半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)

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 漢方ではいろいろな物が使われていきますが、半夏瀉心湯もよく使われている漢方薬なのではないでしょうか。

 半夏瀉心湯は心窩部に硬結がみられているときに使われやすい物ですが、この硬結が何故、生じているのかを考えたときに、気のうっ滞が生じていると考えることができます。気のうっ滞を生じている原因としては、肝気の動きが停滞してしまったことにより、脾胃の働きが阻害をされてしまい、心窩部のところにつまりが生じてしまったことによって生じていると考えていくことができます。

 

 脾の働きには、昇清という昇らせる力があり、胃の働きには通降(降濁)という降ろす力がありますが、心窩部に気機のうっ滞が生じているために、昇降が問題になってしまっていると考えていくことができます。

 

 昇降に問題が生じてしまったことに起きる症状は、悪心、嘔吐、下痢があり、気のうっ滞から脾の昇降が協調して働けていない状態が中心になってしまいます。気機がうっ滞をしてしまうと、上にある陽気が下に降りることができなくなり、下にある陰気が上に昇ることが出来なくなってしまうために、上はのぼせ、下は冷えるという寒熱がともにある状態が発生をしてしまいます。

 

 病能としては身体に停滞が発生をしているので、下から出すのがいいのですが、半夏瀉心湯は下に降ろして出せないという人に使っていくことになります。半夏瀉心湯によって、気機の昇降を助けていくことになるのですが、停滞している物は、下から出すということになるので、半夏瀉心湯を使っていくと、下痢気味になる人も多いのではないかと思います。

 

 私も試しに使ってみたことがあるのですが、いつもよりは便の状態が柔らかくなっていったので、心窩部にある硬結を下から排出をするイメージでいいのではないかと思います。

 

 気機の停滞によって、上は鬱熱の状態になってしまい、身体の水もうまく流せなくなってしまうために、停滞した水が痰湿となり、熱を帯びてしまっているので、湿熱もある状態と言えるかもしれません。

 

 他の漢方薬で下方を用いたときに、上手く排泄できないと、脾胃の昇降が崩れてしまうために、半夏瀉心湯を使う病能になってしまうことがあると言えます。

 

 半夏瀉心湯に含まれる生薬では、半夏(はんげ)・乾姜(かんきょう)・黄芩(おうごん)・黄連(おうれん)によって、心窩部の硬結を発散させます。乾姜は身体を温める作用もあるので、冷えを取り除くのにも効果的になります。

 

 黄芩・黄連は熱を取り去る働きがあるので、上部に停滞してしまっている熱を取り除く働きがあります。半夏は胃気上逆に効果があるものなので、胃の通降の働きを強めて、阻滞している物を排泄させる働きがあります。

 

 人参(にんじん)・炙甘草(しゃかんぞう)・大棗(たいそう)は脾の働きを強めることになるので、気機が昇るのを助ける働きがあります。

 

 脾胃に対して働きかけることによって、熱を取り除き、水の停滞を乾燥させることによって身体の状態を整えることにもなります。

 

 鍼灸で半夏瀉心湯のような働きを考えていくのであれば、腹部の停滞が問題になってくるので、上脘・中脘・下脘によって心窩部の硬結に対してアプローチしていくだけではなく、百会によって昇清作用を助け、足三里によって通降作用を高めていけば、上下の配穴も入るので効果的なのではないかと思います。

 

 上のつまり具合が酷い場合は、内関を使っていくとより効果的でしょうし、内関を使っていくのであれば、公孫を使っていけば、陰維脈衝脈を使った上下配穴にもなるので、治療効果があがるのではないかと思います。

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