消穀善飢(しょうこくぜんき)―お腹がすきすぎる

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 消穀善飢は、食べても食べてもすぐに空腹を感じる状態のことで、東洋医学では胃熱によって生じる場合と胃陰虚によって生じる場合があります。食べても痩せてくる状態だと現代の糖尿病である消渇(しょうかつ)の可能性もあります。

 消穀善飢は漢文のような読み方をすれば、「穀が消えてよく飢える」ことになるので、いくらでも食べられる状態と言えます。痩せている人でいくらでも食べられる状態は消穀善飢の場合があります。

 

 若いうちは、食べても太らないことが多いですが、これは基礎代謝が高いためで、食べてもすぐにエネルギーとして使用されてしまうので、食欲が旺盛になります。私も若い頃は、いつもお腹が空いていたような気がしますね。

 

 東洋医学では食事は脾と胃の働きによって消化されることになるのですが、胃に熱が発生していると、食事として摂取をした物が燃えてなくなってしまうので、熱があると食べ物が消えてしまうのでいくらでも食べられる状態になってしまいます。

 

 食欲はちょっとしたことでも変化をすることがあり、食欲の亢進と低下は多くの方が経験をすることでしょうけど、食欲の亢進が長く続くようであれば消穀善飢が発生している可能性があります。

 

 よく運動をしていて、頭と身体を良く使っている場合は食欲が亢進するのもいいのですが、何もしていないのに亢進するのは異常な状態になります。

 

 東洋医学的には、手足や身体の肉は肌肉(きにく)と呼び、脾と関係をしやすいので、適度に身体を動かすと、脾を刺激することになり、脾の働きが正常になることが多いです。

 

 消穀善飢が発生しているときには、代表的なツボである足三里や身熱を取る働きがある滎穴の内庭を使っていくのもいいと思います。胃の働きを正す必要があるので、背部の膈兪・肝兪・脾兪の胃の六つ灸を使う方法もあります。

 

 飲食は身体の状態だけではなく、この時間にいつも食べるから、何となくつまむ癖があるという習慣も関係をしやすいので、胃の働きが整っていくのも時間がかかることが多いですね。

 

 患者さんの治療をしていても、敏感で反応が出やすい方は治療をした後に効果として感じる人もいますが、多くの場合は、段々と変化をしていって、気づいたらなくなっていたということの方が多いですね。

 

 自然緩解ではないかとも考えることも出来るのですが、その他の症状や体質の変化も出ているので、鍼灸の治療効果もあるのだと思います。

 

 胃陰の不足によっても生じることがあるのですが、通常、胃陰の不足が生じると空腹感があるけど食べたくない状態が発生することが多いですね。胃陰の不足による消穀善飢の場合は、病能としてはかなりよくないと考えられます。

 

 胃は湿を好み水分が多くある必要がありますが、胃の陰液が不足したことによって、冷やす力を失い、熱が強くなってしまいます。熱がつよくなると、また胃陰の損傷につながってしまうので、胃には熱だけが存在するような胃熱の状態になりやすいです。

 

 胃熱から胃陰虚に繋がっていくこともありますが、陰虚は単体で生じることがあります。睡眠は陰を補う時間ですが、睡眠不足が続いたり、極度の疲労がたまったりすると陰の不足を生じやすいです。

 

 胃陰虚による消穀善飢の場合は、痩せてくることも多いので、この場合は、現代の糖尿病である消渇(しょうかつ)の状態に近くなります。食べても食べても痩せてくるのは、身体の陰液不足が強くなって、熱により気血津液の消耗が加速をしている状態になります。

 

 胃陰が不足をするということは、対になる脾陽は亢進しやすくなるので、脾の機能が高まり、運化という気血津液の生成と運ぶ活動は活発になりやすいです。

 

 消渇の病は、肺消・胃消・脾消・腎消と分けていくことができ、肺消は上消、胃消・脾消は中消、腎消は下消とも言われます。上消の病が口渇・多飲、中消の病が消痩、下消の病が多尿となり、現在の糖尿病の症状である口渇・多飲・多尿が臓に分類されています。

 

 胃陰の不足が生じている場合は、治療としては長期化しやすい状態なので、食べても痩せてきているというときにはかなり注意が必要な状態になります。もちろん、現代医学的にも重病が潜んでいる可能性があるので、どこの臓器の障害が発生しているのかは絶えず考えないといけないですね。

 

 陰が不足をしているときには、陰陽の根本と言われる腎の働きを強めていくことが大切になるので、太渓や復溜を使っていくことが出来ます。

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