聞診(ぶんしん)

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 聞診は東洋医学の診察法である四診の一つであり、患者さんの声、動作の音、口臭、体臭によって身体を診察する方法です。

 聞診は音を聞くのと、臭いを嗅ぐという2つを用いていく診察方法になるので、患者の状態を診て、声や呼吸音を聞きながら、患者さんの体臭を確認していく方法で、診察方法で言えば、2番目に用いていく方法になります。

 

 例えば、いつも来る患者さんの足音が変だなと思えば、どこかが悪いのではないかと考えることもできるので、日常の診療の中でも有効性が高いものになります。カーテンに囲まれていて、患者さんの状態をすぐに観察できなくても、着替えをしているときに、ため息をついたりしているようであれば、ため息という音を聞いて、何かあるのかなと考えていくこともできます。

 

 国試的には五音(五声)という内容で少しは見ることが出来るのですが、音の高さの違いによって聞き分けるのは、よほど訓練をしていないと難しいので、音の高低によっての鑑別は難しいと思います。

 

 五音を使えるようになるためには、絶対音感がないと聞き分けすることが難しいでしょうし、後天的に手に入れるのはかなり難しいスキルなのではないかと思います。

 

 聞診の聞という漢字は、聞香(ぶんこう)という表現があり、臭いを嗅ぐという意味があるので、お香の世界ではお香を楽しむのに、聞香と表現をしているようですね。やっていることで言えば、香りを嗅いでいるということなのですが、聞という漢字を使っていますね。

 

 体臭などの臭いに関することは、自分では分からない物なので、臭いに言及をされてしまえば、傷つきやすい部分でもあるので、あまり相手に伝えない方がいいと思います。体臭に関しては五臭(ごしゅう)という分類があるので、木は羶(せん) 、火は焦(しょう)、土は香、金は腥(せい)、水は腐に分けられます。

 

 木の人は脂臭い、火の人は焦げ臭い、金の人は生臭い、水の人は腐ったような臭いとされ、土の香という臭いは、かぐわしい香りということで、やや甘いような臭いがすると言われています。

 

 たまに特徴的な人がいるので、そういった方の臭いを嗅いで始めて五臭があるというのが分かると思うのですが、そういった状況にいないと分からないので、伝えるのが難しいとも言えますね。

 

 臨床経験が長い人や特定の疾患を多く診ている人は、疾患ごとにも臭いがあると表現する人もいるので、臭いに関しては「臭いを嗅いだ」という経験が重要になってくると思います。

 

 臭いで病気を特定できるのかという疑問が生じるところですが、臭いを嗅ぐことで病気を特定できるという話しもあるので、一度は読んでみてもいいのではないでしょうか。

『ニオイをかげば病気がわかる (講談社+α新書)』

 

 加齢臭と呼ばれる話しは一般でも有名ですが、私が鈍いためか、自分が加齢臭を発しているのか分かりませんが、あまり分からない臭いですね。代わりに老人臭というのはたまに患者さんでいるので分かりますね。臭いの特徴としては、水の腐に近いのではないかと思います。

 

 高齢な方だと、薬の服用が多くなるので、薬臭いと感じることも多いです。どのような臭いなのかと言われると難しいのですが、病院の中にいるような臭いと表現するしかないのかなと思います。

 

 臭い自体の原因はいろいろな成分の話しが出ていますが、成分が分かったところでどうやって予防をするのかというのは難しい話しになるので、今後の研究に期待をしていくしかないですね。

 

 体臭は治療を継続していくことで消えて変わっていくこともあるので、臭いが強い傾向だなと思った人は、継続して臭いも注意をしていくようにしています。もちろん、臭いがすると患者さんに伝えることはほとんどないですね。

 

 臭いが分かりやすい状況は、患者さんが入って着替え終わって、カーテンの中に入るときなので、その時は、あるがまま感じるように意識をします。もちろん、臭いを嗅ぎながら入ったら、臭いがしない人でも気になるし、傷ついてしまうので、フンフンとはしていませんし、表情や姿勢も気にするので、臭いだけに集中をしている訳ではないですね。

 

 鍼灸師はそんなことも気にしているので、嫌だという気持ちになる人もいるかもしれませんが、検査機器を使わずに、身体の状態を把握するためには、感覚を研ぎ澄ませて、相手の身体から情報を少しでも引き出さないといけないので、必要だから行っています。

 

 もちろん、臭いに関する診察が得意な人、苦手な人がいるので、全部の鍼灸師が臭いを嗅ぐのに集中をしている訳ではないですね。私自身は、細かい臭いを嗅ぎ分けられるスキルがないので、臭いに関する診察が得意な物ではないとは思っているので、何となく嗅ぐという程度になっています。

 

 細かい違いが分からなくても大きな違いは分かるので、大きな違いが分かるようになって、だんだんと細かく細分化していくことが出来るのだと思います。

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