順逆―東洋医学の治療の考え方

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 東洋医学はいろいろな考え方が含まれてくるのですが、順逆もよく使われる言葉であり、治療の中にも使っていくことができます。

 順逆は言葉の意味としては、順番という意味で順逆を決定した方がいいとも言えますし、物事の道理をわきまえているのかという意味にもなります。そう考えていくと、正しい・正しくない、順調・不調という意味合いで考えていくこともできます。この順逆を東洋医学ではどのように使うかと言えば、診断と治療で使っていくことになります。

 

1.診断の順逆

 診断での順逆は、身体が順か逆かを見ていく方法になります。と言われても、意味が分からないと思うので、説明として加えていきますね。

 

 例えば、体格・声が大きくて、明らかに元気そうな人がいたとします。話している感じでは健康そのものにしか感じないのに、脈を触ってみると、弱くて細かったら、見た目や生活の元気さと比べると反対ですよね。この場合は逆が出ていると判断をしていきます。

 

 元気そうな人であれば、脈も強くて勢いがあるなという印象の方が見た目と身体な中が一致をしているので順になり、治療の効果が高いのではないかと考えることができます。

 

 他にも虚弱体質にしか見えないのに、脈が異常なぐらい元気そうだったら逆の可能性があると考えていくことができます。逆に虚弱体質で身体が弱そうだなと思っていたときに、脈を見たら弱かった場合は順と表現をすることができますね。

 

 この順逆を見るということは、治療に向かう前に治りにくいか治りやすいかと鑑別するのに役立つものでもあります。

 

 順の場合は、見た目と身体の状態があっているので治療をすると、効果も素直に出ることが多いですが、逆の場合は、見た目と身体の状態が乖離しているので、治療効果がなかなか上がらない場合もあります。

 

 治療をする前から治療の結果と経緯を判断することが出来るということなので、治療をする前に治療効果と通う回数に対して説明をすることができるので、治療の見通しを立てることができます。

 

 もちろん、逆の場合でも治療をしてみたら、かなりの効果が見られたということもあるので、必ずしも順逆だけで決定できるものではありませんが、おおよその状況を判断するのに役立つ物になります。

 

 他にも治療効果に関しても、予想と同じ反応が出れば順だった、予想と違う反応が出たら逆だったと考えることができるので、治療効果についても整理をすることができます。

 

 例えば、合谷を100回試しに使ってみて、順と逆の回数を出せば、どういう人に対して効果があったのかが分かりますよね。順が何回だったかというのをまとめることができます。

 

 ということから順逆は何のためにあるかと言えば、情報を整理するのに便利な言葉と言えますが、陰陽論の2つに分ける考え方と同じですね。陰陽だけだといろいろな情報と交わってしまうので、こうやって違う言葉を使うこともあります。

 

2.治療の順逆

 治療の順逆は順番のことを指すことが多いです。例えば、治療をするときに、体質から整える治療からするのがいつものパターンなのであれば、その治療の進み方を順の治療と言えます。

 

 通常は順の治療からしているのに、ぎっくり腰をしたのであれば、症状から治療を始めた方がいいと思えば、逆の治療からしたと考えることができます。他にも、いつもの治療パターンを変えるということで逆の治療として考えることが出来るので、手順に対しての順逆とも言えます。

 

 何故、順逆を決定して、治療の順番を変えるのかと言えば、患者さんの体質や治療をしていて、変化をしなかったとき、かなり悪い時は、治療も変えた方が効果的なことがあるので、そういう状況では順逆を変えることがあります。

 

 基本的には、治療の中でルールや法則性がないと順逆を入れて治療をするというのは、なかなか難しいので、流派などでは使われているのではないかと思います。

 

 治療を行う時には、診断をしないといけないですし、診断をしたら治療を行うことになりますが、診断の中での順逆の決定によって、治療の順逆を変えていくというのも大切になります。

 

 例えば、順の人には順の治療を使って、逆の人には逆の治療を使う。良くならない場合は、順の人なら逆の治療、逆の人には順の治療を行うと考えると、一人の患者さんに対して、良くならない場合でも考えるきっかけと治療方法が出てくることになるので、自分の中に取り入れてみるのはいかがでしょうか。

 

 例えば、全身の治療をするときに最初は仰向けから始めてうつ伏せにするのであれば、この治療パターンを順としておきます。治らないなと感じたときには、いつも行っている治療の逆を試すのであれば、うつ伏せから治療をして仰向けにするという方法も使えます。

 

 治療は一つの形だけではなく、その時々で柔軟に変えていくことができますが、柔軟過ぎると、自分が何を行ったのかが分からなくなるので、順逆という言葉を使って自分の行ったことを整理しておくと、次に同じような患者さんが来院されたときに役立ちます。

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