臨床では答えは導き出すもの

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 何かに悩んだら、答えが欲しいと思うのが人情ですが、この世の中において正確な答えはないですよね。

 これは鍼灸、東洋医学も同じで、患者さんの状態を自分で予測をしてみて、それに合った治療をしたら、よくなったのが分かるということなので、東洋医学でも完全なる答えはないと思います。

 

 東洋医学だけではなく、現代医学も患者さんの身体の状態を検査して、細かく見るとことで、この病気ではないかと考え、治療をし、結果が出たら、考えたことが合っていたのだとわかるので、完全な答えが最初にある訳ではないので、自分で考え続けていくことが大切になります。

 

 鍼灸の資格を取ってすぐの状態では、教科書として習っているので、患者さんの状態も教科書的な方が多いと考えることがありますが、患者さんは医療的な知識がある訳ではないですし、正確に自分の身体の病状を説明できるわけではないので、臨床の中では国家試験のような解答はないですし、答えがない状態になります。

 

 答えがないので、自分で答えを考えださないといけないので、国家試験の頭から臨床の頭に切り換えていく必要があるのですが、この切り替えで時間がかかってしまうと、学校で習ったことを忘れていってしまうので、早い段階で教科書と臨床のすり合わせをしていく必要があります。

 

 たとえば、東洋医学で言う、脾気虚の状態は学校では食欲不振、軟便、疲れやすいという表現になってくると思うのですが、臨床の中では食欲不振を主訴で来院される方が少ないので、首肩コリという話になってくるので、腹部系の症状を患者さんは全く訴えてこないと思います。

 

 これでは脾気虚という答えにたどり着かないので、何が必要かと言えば、身体の状態を見ていくことで、脾気虚が考えられるのではないかと想像をしていく必要があります。

 

 治療をしていく中で、話をしていきながら、生活の状態を細かく尋ねていくと、そういえばお腹の調子はよくないですと話されることがあるので、しっかりと問診を重ねていくことが答えを導き出す力になっていきます。

 

 問診は知識と会話から成り立つものですが、切診が得意なのであれば、腹診や脈診などから身体の状態を類推して答えを導きだすことが必要になるのですが、手の感覚は最初の段階では鈍い傾向にあるので、答えを導き出して、結論づけるのには少し経験が必要になってくるのではないかと思います。

 

 やはり、問診をしっかりと尋ねていくことが答えを導きだすために必要なのですが、導きだしていくためには、知識と会話が重要になってくるので、鍼灸師になりたての方は、身体の状態をしっかりと尋ねていくのを日々の日課にするのが大切だと思います。

 

 最初は会話も成り立ちにくいでしょうが、段々と、どうやって尋ねていけば相手に伝わっていくのかが分かっていくので、段々と問診のスキルが向上をし、答えを導き出す力がついてきますし、経験が付いてくれば、手の触診技術も助けてくれるようになるので、答えを探すことを諦めてしまってはいけないですね。

 

 簡単に答えが見つかるというのは机上でしかないので、現場の中では答えのある方向に向かっていくために、日々の学習と経験が役立っていきます。

 

 大変そうに感じる人も多いかもしれませんが、日々の積み重ねは気付かないうちに重なっていく物なので、悩んでいても気付いたら、手が勝手に動いた、何となく分かったという状態になっていくと思います。

 

 ここまでいけば、自分の中で少しは自信がついてくると思うので、答えを見つけやすいことも出てくると思います。ただし、答えも一つではなく複数の正解の場合があるので、拘ることも大切ですが、視点を広く持っておくことも大切だと思いますよ。

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