欠(けつ)と呵欠(かけつ)―あくびと東洋医学

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 あくびは眠い時に生じるもので、東洋医学では欠や呵欠と表現をされているもので、疲労がたまったときに生じるとされていて、陰盛陽虚で生じるものになります。

 あくびは眠い時、疲れているときに出やすいので、あくびは出るのは疲労があるときと関係をするのは体感としても分かっていることなので、それほど難しいことではないですね。

 

 古典ではどういうことが書かれているのかを調べたところ、『霊枢』の第二十八口問に出てきます。

 

『霊枢』口問

黄帝曰.人之欠者.何気使然.

岐伯荅曰.衞気昼日行于陽.夜半則行于陰.

陰者主夜.夜者臥.

陽者主上.陰者主下.

故陰気積于下.陽気未尽.

陽引而上.陰引而下.陰陽相引.故数欠.

陽気尽.陰気盛.則目瞑.陰気尽而陽気盛.則寤矣.

瀉足少陰.補足太陽

 

 結論から言うと、よく分りません。一応、欠(あくび)は何故、起きるのかという質問に対して、陰陽の話が出てくるのですが、それで?という疑問は消えないですね。

 

 陰陽の働きによってあくびをするというのが結論のようなのですが、説明が必要だと思うので、『霊枢』口問の文章を大ざっぱに訳してみます。

 

 黄帝が岐伯にあくびおきるのは何故かと問いかけて、それに岐伯が答えます。衛気は、日中は陽を巡り、夜になると陰を巡ります。陰は夜、夜は寝る。陽は上、陰は下。陰気は下にあり、陽気は盛んなままになります。陽は上に引きあげ、陰は下に降ろす。陰陽が互いに引き合うと、あくびがおきます。

 

 陽気が尽き、陰気が盛んになると、眠ることができ、陰気が尽きて、陽気が盛んになると目が覚めます。このような病気には足の少陰腎経を瀉し、足太陽膀胱経を補うことになります。

 

 いろいろな説明をしているのですが、夜に寝るという状態は陰気が強くないといけないし、覚醒するには陽気が強くないといけないのが睡眠のメカニズムということが分かります。

 

 陰陽が互いに引くという話がありますが、コップに先に冷たい水をいれ、上に温かい水を入れると、下が冷たくて、上が温かい状態になりますが、時間の経過とともに、上の熱と下の寒が混じり合って、温度が一定になっていきます。これを動きとして考えたときに、ひき合うという言葉を使っているのだと思います。

 

 覚醒しているということは動になるので、陽と考えていくことができ、起きている状態は頭がはっきりしている状態になるので、頭部であり上は陽が強くないといけないのが、覚醒時の正常な状態と言えますね。

 

 疲労や労倦などによって、身体の生命力が低下をしていくと、生命力の低下、陰気陽気の活動障害が発生すると考えると、陰陽が正常に機能をしなくなるので陰陽が必要でないときに引き合ってしまうので、あくびが生じると考えることもできますね。

 

 あくびが疲労などによって生じるのであれば、腎は補法を行うのが正常ではないかと考えていたので、最後の補瀉が何を言っているのかさっぱり分からなかったのですが、質問の意図を考えてみると、ここでの補瀉は正しいのかなとも思います。

 

 黄帝が訊ねている理由を考えると、眠い時にあくびが出ることを訊ねているのか、起きていなければいけないのにあくびが出ることを訊ねているのかによって変わるのではないかと思います。

 

 起きていなければいけない状況であくびが出てしまうのであれば、陽を保つことができなく、陰気が下に引こうとしてしまうので、陰の力を落とし、陽の機能を高めるのがあくびをなくすために必要なのではないでしょうか。

 

 腎は臓なので陰、膀胱は腑なので陽で、覚醒をする陽は助けて、眠りを誘う陰は除くという考えを合わせると、あくびが出てしまう状態には、腎に対して瀉法、膀胱に対して補法なのではないでしょうか。

 

 最初に出てきている衛気と睡眠について考えてみると、衛気が強い状態は覚醒していて、衛気が陰に向かうと睡眠の状態になっていくと言えますね。

 

 衛気と膀胱・腎経との関係があるのではないかと考えていくこともできるのですが、ここでの陰陽との関係を考えると、衛気は、覚醒時は膀胱経を走行して、睡眠時は腎経を走行していると考えていくこともできますね。

 

 あくびが出るという状態をもっとシンプルに考えるのであれば、あくびが出るのは陰気が強く陽気が弱い状態として考えていくことができるので、このシンプルな陰盛陽虚で考えると、原因をたくさん考えていくこともできるのではないでしょうか。

 

 例えば、冷えが強くて身体が温まらないときにもあくびが出るといえるでしょうし、内臓の働きが活発で体表の働きが低下をしているときにあくびが出ると考えていくこともできるので、陰陽が互いに引くからあくびが出ると考えるよりは、陰盛陽虚の方が使いやすいのかなと思います。

 

 現代医学的に、覚醒している状態だと、パソコンやスマホのように頭部に熱がこもるので、あくびをして冷やしていくという研究もあるようですが、こういった研究が進んでいくと、東洋医学と繋げて考えていけるのではないかと思いますね。

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