葛根湯(かっこんとう)・麻黄湯(まおうとう)・桂枝湯(けいしとう)の違い

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 太陽病に用いていく漢方薬は桂枝湯、葛根湯、麻黄湯が有名なのですが、それぞれは状態と効能に違いがあります。

 桂枝湯、葛根湯、麻黄湯に共通するのは風邪(かぜ)の引き始めになるので、服用のタイミングから考えると、数時間~1日までの間で用いられることが多いものになります。

 

1.使い分け

 風邪(かぜ)のひきはじめは、ぞくぞく寒気がして辛い状態になりますが、桂枝湯・葛根湯・麻黄湯は寒気がするというのには使える漢方薬になるので、他の症状で分けていく必要があります。

 

 寒気以外の症状を簡潔にまとめてみます。

  • 桂枝湯:発汗がある
  • 葛根湯:発汗がなく、首背中にこわばりがある
  • 麻黄湯:発汗がなく、寒気が強く、ふしぶしの痛みが強い

 

 風邪(かぜ)をひいたときは、ぞくぞく寒気がして、首背中がこわばり、ふしぶしが痛くなると思いますが、時系列として詳細に分けると、風邪(かぜ)をひいたかなという漢字として、寒気がして、首背中がこわばるのであれば葛根湯。熱が出てきたような感じで少し汗ばむかなというときは桂枝湯。寒気が強くなって、ふしぶしが痛くなってきたというのであれば麻黄湯になりますね。

 

 風邪(かぜ)をひいたときには、症状がころころと変化していきますが、これは外邪とも言われる風邪(ふうじゃ)の遊走性という特徴が出てきているので、身体の中で風が暴れていくことで症状がどんどんと変化をしていきます。

 

 風の状態を見きわめながら漢方を処方するのが、風邪(かぜ)に取っては大切なので、桂枝湯・葛根湯・麻黄湯は使い分けが大切になっていきます。麻黄湯は寒気が強い状態だけではなく、咳が出ているときにも使用されることがあるので、桂枝湯や葛根湯よりは少し長めに使えるのではないでしょうか。もちろん、長めと言っても何日も寒気が続くことはまれなので、長くても1日でしょうね。

 

2.東洋医学で考える風邪(かぜ)の状態

 東洋医学で考える風邪(かぜ)には熱性の物と寒性の物があるのですが、熱性のものは寒気がこないで熱が強くなる状態で、温病(うんびょう)と言われていきます。

 

 温病初期は銀翹散(ぎんぎょうさん)という漢方薬が用いられることが多く、身体を冷やして熱を取り除くものになります。葛根湯・桂枝湯・麻黄湯は身体を温めて、冷えを取り除くものなので、身体に与える働きに違いがあります。銀翹散と似たような漢方薬だと葛根加桔梗石膏湯(かっこんかききょうせっこうとう)になりますね。

 

 ちなみに銀翹散は高熱、のどの痛みと渇き、ふしぶしの痛みのときに使われやすいですが、寒気が強く水様性鼻汁身体が寒性の状態になるので、銀翹散は適さなくなります。

 

 葛根湯・麻黄湯・桂枝湯が適するのは寒気がある状態なので、寒気がして発熱をしたというのは一般的に言われる風邪(かぜ)に近いでしょうね。風寒の外邪が身体に作用してくると、身体の表層が冷え、熱が身体の内側に向っていき、結果として表層の冷えと深部の熱に分かれてしまうことになります。

 

 表層は冷えているので、こわばりが生じてしまうので、これがふしぶしの痛みや首背中のこわばりに関係しやすいです。身体を温める働きがある葛根湯・桂枝湯・麻黄湯を用いていくと、深部に熱を加えることによって、中を強く温め、中から外へ熱が向かうようにすることになります。

 

 熱が表層まで向かっていくと、熱が汗として出されてくるので発汗をしていくことになります。熱が内側にある状態が続いてしまうと、身体の中に熱がこもるだけではなく、臓腑にも影響を与えてしまうことになるので、風邪(かぜ)が長引き、症状が様々に変化をしていってしまいます。

 

3.鍼灸治療

 鍼灸治療の場合は、穴性を使った治療をすれば、身体を温める・冷やすという違いに対して使用する経穴を分けていくこともできるのですが、基本からすると、外邪は肺と関係をしやすいので肺に関わる経穴を用いていくのが基本となります。

 

 身体が熱い・寒いという寒熱バランスが発生しているときには、陰陽の元である腎を考慮して治療していくので、腎経を使っていくこともできます。腎経は喉にも流注しているので、風邪(かぜ)症状で出やすい、喉の問題に対しても使用していくことができますね。

 

 風邪(かぜ)のような寒熱バランスの失調では鍼を使うよりもお灸を使っていくのが効果的ですし、陽維脈と督脈が交わる大椎は発熱に対しては外せないツボになりますね。

 

 外邪から生じる病は表証として考えることができ、身体の表層から病が始まっているので、表層にアプローチをしやすい吸角も使いやすいと思います。吸角のやり方んどに関してはこちらのブログを参考にしてください。

吸角の効果

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