現病歴と既往歴

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 現病歴(げんびょうれき)は現在かかっている病気が、いつから、経過、治療、結果などを時間系列で書き、既往歴(きおうれき)は今までかかったことがある疾患について書くものです。

 カルテはどれぐらいの量を書くのが適切なのかを決めるのは難しいと思います。カルテを何のために書いていくのかを考えると、その人の情報を整理しておいて、後で見た時も簡潔で分かりやすくしておくことが大切になります。私自身はカルテをそれほどつけている訳ではないですが、どのような書き方がいいのかを、まとめてみたいと思います。

 

1.カルテを書くメリット

 情報を整理しておくことによって、後から見直したときに、その方の治療や対応で何がよかったのかが分かるので、見直すことで新しい気づきが出てくることもあります。他の人と共同して対応する場合は、カルテがないと、最初から全部質問をしていかなければいけないので、患者さんの方も毎回同じような質問をされて疲れてしまいます。

 

 患者さんと話しをして、カルテも書いて情報を整理したはずなのに、その時には治療や今後のことを考えていて、情報を見逃してしまっていることもあるので、カルテを書いていることによって後から気づきます。

 

 例えば、足腰がだるいという人で、運動はしていると予診表でチェックを付けてもらったり、問診で聞いたりした場合でも、身体が硬かったりしたら、運動やストレッチをした方がいいですよと、つい言ってしまう場合もありますが、最初に聞いた情報や掘り下げていない情報を忘れてしまうことがあります。

 

 人との会話でも、記憶に残りやすい物、記憶に残りにくい物があるので、記憶に残りやすい話しを続けてしまったり、お互いに記憶に残ったりしているところから会話をしたら、会話がかみ合わなくなってしまいますよね。

 

2.現病歴の書き方

 今回は、肩こりと頭痛に関しての仮定での現病歴を書いてみますが、他の疾患であれば、肩こり・頭痛という単語を変えて、時間系列、増悪軽減因子などを書き足していきます。

 

①バージョン1

「42歳の男性。肩こりと頭痛が生じている。若い時にも肩こりを感じたことがあるが、仕事を始めてから強く感じるようになり、数年前から頭痛も生じるようになった。肩は慢性的にこっている感じがあるので、マッサージに行ったり、温泉でゆっくりしたりすると軽減する。頭痛は肩こりが酷くなると生じることが多く、締め付けられるような感じがある。ストレスが強くなると肩こりと頭痛が生じやすく。頭痛が生じると、寝ないとよくならない。現在は特に治療はしていない。運動はしていない。」

 

②バージョン2

「42歳の男性。主訴は肩こりと頭痛。昔から肩こりがあり、ストレスがかかると肩こりが強くなり、数年前から肩こりが酷くなるとしめつけられるような頭痛が生じるようになった。頭痛と肩こりはリラックスや休むとよくなる。運動はしていない。」

 

 バージョン1は聞いたままの話しを出来るだけ同じようにまとめた場合で、バージョン2は情報をこちらでまとめた物になります。どちらが完璧でいいのかというのは分かりませんが、1だと詳細に書いてあるので、例えば、「温泉好きなのですか?」というような会話も入れやすくなりますね。

 

 バージョン2の方では、簡潔にまとめられてしまっているので、「寝ると頭痛が軽減する」という情報が言葉として入っていないので、頭痛を詳細に確認したいのであれば、夜に頭痛が起きることがありますかと確認する必要があります。

 

 東洋医学では、これ以外に身体の体質についての現病歴というか今までと現在の状況について尋ねていかなければいけないので細かく尋ねていくと書く量が増えますね。東洋医学の体質に関する情報も時系列でまとめた方がいいのですが、量が多くなるので、どこまで書くのかが難しいと思います。

 

③体質の状況

「小さい頃は、擦り傷などがあったが大きな病気になったこともなく、身体の不調を感じることはなかった。仕事をするようになってからは忙しくてなかなか休めない時期があったので、そのときはいつも眠りたいという欲求が強く、身体の疲労が抜けない状態が続いた。35歳からは中間管理職になり、ストレスが強くなったので、腹痛を感じることも出てきた。いつもある訳ではないが、年に数回ある。腹痛が酷くなると下利をしやすくなるので、最近は腹痛が生じてときには食事に注意をするようにしている。

 子どもが2人いるので、家庭でやることも多いので、休める時間は少なくなったが、仕事の勤務時間は若いときよりは軽減したので、眠れるようになっている。家にいるときは家族と過ごしているのでリラックスをできるので、身体を使っているが、疲労感は少ない。

 睡眠はよく眠れている。普段は便秘や下痢になることはない。たまにのぼせるようなことがあるが、ストレスが強い時、頭痛が生じているときに発生をしていることが多い。」

 

 かなり長くなりましたよね。まだまだ足していくことが出来ますが、こうやって、時系列でまとめていけば、どこまでも書いていくことが出来ます。

 

 症状や体質だけではなく、その方が思った気持ちなども書いていると、その方の気持ちを理解していくことにも繋がるので共感をしていきやすいと思います。共感と同情については以前のブログで書きましたが、共感は相手を理解すること、同情は相手と同じ感情になるだけです。

 

3.既往歴

 既往歴はシンプルにまとめることが多いので、箇条書き程度で書いていることがありますね。

 

 例えば、骨折、捻挫があったとした場合。

 

脛骨骨折(30歳・完治・病院でギプスを使用・リハビリも少し行った・歩行動作に異常なし・痛みや違和感は出ることはない)

 

 というように、内容をそのときに行ったことや、経過・現在の様子までを書いていくことになります。過去の病歴を確認していくと、東洋医学的には治療点として考えられることも出てくるので、詳細に尋ねる人もいると思います。

 

4.まとめ

 カルテは、この書き方でないと正解ではないという答えが無い物なので、その場の状況の人達が何を目的とするかが重要にもなるので、学校、勤務で書く必要があるのならば、求めることをしっかりと確認した方がいいと思います。

 

 個人的にカルテを書いてまとめていくのであれば、勉強になっていいのですが、身体の情報は個人情報になるので、氏名・住所など個人を特定できる内容の表記は注意をした方がいいです。

 

 東洋医学の体質の話しに関しては、肝鬱気滞(かんうつきたい)がある状態をイメージして書いてみました。肝鬱気滞があるので、脾の働きを阻害してしまうこともあるので、腹痛や下痢が生じていて、慢性的に頭痛が出ていないので、肝火の状態に近いのではないかというところですね。

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