病因病機

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 中医学の用語の中で、よく出てくるのが病因病機という言葉ですが、病因は身体が病気になる原因のことで、病機は病気になるメカニズムです。

 昔の教科書だと、病の原因である病因は外因・内因・不内外因という3つでしたが、新教科書だと、外感病因・内傷病因・病理産物その他という分類になっています。過去の分類では、外因は六淫(六気・外邪)・疫癘(えきれい)があり、内因は七情、不内外因は飲食・労倦・房事・外傷です。

 

 新教科書だと、外感病因は六淫・疫癘、内傷病因は七情・飲食・労逸・房事、病理産物その他は痰湿・瘀血・内生五邪・外傷があります。

 

 病気が起こる原因としては、環境の影響もかならずあり、寒すぎたら調子が悪くなる、熱すぎて熱中症になるというのは誰にでも起こりうることで、頻繁に生じるので、環境という外からの影響のことを外感病因と呼んでいきます。疫癘は急性の感染症のことになるので、感染症の法律がある日本では、鍼灸師が対応をすることはないですね。

 

 内傷病因は以前の分類と比較すると内容が増えていますが、身体の持っている機能が減退する物が当てはめられています。七情は感情とも考えられるもので、感情の起伏によって、体調が変わるということを言っています。

 

 飲食は気血津液の元となるものであり、身体を構成する元になるので、飲食が不足をすれば、気血津液の不足にもつながりやすいですし、飲食に問題が生じてくれば、身体の力を落としてしまうことになります。

 

 労逸は、動き過ぎ・働き過ぎという意味の労倦と休み過ぎという意味の安逸のことで、身体は気血津液が巡っているもので、生命は動きがあるのが前提ですが、その動きを活発化させ続けてしまったり、逆に使わな過ぎて停滞をさせてしまったりすると病になると言えます。

 

 房事は性交と関係をし、腎精との関係があるので、房事が過多になってくれば、生命力の根本である精を減らしてしまうことになるので、身体の生命力の低下をきたしてしまいます。

 

 病理産物その他という概念は、新教科書で出てきている単語になるのですが、外傷は外でも内での問題でもなく、ふとしたときに生じる物になるので、その他でいいと思うのですが、痰湿・瘀血・内生五邪に関しては病機とも関係をしやすいと思います。

 

 痰湿は、外邪の湿が停滞をしてしまったことによって生じる場合がありますし、飲食の問題によって、脾の働きが低下をしてしまったことにより、痰湿の阻滞が発生して、痰湿の状態になることがあるので、こういった身体の変化を考えていくことは病機とも関係をしやすいと思います。

 

 外邪の湿が影響したとき、脾の働きの低下によって痰湿が発生をしてしまったときでも、すぐに症状が出てくる訳ではないですし、症状が発生をしていて、体調を聞いたら、痰湿だったというのを病理産物による病として考えているのでしょうね。

 

 瘀血も同様で、冷えによって、血の流れが悪くなれば、血瘀(けつお:血行が悪い)になり、血瘀によって瘀血が発生をするし、気虚や気滞によって気の推動作用が低下をしてしまえば、血瘀になり瘀血が発生をしますし、血虚によって血が不足をした結果、血の流れが悪くなり、血瘀から瘀血が発生をすることがあります。

 

 痰湿と同じように、病機として瘀血が発生をしてくることもありますが、症状が発生をして、原因を確認したら、瘀血だったということはあるので、病を生じさせている一番の原因という意味では、病理産物としてまとめてしまうと分かりやすいのではないかと思います。

 

 内生五邪は、身体の中の問題が発生することによって、暑邪以外の外邪があたかも身体の中で悪さをしているという状態になるので、外邪かと思ったら、内生五邪だったということになることが多いと思います。内生五邪を理解していくためには、身体の生理機能を理解していくことが必要なので、ただ内生五邪を知っているだけではなく、どのような状況で発生をするのかを知っていることが大切だと思います。

 

 病機については、痰湿・瘀血で説明をしてしまいましたが、病がどこに起こっていて、どのような性質があり、どんな変化をしていくのかを考えていくことが大切になり、病気の改善、予防を考えるのであれば、病機は詳しくなっておく方がいいと思います。

 

 外感病因・内傷病因・病理産物その他は身体にどのように働きかけ、どのような症状が発生をするのかを知っておくことが、病の伝変(でんぺん)と波及(はきゅう)を知る上で重要になるので、まずは基本的な単語の理解をしておく方がいいと思います。

 

 私自身も病因は覚えて理解をしているつもりだったのですが、病因が身体にどのように働きかけ、身体に変化を起こしていくのかという病機について理解できたのは、実は最近ではないかと思っています。

 

 患者さんの症状と原因を自分の中で整理をしていくことで、病機の理解が進むことになるので、臨床の中で精度をあげていくのが大切だと思います。私は時間がかかりましたが、しっかりと勉強をしていれば、早い段階で理解を出来ただろうなと思います。

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