脘を同時に使う方が効果的だと考えられます。

 

 食べ物が詰まっておりないようであれば、下脘で開き、下へ降ろす力を中脘で強めていく必要があるので、病能がどのように起きていて、どういう治療がしたいかによって治療方法を分けてみるのもいいと思います。

 

 上脘・中脘・下脘に対しての刺入深度は、1~1.5㎝で十分だと思います。それ以上の刺入を行うと、強い響きが出ることが多いのですね。個人的には、1㎝以下で使うことが多いですね。

 

 お灸を使うこともありますし、灸頭鍼も使うこともあるのですが、その際も3つ同時に使うことが多いですね。カルテに書くのであれば三脘としたら楽でしょうね。

 

 胃の六つ灸と三脘を使っていけば、お腹の調子が大きく改善をすることが多そうですよね。さらに足三里と三陰交でも足したらかなり効果が高そうな印象ですね。

 

 腹部に吸角を使っていくこともできるので、大き目の吸角を使っていけば、上脘・下脘にも刺激を入れられるので、効果的なのですが、お腹の吸角は付いているときには少し息苦しい感じが生じることがありますね。

 

 近い場所に三本の鍼を刺入することになるので、押手の位置を考えて刺入していかないと刺入した鍼が邪魔になってしまうので注意が必要ですね。例えば、仰向けで患者さんの左腕側に立って刺入をしていく場合、上脘から刺入をしていくのが刺入した鍼が邪魔になることがないので、上から刺入をしていく方がいいですよ。

 

 近い場所に何本かの鍼を刺入していく場合には強い響きや痛みが生じてしまうと鍼を刺入するのが難しくなるので、切皮と数㎜だけ刺入をしておいて、抜けない程度にして、三本の切皮が終わってから、徐々にそれぞれを刺入していくと安全に刺入することができます。

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