宗筋は十二経筋が集まったもので、前陰と関係していくので、宗筋が無力になると陽萎(勃起障害)が生じるとされています。
経絡の考え方においては、身体の中に経絡、経別が走行をし、体表部は経筋、皮部が存在していると言えるので、経筋は経絡の外の部分だと考えていくことができます。通常、経筋の問題となると、運動器疾患である動き、筋肉の問題として捉えることが多いです。
宗筋は筋の宗主と言われているので、全身の筋の働きを管理調節する働きがあると考えることができます。『素問』の痿論は運動麻痺である痿についての話をまとめたもので、肺の熱が原因であるという記述になっているのですが、宗筋についても書かれています。
『素問』痿論
帝曰、如夫子言可矣。論言治痿者独取陽明、何也。
岐伯曰、陽明者、五蔵六府之海、主閏宗筋。
宗筋主束骨而利機関也。
衝脈者、経脈之海也。
主滲潅谿谷、与陽明合於宗筋。
陰陽揔宗筋之会、会於気街。而陽明為之長。
皆属於帯脈、而絡於督脈。
故陽明虚、則宗筋縱、帯脈不引。
故足痿不用也。
ここに痿は陽明を使うという話が出てくるので、運動麻痺には足陽明経が重要だということも分かります。文章の中では、宗筋は陽明や衝脈との関係性があるということが分かりますし、陽明は宗筋の長と言われていきます。
これだけだと、女子と宗筋の関係が分からないところなので、他ではどのように書かれているのかを見る必要がありますね。前陰との関係は、『素問』の厥論で書かれています。
『素問』厥論
岐伯曰、前陰者、宗筋之所聚、太陰陽明之所合也。
厥論では前陰は宗筋が関係するということが分かりますが、男性生殖器と断定はしていないですね。他の部分では男性生殖器との関係が書かれているのは、『霊枢』の五音五味になります。
『霊枢』五音五味
岐伯曰、宦者去其宗筋、傷其衝脈、
血写不復、皮膚内結、脣口不栄。
故鬚不生。
五音五味で書かれているのは、宦官(かんがん)に鬚(ひげ)が生えない理由ということで、宗筋を取り去ってしまったために、血が十分ではないので、鬚が生えないという話になっているので、宗筋は男性生殖器を現わしていると言えます。
宦官は古代中国に始まり、東アジアに広まったものですが、宮廷に仕える去勢をした男性ですね。
ここまで見ていくと、宗筋は前陰であると同時に男性生殖器と考えていくことができるのですが、他にも記載があります。
『素問』痿論
思想無窮、所願不得、意淫於外、
入房太甚、宗筋弛縦、発為筋痿、及為白淫。
宗筋が弛緩をすると、筋痿、白淫が発生をするという記述があるのですが、筋痿は筋の動きが悪くなるということですが、この文章を男性と捉えていくのか、女性も含めて考えていくのかによって変わってきますね。
筋痿は男性の問題として捉えていけば、陽萎になるでしょうが、宗筋は全身の筋への影響もあるので、陽萎ではなく、全身の問題と考えることも可能でしょうけど、文章の意味からすると、ここでは陽萎なのではないかと思いますね。
白淫は、白い物が出てしまうということで、男性であれば遺精(いせい:精がもれる)、女性であれば帯下(たいげ:おりもの)として考えることができるので、文章が男性のみのことを言っているのか、男女ともの説明なのかが分からないですね。
宗筋は男性生殖器と考えていけば男性にしかないものになりますが、筋を主る物が女性にないとだめなので、やはり下腹部から生殖器付近の部分が宗筋として考える方がいいと思います。
どういう意味で書いたのかは書いた人に聞くしかないので理解することはできませんが、
「宗筋弛縦、発為筋痿、及為白淫」は「宗筋が弛むと、男性なら筋痿、女性なら白淫になる」という文章にするとまとまりがいいのかなと思いますね。