環跳

Pocket

 環跳は胆経の経穴で、大転子の頂点と仙骨裂孔を結ぶ線で大転子から1/3のところにあります。

 古い教科書では、大転子と上前腸骨棘を結ぶ線で大転子から1/3のところになるので、旧教科書は身体の側面で、新教科書では、身体の後面にあることになるので、場所が大きく変わっていきます。

 

 環跳の環は骨盤・殿部が丸い状態になっているという意味が含まれ、跳は跳ねられるようになる場所という意味があるので、下肢の治療においては重要な場所だということが分かります。

 

 環跳は足少陽経と足太陽経の交会穴と言われているので、胆経の病だけではなく、膀胱経の病のときにも使用することが出来るので、応用範囲が広いツボになります。

 

 たば場所としては男女ともに下着の下になるので、治療で使おうとしても使いにくいときも多いですね。同性同士だと使いやすいので、同性のときには治療で使う時が度々あります。

 

 環跳を使うときは下肢の問題のときが多く、坐骨神経痛に対しては、環跳と殷門で鍼通電療法を行うこともありますが下肢の治療以外でも使える場所なので応用範囲が広い場所になります。

 

 環跳とその周囲の硬さが改善すると骨盤の動きもよくなりやすいからなのか、消化・泌尿・生殖器疾患の時にも使うことがあります。こういった場合は手技で行う時の方がやりやすいので、手技での治療では殿部の硬さを取り除くことを集中して行います。

 

 手技で行う場合は、うつ伏せの状態にして、殿部の左右の高さを見比べておき、足関節から大腿後面までの施術を行うと、治療した側の殿部の高さが低くなることがあるので、治療途中の指標にするのもいいと思います。

 

 環跳に対して刺激を行う時には、殿部の丸みを意識して、真っすぐに押圧をすることが大切です。少しでも方向がずれてしまうと、皮膚をずらしてしまい、目的の方向に圧をかけられないので、治療効果も半減してしまいます。

 

 殿部は広い場所ですし、肘や前腕でも出来る場所なので、おおざっぱにやっている印象を受けることがあるのですが、細かく施術を行うと治療効果が高い場所なので、押圧する方向に注意をする必要があります。

 

 殿部にゆるみが生じると同側の肩関節に緩みが生じてくることも多いので、肩の治療のときでも環跳は使っていくことが多いです。頚部や肩上部のコリの場合でも、環跳を押圧してから圧痛と硬さを確認すると軽減することが多いので、私の中では非常に重要な場所になります。

 

 胆経・膀胱経の走行を考えれば、環跳の刺激が肩や背中、頚部に変化をもたらすのは当然だと言えるので、経絡の流注を意識した施術を行うとより効果的ではないかと思います。

 

 鍼での治療のときは、環跳を刺激しなくても、他の刺激が環跳と同様の効果をもたらしたり、環跳自体にも緩みが発生したりすることが多いので、特別に環跳を意識して施術をすることが少ないですね。

 

 環跳に鍼をする場合は、殿部なので深く刺入をしないといけないと感じるかもしれませんが、刺入深度としては3~5㎝程度の刺入で十分ではないかと思います。殿部の筋肉は身体を支える機能もあるために、筋肉の力も強く、何層にもなっているので、鍼は太い方がいいと思います。

 

 私は殿部に刺鍼するのであれば5番以上を使うことが多いのですが、浅い刺鍼の場合は2~3番程度を使うこともあります。細い鍼の場合は、置鍼してしまうとリスクも高くなるので、目的の深さ(硬結)を刺激したら抜鍼をしてしまうことが多いです。

 

 殿部への刺鍼は慣れてくると、層を貫くときだと思いますが、引っかかる感じがあるので、その抵抗感を指標にして刺入深度を微調整しています。表層の刺激で改善することも多いのですが、やはり問題となりやすいのは深部の筋だなと感じることが多いので、環跳を使っていくときには、それなりの深さまで刺入をすることが多いですね。

 

 側臥位で使っていく場合は、筋肉が伸ばされた状態になっているので、刺入深度はうつ伏せの時よりも浅いときが多く、2~4㎝で対応することが多いですね。もし深部に刺入をしたいけど、手持ちに太い鍼がないのであれば、押手を強く押圧すると、軟部組織を圧迫することができ、目的の深さまでは皮膚面から距離が短くなるので、押手を利用して刺入深度を浅くする方法もあるのですが、力を使うので、指の力がない人にはできないかもしれないですね。

Pocket