背候診(はいこうしん)―背診・候背

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 背候診は鍼灸治療の中でよく使われる方法で、背部の体表観察や触診を行っていくことで、臓腑や身体の状態を診察していく方法であり、背診(はいしん)や候背(こうはい)とも言われます。

 背候診で行っていく方法は、いきなり触るのではなく、見て観察することも重要なのですが、ついついすぐに触ってしまう人も多いのではないでしょうか。今回は、背候診について書いてみたいと思います。

 

1.背候診の意義

 東洋医学では臓腑が背骨にくっついているという考え方があるので、背部の脊柱付近は臓腑の機能を判断しやすい場所になります。例えば、肺であれば肺兪が第3胸椎棘突起下の外方1寸5分にありますが、肺は第3胸椎に付着をすると言われます。

 

 各臓腑の背部兪穴がいろいろな高さにありますが、背部兪穴があるところに臓腑が付着しているので、第11胸椎付近の色が悪いのであれば、脾の働きに異常があるかもしれないと考えていくことができます。

 

 経絡は臓腑と関係していくものなので、背候診を行うことで、臓腑を決めることができ、臓腑を決められるので使用する経絡を決めていくことができます。

 

 背候診では色、硬さ、膨隆を診ていくのですが、治療を行っていくにつれて、色・硬さ・膨隆も変化をしていくので、治療効果の確認もしやすくなります。

 

 臓腑・身体の状態を把握していくことに取って背候診は重要なものであると同時に治療効果の確認をしていくことにも使えるので、背候診は鍼灸治療の中では重要な物になります。

 

2.背候診のやり方

①背候診を行うタイミング

 診察としては見ていくことが大切なので、立位で身体のバランスを確認すると同時に背部の皮膚の緊張を見ていくことも大切なのですが、立位で裸のままでいるのは、異性では難しいので、通常は座位で簡単に触れるか、うつ伏せの状態ときにゆっくりと観察する人が多いと思います。

 

 背候診は治療の前に診察の一つとして行う方がいいのですが、治療者によっては、うつ伏せの治療をするときに確認をする人もいると思うので、自分の治療スタイルによっていつ行うかを決定していきます。

 

②背候診の順番

 背候診を行う場合は、まずは、皮膚色に変化はないか、毛が多い場所がないか、脊柱が歪んでいないか、できものがないかを確認していきます。目で観察した結果も大切になるので、慣れていない場合は、観察した感想をメモやカルテに書いておくといいです。

 

 何かおかしいと感じた場所は、診察点であり治療点になりますが、治療効果の判定をする点にもなるので、しっかりと覚えておかないといけないですね。

 

 目で観察をしたら、実際に触れていくのですが、触る前に皮膚に触れるか触れないかぐらいのところで、寒熱を診る方法もあるようです。私は実際に触れて寒熱を判断しますが、皮膚に触れる前と触れた後の寒熱に違いがあることもあるので、背部に触れる手前を診た方がいいのでしょうけど、私自身は治療として取り入れるというところまでは使いこなせないので行っていません。

 

 ここでようやく背部に触れていくことになるのですが、圧を強く加えてしまうと、身体に変化が出てしまうので、手を身体に密着をさせた状態で全体を撫でて確認していきます。手掌を肌に密着をさせて上から下まで撫でていくと、乾いたところ、湿ったところ、硬いところ、軟らかいところがあるのが分かります。

 

 最初の内は、乾いた・湿ったという違いは分かるでしょうけど、硬い・柔らかいというのは慣れも必要になっていきます。手技で全身の軽擦をしている人であれば、この触れていく段階でも分かることが多いのですが、初心者の内は触れただけでは分からないので、ついつい押してしまう人が多いでしょうね。

 

 背部全体を撫でていったら、今度は、細かい触診をしていくので、湿り気、乾燥、硬さ、軟らかさが気になったところを重点的に触れていきます。解剖学的な知識を利用する場合は、深部にある筋肉や骨の状態を確認していくことになるので、必要に応じて指を立てて深いところまで触診していきます。

 

 何かを探そうとすればするほど、指先だけに力が入ってしまうことになるので、手は自然体で、指先から掌までが身体に密着をするように触れていく中で、示指・中指の尖端で捉えていくことになります。

 

 こうやって表現をすると凄く難しいように感じますし、私自身もそれは無理だろうと思っていたのですが、やっているうちに出来るようになるから不思議ですね。

 

 手掌が先に触れていくことで、湿り気、乾燥、硬さ、軟らかさを感じているので、その後の指先で明確に捉えられますし、手全体で触れていくことで、陥凹の横幅も分かっていくことになります。

 

③背候診の確認

 治療を行ったら背候診を再度行っていくと、湿り気、乾燥、硬さ、軟らかさの変化を感じる取ることができるのですが、確認するときも、診察前と同様に見る、触れるという順番で行うことになります。

 

3.まとめ

 背候診は骨、臓腑を確認していく簡便な方法であり、治療効果を見ていくのにもいい場所になるので、多くの鍼灸師、手技療法を行う方が重視をする物になります。

 

 最初は何をしているのかが分かりにくいですが、触った経験は今後にいきてくるので、初めの内は、以前触った人と何が違うのかという視点を持って、観察していくのがいいですよ。

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