胸腰椎棘突起間の両側には夾脊穴という奇穴がありますが、そこは手技の臨床でも重要な場所になるので触れていくのがいいところになります。
棘突起の両側は脊柱起立筋が付着をしている場所になるので、通常の手技であれば、脊柱起立筋の高まり、外側は触れていくと思うのですが、いろいろなところを受けにいっても棘突起の両側ギリギリのところを触れられることがないので、もったいないなと思っています。
棘突起のギリギリのところから外側にはがすように触れていくと、大きな索状硬結を触れることが多く、さらに深部にいくと、細かい索状硬結物を触れることができるのですが、そこが弛んでくると、身体が楽に感じることが多いです。
最初のうちは触れていくことも難しく感じるのですが、慣れてさえしまえば、簡単に触れられるし、高齢者でも細い索状硬結があり、身体の緩みも出ることが多いので使いやすいところですね。しかも、圧をかけなくても触れられるので、高齢者の治療ではいい場所だと思っています。
ただ、索状硬結を刺激するとスッキリ感も出やすいのですが、刺激が強いと、揉み返しのような痛みが残ってしまい、かなり身体が不快に感じてしまうことがあるので、刺激量は注意をした方がいいいと思います。
仲間内で練習をしているときに、やり過ぎたことがあるのですが、数日はぎっくり背中のように背中全体が痛くなってしまい、身体を動かすのが辛かった思い出があります。
棘突起の両側は脊柱起立筋があり、深部は回旋筋があるので、表層の索状硬結は脊柱起立筋で、深部は回旋筋の可能性が高いですね。上部だとさらに板状筋、中部だと菱形筋・僧帽筋、下部だと僧帽筋・広背筋も関係をしてくるので、部位によって硬結の形や走行に違いがあるので、索状硬結が何筋と関係をしやすいのかなと考えていくと治療の幅が広がるのではないかと思います。
私は、手技で背中を触る際には棘突起の両側は必ず触るようにしているのですが、上部は頚部や肩上部に緩みが生じやすいかなと思っています。上部は板状筋とも関係をしやすいためなのか、頚部の後ろの方に響きを感じることもあるので、頚部の硬さが強い方にも使うことが多いです。
中部は肩甲骨の中程から腰椎ぐらいまでのところなのですが、この付近が弛んでくると背中全体が弛むだけではなく、胸郭に緩みが出てきて、呼吸が楽に感じることが多いので、息苦しい人にも使っていくことがあります。ツボとしては胃の六つ灸とも関係をしやすい場所になるので、消化器系の疾患を抱えている方にも使っています。
下部は腰椎から仙骨上のところまでを行っていくのですが、その場合は腰下肢の緩みが発生をしやすいだけではなく、腹部・下腹部の緩みが出てくることも多いので、消化器系疾患だけではなく、泌尿生殖器の疾患を抱えている方にも使っています。
手技の場合は全体を緩ませていくことが多いので、どのような症状の人でも棘突起の両側は触るようにしているので、治療の中で標準メニューにしています。頚部、消化器、生殖器などの疾患や症状があれば、場所を意識しながら治療の刺激量を調節していきますね。
疲れてくると自分の棘突起の両側を緩めたくなるのですが、自分では届かない場所になるので、その時は、最適な角度の壁や家具を見つけて、体重を預けて刺激をするようにしています。
ただ、これも気持ちがいいのでやり過ぎてしまったことがあるので、気持ちいいからといって長くやってしまうのは危険ですね。背中を自分で揉めるJ字状態のマッサージ棒も使っていくことができるのですが、ちょっとピンポイント過ぎて、刺激量が過剰になってしまいやすいと思っています。
本当は、人の手で細かくはがしていってもらうようにすると、すっきり感じやすいので、やってもらいたいところなのですが、なかなかやってくれる人がいないのですよね。
手技でこの場所の索状硬結を触れるようになると、夾脊で刺していく深さや方向のイメージができるので、鍼灸師も触診の一つとして硬結を確認していくのも大切なのではないかと思います。
頭で覚えるよりも、手で覚えてしまえば空間の把握もしやすいので、一度は触れて、どんな響きが出るのかを体感しておくと夾脊の響きもわかるのではないかと思います。
棘突起の両側は人にもよるのですが、肋間神経の走行に沿うように前側まで響きを感じることがあるので、響きの感覚としても面白い場所だと思います。