新教科書では伝変と波及という説明が入っていますが、勉強をしていれば理解ができるでしょうが、最初はなかなか理解がしにくいところなのではないかと思います。
気虚が発生をすると、気の種類・作用が低下をしてくるので、気についての知識が十分であれば、伝変と波及は理解をしやすいと思います。
気には推動作用があるので、気虚となると気血津液の運行に障害が発生をしてしまうので、血の運行を低下させてしまえば血瘀(気虚血瘀)、痰湿が生じることになります。教科書では痰湿と繋がっていないのですが、脾虚湿盛という状態があるので、気虚からも痰湿が発生をすることがあります。痰湿は停滞が長期化してしまうと熱化をすることがあるので、湿熱・痰熱・痰火が発生していくこともあり得ます。
気の働きは様々な力を持っているのですが、推動作用の中で上への上昇する力が低下をしてしまったのが、気陥になるので、その場合は、脾の昇清作用の低下とも繋がっていき、中気下陥とも呼ばれていきます。
気には温煦の働きがあるので、気が不足をすると、温煦作用の低下が発生をしてくるので、身体が冷えやすくなります。手足の冷えが生じる場合は、陽虚証と考えることが出来るので、気虚から陽虚が発生をしていきます。
気虚と陽虚はともに冷えが生じてくるのですが、たまに冷えるという状況であれば気虚、常時冷えるし、寒がりというのであれば陽虚と考えていくのがいいと思います。この違いの厳密な線引きは難しいときもあるので、そういったときには、その時にどちらが強いかで決めてもいいのではないかと思います。
気が不足をし続けてしまうと、身体の生命力の低下に繋がっていってしまうので、危険な状態の気脱が発生をしてくるのですが、日常診療の中では遭遇する可能性は低いですね。
気には気化という働きがあり、血の生成を行っているのですが、気が不足をした状態が続いてしまうと、血の生成不足が発生をしてしまうために、血虚が発生をしてしまうことがあります。この状態が続いていけば、気血両虚という複合の病変にもなっていきますね。
気には固摂という働きで血が漏れないようにしていますが、固摂の働きが低下をしてしまえば、出血をしてしまうことがあるので、生成だけではなく、出てしまうことで血虚になることがあります。
固摂は気化とも関係をしていくものであり、尿や汗の貯蔵と排泄にも関与をしているので、津液の不足や停滞も発生をしてしまうことがあります。
気の不足が生じているということは、元気の不足も発生をしているので、元気は精から生じてくるものなので、元気を補うために、精の不足が発生をしてくることがあります。
こうやって、気虚からどのように伝変と波及をしていくのかを考えていくと、何かにトラブルが発生をすれば、波紋のように全体へ影響していくというのが東洋医学の考え方なので、何でも出てきてしまいますね。
身体の状態が悪い人は一つの病証だけではなく、伝変と波及によって複数の病証が発生をしてしまうので、弁証を決定することが難しくなることがあります。
ただ、本質的な問題は何かと考えていくと、気虚から発生をしているのであれば、気虚の改善が必要になってくるので、病歴をしっかりと尋ねていって、体調変化がどんなとき、どんな状況で発生をしたのかを確認しておく方がいいと思います。
気虚により、気の動きが悪くなってしまえば、気滞が部分的に発生をすることがあり、さらには血瘀も生じてくるので、病能としては気滞・血瘀があるところが一番の問題になっていると考えていくことも出来ます。