委陽穴は膝裏の外側で、大腿二頭筋腱の内縁にあり、足太陽膀胱経に所属をし、三焦の下合穴になります。三焦と膀胱に関係をするので排尿障害に用いられることがあります。
1.委陽という名前
委という漢字の意味には、「まかせる、くわしい、曲げる、重ねる、すてる、なえる、そうこ」などがあるのですが、膝関節の裏にあることから、「曲がる」という意味で付けられていると考えられます。
陽は陰陽で考えたときに、内側が陰、外側が陽になるので、膝の外側にあるということで陽になり、膝裏の曲がるところで外側だから委陽という名前になったのだろうと考えられています。
2.委陽の部位の特徴
委陽は大腿二頭筋腱の内縁に取穴をしていくのですが、軽く膝を屈曲すると大腿二頭筋腱が触れられるので、腱の硬さを知るのにもいい場所と言えます。
殿部からハムストリングス中央にかけて坐骨神経が走行していますが、膝裏の上方で坐骨神経は脛骨神経と総腓骨神経に分岐し、下腿後面中央に脛骨神経が走行していきます。総腓骨神経は、浮郄と委陽の場所を走行し、膝の外側部分で浅腓骨神経・深腓骨神経に分岐していきます。
浅腓骨神経は陽陵泉がある下腿外側を走行し、深腓骨神経は足三里や胃経に関係をするので、下腿前面を走行していきます。
3.委陽の穴性
経穴の穴性は、属する臓腑の働きや走行上と関係をしていく傾向があります。委陽は足太陽膀胱経に所属をしているので、膀胱の問題が発生しているときに使いやすいところになります。
膀胱の働きは、貯尿(約束)と排尿という機能があり、尿をためて出すところになるので、排尿の異常が生じているときに使いやすい場所になります。
膀胱の働きが異常になった状態は膀胱湿熱という弁証があるので、膀胱湿熱に使いやすいと言えますね。膀胱湿熱は関係する症状から膀胱炎とも言える状態になるので、膀胱炎の症状がある方に対して使う経穴とも言えます。
また委陽は三焦の下合穴と言われているので、三焦は気と津液を巡らせる働きがあるので、気の循環、排尿に対して使用できることになります。膀胱・三焦はともに、水の循環に関係をしているので、委陽は排尿障害に使う重要な経穴だと言えますね。
経絡の走行から使っていく場合は、足太陽膀胱経は頭顔面・背・腰・殿部や下肢後面に走行をしているので、走行上に痛みなどがある場合に使いやすいところですね。三焦の下合穴という考え方で使用をすれば、手少陽三焦経の病に対して使用することができるので、上肢の症状を委陽で治療できると言えますね。
4.委陽の使い方
委陽を鍼で使っていく場合は、深部に総腓骨神経が走行することが多いので、深く刺入することは少ないですね。刺入をしても5㎜程度にしておく方がいいと思います。委陽から外側に向けて刺入をすると大腿二頭筋に対して刺入していくことができるので、ハムストリングスが硬い場合にはいいと思います。
委陽からやや斜めにして膝前面外側に向けて刺入をしていけば、腸脛靱帯の下部を刺激していくことが出来るので、ランナー膝と言われる腸脛靱帯炎に対する治療として使いやすいと思います。刺入方向は注意をしないと入っていかないところですし、腱があるところなので、腱に当ると入っていかないことが多いので、刺入方向を見きわめることが大切になります。
委陽から委中に向けて水平刺をしていくと、下腿を緩ませやすいのですが、下腿を緩ませるのであれば、合陽や承筋からでも行えるので、そこまで使用することは少ないのではないかと思います。
手技で使っていく場合には、圧をかけると痛みが生じやすい場所になるので、手掌や手根、手指で擦るようにして刺激をすると、下肢、走行上に緩みが生じやすいのでお勧めのところですね。
手技で下腿を押そうとすると痛みが生じやすい場合やハムストリングスが硬くて押せない場合に、委陽は膝内側を擦ってから行うと、緩みが出て治療をしていきやすいです。