四海・気海・気街

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 気海・気街・四海という言葉がありますが、気が集まるところという意味があるので、身体に取って重要な場所という意味があります。四海・気海・気街も身体部位と関係をしやすいです。

1.四海

 四海は『霊枢』海論に書かれているもので、水穀の海・血海(十二経の海)・気海・髄海があります。身体には経絡が走行しており、経絡には気血津液などが流れていると考えるので、現実には川のような物であり、川は海に繋がるので、経水は海に繋がるということで四海という言葉が出てきます。

『霊枢』海論

岐伯曰、人有髓海、有血海、有気海、有水穀之海、

凡此四者、以応四海也.

 

 具体的に書かれている場所では、海と呼ばれてくるのは何かという説明があり、胃は水穀の海ということで、食べ物が多く関係をし、衝脈は血海であり十二経絡の海、膻中は気の海、髄海は脳の海と言われています。

『霊枢』海論

胃者、水穀之海、其輸上在気街、下至三里

衝脈者、爲十二経之海、其輸上在于大杼、

下出于巨虚之上下廉

膻中者、爲気之海、其輸上在于柱骨之上下、

前在于人迎

脳爲髓之海、其輸上在于其蓋、下在風府

 

 胃のところで気街という言葉が出てくるのですが、ここ以外でも気街の意味があるので、ここで言う気街は気衝や鼡径動脈の可能性がありますね。四海には有余の場合と不足の場合があるので、簡単に結論だけまとめておきます。

 

水穀の海

  • 有余:腹満(お腹がはる)
  • 不足:空腹だが食べられない

血海

  • 有余:自分は偉大だと怒るが病識がない
  • 不足:自分は駄目だと落ち込むが病識がない

気海

  • 有余:呼吸が苦しく、顔面紅潮
  • 不足:はっきりと話せない

髄海

  • 有余:身体が軽く力があり、いき過ぎてしまう
  • 不足:耳鳴り、めまい、脛の痛み、横になりたがる

 

 四海である水穀の海は気街(気衝・鼡径部)・足三里、血海は大杼・上巨虚・下巨虚、気海は鎖骨から人迎、髄海は風府と関わると考えると、四海の有余・不足と治療場所を考えることが出来るので臨床での応用が出来るでしょうね。

 

2.気海

 気海は膻中のことであり、四海の一つになるのですが、体幹部で考えたときには重要なのは胸だけではなく、腹部も受容になるので、上気海・中気海・下気海と考えていくことができます。

 

 上気海は膻中で上焦と関係し、中気海は中脘で中焦と関係し、下気海は関元(臍下丹田)で下焦と関係をすると考えられます。上気海は宗気と関係をするので身体の活動や呼吸、血の運行と関わり、中気海は営気と関係するので身体を栄養し、下気海は原気(精)と関係をするので生殖器との関わりが密接になります。

 

 四海の一つでもありますが、上焦・中焦・下焦という体幹だけでも分けて考えていくことができるので、ちょっと分かりにくいですね。

 

3.気街

 気街は『霊枢』海論の中で記載がありますが、『霊枢』衛気にも記載があり、胸・腹・頭・下肢と関係をするので四気街あるとされています。

『霊枢』衛気

請言気街、胸気有街、腹気有街、頭気有街、脛気有街

 

 気街については『霊枢』動輸にも記載があるのですが、四街という言葉で出てきて、気の通路という意味で書かれています。気街で言われる胸・腹・頭・下肢は生きている上では重要な場所になるので、重要な場所には、気が循環をしていないといけないので、気が通過するという意味で「街」が使われています。

 

 気街は気が通るという意味があるのでそれぞれに繋がる場所があります。

  • 胸の気は、胸と背兪穴に向う
  • 腹の気は背兪穴と衝脈や臍の左右の動脈に向う
  • 頭の気は脳に向かう
  • 脛の気は気街(気衝または鼡径動脈)や承山、踵の上下に向う

 

 

4.まとめ

 四海・気海・気街についてまとめてみました。それぞれに重要な意味も含まれてくるのでしょうが、四海は何が集まっているのかによって内容が変わっていくので、水穀・血・気・髄と集まる物に違いがあり、身体部位とも関係をしています。

 

 気海の細かい分類は、体幹という身体部位には臓腑があり、臓腑は生命維持に取って重要なので、上焦・中焦・下焦という部位を分ける三焦の考え方と合わせていくことで臓腑への治療も考えた内容になっています。

 

 気街は気の通路を示している物になるので、病が生じた場合は発生した場所によって向かうところがあるので、病能の把握や治療に用いていくことができます。

 

 それぞれは必要に応じてまとめていかれたのだと思いますが、慣れてしまえば、身体に取って重要な場所が四海・気海・気街という意味なのだなと思えますね。

 

 こうやってまとめてみた感想としては、四海と気街は治療で応用できそうなので、今後も臨床の中で考察を続けてみたいと思いました。

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