命門は督脈のツボの名前であると同時に、腎のことだという話しもあり、命門は複数の意味を持つ単語になります。
命門はいくつかの意味が出てくるので、調べ始めると意味が分からなくなってしまうことがあると思うので、説をまとめてみたいと思います。
1.命門は督脈のツボ
命門はツボの名前で、督脈上である第2・3腰椎棘突起の間になります。ツボの名前としてあるので、命門はツボだと言われたら当たり前のことだと思いますよね。
腎は精と関係深い蔵であり、生命力と強く関係をしているので、両腎の間であり、腎が付着をする第2腰椎に命門を当てはめたのは理解しやすいですね。
2.命門は腎のこと
教科書や中医学の書籍では、命門は腎のことであるという表現が多いですが、滑寿(1304~1386)が「両腎は命門である」という説を用いているのではないかと思います。『医学正伝』という書籍でも「両腎は命門」という説になっています。
他の臓腑が一つしかないのに、腎は二つあるので、その説明として両方の腎を併せて始めて腎という機能が成り立つという考えによって、両腎は命と強く関係をする命門という表現を使ったのではないでしょうか。
3.命門は目のこと
『霊枢』根結の中で、「太陽、根于至陰、結于命門、命門者目也」という文章があります。これは太陽経の走行がどこから始まり、どこにむかっていくのかという説明文になるのですが、太陽経は至陰から始まり、命門という目につながるという意味になります。
目は望診でも神気を診るところでもあり、目に力があれば生命力が豊富だと考えていくことができるので、目は命と関係をするという意味でもあると思います。
4.命門は右腎のこと
『難経』三十六難では「腎両者、非皆腎也、其左者爲腎、右者爲命門、命門者、謂精神之所舎、原気之所繋也、故男子以蔵精、女子以繋胞、故知腎有一也」という文章があり、右の腎が命門だと定義をしています。
解剖学的に腎は2つあるというのが分かったときに、腎は2つあるけど、一つは腎で、もう一つは命門なのだよという説明になりますね。この説も有名なので、『難経』をよく読まれている人に取ってみれば、命門は右腎だということになりますね。
5.命門は石門のこと
『鍼灸甲乙経』は経穴に関する書籍だとされていますが、その中で、石門が命門だという説明があります。「命門、在臍下二寸、任脈気所発、刺入五分、留十呼灸」と書かれていて、石門の説明が命門になっています。
石門は三焦の募穴であり、三焦は原気の通り道とも言われるので、石門を治療することは原気の治療とも言えるので、命と強い関係があるというところなのでしょうか。
6.命門は腎間の動気
命門が腎間の動気であるという説は孫一奎(そんいっけい)によって提唱されたものです。生命は両方の腎の間にあって休むことのない生命力があると考え、動気と表現をしていきます。
動気は生命力になるものなので、原気と関係が深く、原気は腎から作られるので、腎間には動気があり、これが生命力と関係をするので、命門は腎間の動気であると考えたようです。
7.まとめ
命門の説はこれ以外にもあるようですが、有名そうなところだけまとめてみました。命門という言葉を使った場合は、どの意味で使われているのかを考えないといけないので、少し面倒な単語になりますね。
慣れてしまえば、何の話しをしているのかが理解できるようになるのですが、しばらく話しを聞いていかないと分からないですね。教科書では命門は腎とシンプルにしているので、学校上の方が楽でしょうね。