肩に痛みがあるときの動診

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 肩の痛みがあるときに、どのような動作で痛みが出るのかを確認することになりますが、肩は細かい筋肉もあり、可動域も広いので、難しい場所になります。

 MRIで骨・関節・軟部組織を全て見られて、動きも確認できれば、状態を確認するのも楽でしょうが、治療院ではそんな設備もないので、動作から何が問題なのかを考えていかなければいけません。

 

 肩の動きは、肩甲上腕関節だけが動くのではなく、鎖骨・肩甲骨も動くことで、上肢の動きに関係をしてしきますし、脊柱の可動性も影響をしていくことが多いので、身体の状態をしっかりと観察しなければいけないです。

 

 肩関節の動きは、コッドマンリズム・肩甲上腕リズムと呼ばれるものがあり、肩の外転では、肩甲上腕関節の外転と肩甲骨の外転が必要になります。例えば、肩関節を180°外転させていくと、それぞれ肩甲上腕関節で120°、肩甲骨が60°の外転をする必要があるので、肩甲上腕関節:肩甲骨=2:1で動くことになります。

 

 肩甲骨が動いていくためには、鎖骨の動きも必要になってくるので、肩甲上腕関節の動きが悪いからと言って、肩甲骨だけを見ていればいいのかと思ってしまうと、鎖骨の動きを見逃してしまうことになります。

 

 肩に痛みが発生しているときには動作の確認もしないといけないのですが、観察をしなければいけない物が多いので、慣れるまでは観察するのも大変だと思います。ただ、現在はスマホなどで動画を撮影することもできますし、アプリで動作を見ていくこともできるので、時間をかければ動作分析はしやすい状況にありますね。

 

 他に注意をしないといけないのは、肩甲上腕関節は回旋動作をすることもできるので、単純な肩関節の外転をしているときでも痛みを逃がしていくために、回旋が入ってくることがあります。

 

 今まで見てきた感想としては、肩甲上腕関節の障害も確かにあるのですが、鎖骨・肩甲骨の動きの悪さから肩関節を動かせなくなってしまって、痛みが出ているという状況は非常に多いような気がします。

 

 肩の動作痛で、回旋によって痛みが出る場合は改善しにくい印象があります。安静時痛だと、四十肩・五十肩と呼ばれる物が多いのですが、四十肩・五十肩は病名ではないですし、病態がはっきりしないことが多いです。

 

 病院で診察をしてもらえば病名はつくのでしょうが、「まあ四十肩・五十肩ですね」とまとめられてしまうこともあり、どんな病態なのかが分かりませんね。加齢によって肩に痛みが出るようになり、肩をあげられなくなってしまったら、四十肩・五十肩と呼ばれてくることが多いですね。

 

 肩甲上腕関節が障害をされている場合は、代償運動として、鎖骨・肩甲骨を大きく動かすことによって、肩甲上腕関節があたかも動いているように見えます。肩甲上腕関節にひどい障害が発生しているようであれば、代償運動が大きくなるのですぐに気付きますが、少しだけ障害が発生しているような場合だと代償運動も小さいので、気付きにくいです。

 

 動きの観察を注意深く行って、何人も見比べてくると、動きに違和感を持てるようになるので、注意深い観察が大切になります。最初のうちは、先輩方の見方を教えてもらっていくと観察をしやすいと思います。

 

 動きを観察しているときには、支点を理解していくことが大切なので、肩の動きであれば、肩の中心・鎖骨の真中と両端・身体の正中線の支点を押さえておくことが必要になります。

 

 支点を置いたところがどのような動きをしていくのか観察し、頭の中で映像を再生しながら、どのような線上で動けたかを確認します。動きの線が正常な動きの線と逸脱をしているようであれば、何かの代償運動が発生している可能性が高いので、原因を考えていくことが可能になります。

 

 健康な人の動きを映像として理解をしていくと、異常な動きに気付く力にもなるので、自分の身体がどのように動いているのかを鏡で観察したり、人の動作を観察したり、スポーツでの身体の動きを観察したりしておくと、見る目が鍛えられると思います。

 

 関節可動域は、いろいろな書籍に載せられていますが、重要になってくるのは、動きの中で理解をしていくことなので、動いている人の観察は大切になっていきます。

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