つわりと東洋医学

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 つわりは一般的には妊娠4~6週目ぐらいから始まり、妊娠12~16週目ぐらいには落ち着いてくることが多く、つわりのピークは妊娠7~9週目ぐらいになることが多いです。

 つわりは妊娠悪阻と表現をされることもありますが、原因としては様々なことが考えることができますが、東洋医学で考える妊娠を頭に入れておくことが重要になります。

 

 妊娠すると、衝脈の働きが盛んになり、子宮(胞宮)に血を沢山流入させることで、胎児の成長を促していきますが、血の調整を行っていくのが肝の働きになり、肝は生殖器の働きを維持することにも関わるので、妊娠中に重要なのは、血と肝と考えていくことができます。

 

 血の生成を行っていくのには、脾の働きと胃の働きが重要になるので、脾胃が健康に働くことで、血を生成していくことが出来るので、胎児の成長する力となる血が多くつくられることになります。

 

 つわりが発生をしている状態は、悪心・嘔吐が発生をしているということになるのですが、悪心・嘔吐は胃の降ろす働きが低下をして発生してしまうものになるので、どんな原因があったとしても胃の病変と考えていくことができます。

 

 先ほども書いたように、妊娠時には胃が活発に働かなければいけないので、車で言えば、通常走行ではなく、高速走行の状態になっているので、少しの刺激でも大きな変化をきたしてしまうことがあります。

 

 つわりで多い状態では、臭いを嗅ぐとだめになるということで、嗅覚が敏感になってしまい、妊娠悪阻になってしまうことがありますが、この状態を東洋医学で考えていくと、臭いを嗅ぐことで、肺に関わり、肺は肺経に関係をするので、肺経上にも影響を及ぼすことになります。

 

 では、肺経の流注を考えていくと、肺経は中焦から生じる物であり、胃の上口(賁門)とも関係をするので、鼻から入った刺激は、肺、肺経を伝わり、賁門にも影響をしてしまうので、つわりになってしまうことがあります。

 

 この場合は、肺の治療をしても改善していく可能性もありますが、通常走行ではなく、高速走行をしている胃が正常に働けるように助けてあげる方が大切になるので、妊娠悪阻の場合は、脾胃の治療を加えていくことが大切になります。

 

 ただ、脾と胃の働きを考えたときには、脾は昇の性質があり、胃は降の性質があるので、あまりにも胃の機能を高めてしまうと降の方向の力が強くなってしまうので、注意が必要になります。

 

 妊娠中は胎児が体外に出てしまわないように、脾の昇という性質で妊娠維持にも関係をしており、おおよその安定期と言われる妊娠16週目以降まで脾が中心で妊娠維持をしているので、昇という症状である悪心・嘔吐が発生をしてしまうのはどうしようもない状態とも言えます。

 

 ただ、あまりにも妊娠悪阻が強いと、食事を取れないので、母体の健康、胎児の成長にも関わってしまうので、妊娠悪阻が発生している状態では、脾の働きを補助してあげると同時に胃の機能も少し強めて、昇という状態になりすぎないように管理をしていくことが大切です。

 

 妊娠悪阻の基本は、脾胃の働きから考えていくことになるのですが、その他の臓腑は脾胃の働きにも関係をしていて、外邪は脾胃にも影響をしてしまうために、妊娠悪阻の発生している状態でも違いがある場合があります。

 

 単純に昔からお腹が弱い人は、脾胃の働きが虚弱な傾向があるので、この場合は、脾胃の働きを強めていくことが大切になります。

 

 肺と胃は経絡の走行で肝経をしているので、寒すぎたり、熱すぎたりすると、妊娠悪阻が発生をしてしまいやすいので、もともと風邪(かぜ)をひき易いような人では発生をしていきやすくなるので、妊娠前から肺を強めておくと、胃の働きを阻害しにくくなるので、妊娠前からの治療も大切になります。

 

 脾胃の働きを阻害する物として代表的なものに、痰湿があり、甘い物、油もの、味の濃い物は痰湿の強い傾向があるので、妊娠初期から注意をしていくことが大切です。妊娠をしたから精の付く物を食べようとしてしまうと、痰湿が強い物を摂取してしまうことになるので、妊娠をしたら、食事に注意をするようにしたいところですね。

 

 脾胃の働きを補助するのは、肝の働きである疏泄になるので、過度なストレスが発生をすると、肝の伸びやかな性質が失われてしまい、肝の機能低下を発生させてしまうために、脾胃の働きにも影響が出てしまうことがあります。

 

 つわりと東洋医学で考えた場合は、脾胃の昇降の問題として捉えていくことが基本になるのですが、東洋医学では症状が発生する原因は複数ありえると考えていくので、その人のつわりがどういったときに強く発生をするのかを確認することで原因を分けて行くことが出来ます。

 

 脾胃の昇降が問題になっている場合だったら、食事で摂取する物は、甘い物、油もの、濃い味は避けるようにした方がいいですし、何も入らないぐらいひどい状態だったら、足三里を自分で揉むのがいいと思います。

 

 環境変化によって刺激になりやすいのであれば、空調を管理して、肌に余計な刺激を加えないようにすることが大切ですね。

 

 ストレスは子どもを産むというストレスの場合もあれば、家族間のストレスのこともあるので、自分の時間を取るようにして、楽に過ごせるように工夫をするのもいいのかもしれないですね。

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