鍼灸の上達していくためには触診能力の向上が必要です

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 鍼灸師は鍼灸の扱いが上手くなって、いい治療をしていきたいと考えることになると思いますし、技術を向上したいという気持ちを持つ人も多いでしょうが、治療が上達するためには触診能力の向上が必要になっていきます。

 鍼灸は使っていけば、扱いが上手くなるのは、他の道具と同じなので、使えば使うほど、上達していくことになりますが、鍼灸が上達したからと言って、治療技術が向上したのかというのは、イコールで繋がる訳ではないので、鍼灸の技術の上達と治療技術の向上を繋げる物が必要になります。

 

 例えば、ここが問題だというポイントを弁証なり、経験なり、触った感触なり、患者さんの訴えなりで決めていくのは、それなりに出来ると思いますし、狙ったところに鍼灸を行うのは、鍼灸の技術があれば可能になります。

 

 これで治療効果が出るのかどうかは、確認をしないと分からないので、四診を使って変化があるかを確認する必要があります。望診で治療効果があるかどうかの確認をすることも可能なのですが、望診は上達するまでが大変な物でしょうし、見方というのが必要になるので、上達を図りにくいのではないかと思います。

 

 刺激をすれば身体に変化が生じるはずなので、聞診でも確認をしていけることがあると思いますが、聞診は聞く・嗅ぐという行為なので、聞診自体の技術向上はかなり難しいのではないかと思うので実用的ではないですね。

 

 では問診で確認をしたら確実そうですが、患者さんも自分の身体をしっかりと把握して説明できるわけではないですし、微細な感覚は言葉に置き換えるのは非常に難しいので、説明するのが大変なので、患者さんも疲れてしまうことがあると思います。

 

 そういった中で、触診技術は自分次第で向上をしていくものであり、変化を捉えていくことも可能なので、鍼灸を行った後に、再度、確認をすれば、身体の状態に変化があるのかどうかを確認していくことができます。

 

 脈診を指標に治療をしているのであれば、鍼灸を行った後に、脈診を再度行えば、何かの変化を確認することができるでしょうし、圧痛を指標に治療をしているのであれば、鍼灸を行った後に、圧痛の確認を再度行えば、変化があるかどうかを確かめていくことができます。

 

 切診である触診技術は自分の努力次第で向上もするし、言葉で説明をする必要もないので、簡潔に身体の状態を確認できる方法なので、触診技術の向上は絶えず考えていく必要があると思います。

 

 技術の向上は、すぐに伸びる物ではなく、飽きるまで続けて、動作の一部になって初めて、一定で行えるようになるので、変化を読み解くためのスキルになり、触るという技術も向上していくことになります。

 

 触診能力を向上させるためには、一定の条件で触れないといけないので、脈診であれば、同じ姿勢、同じ指の置き方を意識する必要がありますし、圧痛であれば、押した方向を理解しておかないと毎回違う触り方をしてしまうことになります。

 

 毎回、一定の条件で触れるようになると、変化を読み解くスキルが向上をしてくるので、最初のうちは、変化が分からなかったのが、突然、変化をしたかなと感じるときがあると思います。

 

 多分、多くの情報が入って初めて、その中での変化を理解していくことができると思うので、ある程度の経験、時間が必要になってくると思うので、触り方を意識するのであれば、数日単位ではなく、年単位で意識をしていくことが重要なのだと思いますね。

 

 私自身の触診スキルはまだまだ未完成の状態で、一生をかけても完成するのか分かりませんが、同じ触り方を意識するようになると、数年ごとに見える物が変わってくるなというのが分かってきました。

 

 例えば、料理人が食材をいつも見て、触れているために、少しの違いもわかるようになり、一般の人よりもいい物を手に入れられるようになりますが、何が違うかと言ったら、見方の違いもありますが、見ている数の違いですよね。

 

 これと同様に触るということにおいても、触っている人の方が上手ですし、同じ条件で触れる人の方が、他の人の身体との比較もしていくことができるので、比較対象が多くなることで、経験として積み重なっていくことになります。

 

 鍼灸をやっていくためには、あん摩をやらずに鍼灸だけの方がいいという意見もあるのでしょうが、あん摩を長くやっているから鍼灸の触る・刺すという技術が向上するという考えもあります。

 

 触診という点で考えていく場合には、あん摩をたくさんやっている方が上達をするのではないかというのが私の考え方なので、手技でも治療をすることが今でもあります。全身をくまなく触っているという触診のスキルが鍼灸治療の中でも役立つことが多いですよ。

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