腹診が上達するには小児のお腹を触るのがいいです―小児のお腹の触り方

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 腹診はお腹の硬さによって身体のどこがよくないのかを推測していく診察法ですが、正常なお腹を知っていないと、異常なお腹を理解できないので、小児のお腹を触ってみることが必要だと思います。

1.正常なお腹

 正常なお腹は平人無病の腹ということで、平人の腹や無病の腹と言われています。平人無病のお腹は、全体がほどよく柔らかくて温かく、適度なツヤと潤いがあり、押しても痛みや硬さ、緊張がなく、上腹部が平らで下腹部がふっくらと弾力があるのがいいとされています。

 

 治療院に来るような方であれば、症状があって来院されるのが普通なので、平人のお腹を触ることはほとんどないとも言えますね。そうなると、健康な人を探さないといけないのですが、健康な人は治療院には来ないので、触ることができないという堂々巡りになります。

 

 健康なお腹は健康な小児のお腹のようだとも言われているので、小児を触れる環境にある人は必ず小児のお腹を触らせてもらうのがいいですよ。ただし、小児はくすぐったいと逃げてしまうことが多いので、出来れば寝ているときにゆっくりと触るのがいいです。

 

2.小児のお腹

 小児のお腹でも健康かそうでないかによって硬さが変わるのですが、症状がある大人の人だけを触っている人だと、「異常なお腹と小児のお腹」という比べ方しかできないので、小児のお腹を触り分けることがしにくいと思います。

 

 小児のお腹は症状がある大人のお腹と比べると異常に柔らかく感じられるので、小児は小児で触り慣れていかないと、小児の腹診が出来なくなるので、結論としては小児も沢山触らせてもらった方がいいですね。

 

 小児でも少し便通が悪かったりするとお腹に硬さが生じてくることがあります。大人と比べると硬結と感じない程度なので、異常かどうかの鑑別は触ったことの経験が基礎になります。

 

 小児のお腹の張りを知るには、触った瞬間に少し皮膚がはっているかなという程度で感じることが多いので、押して硬さをみようとすると間違ってしまうことがあります。ふとお腹に手を当てたときに感じる皮膚の硬さがあるようであれば、調子が落ちているというのがわかり、少し圧をかけて押したときにコロッとしたのがあるようであれば、対応する臓腑配当や腹証と照し合せて考える必要があります。

 

3.小児のお腹の触り方

 小児は集中できないことが多いですし、遊びの要素が入ってしまうと、くすぐったいと感じてしまい、その後も触れなくなってしまうので、最初の触り方が重要になります。

 

 小児のお腹の触り方は成人と同様に、手や身体の力を抜いて、掌全体で触れていかなければならないのですが、大人よりも敏感なので、掌の脱力は重要になります。大人のお腹と比べると小児のお腹は狭いので、全体を一気に触れるようにする必要があります。

 

 掌が冷えていると、くすぐったいと感じてしまう原因にもなるので、手が温かい状態で触れることが大切ですね。

 

 お腹を触れた瞬間に感じる感覚は非常に大切になるので、掌を置いたときに、衣服を重ねたところのように沈むようであれば正常に近いのではないかと思います。羽毛布団のように手が沈みこんでいってしまうようであれば、軟の状態になっている可能性があります。

 

 衣服の上にビニールのシートを置いてあるような状態だと、掌は沈むのですが伸びないというような感触があるのであれば、硬くなっていると言えますね。

 

 こういった感覚は大人でも同じなのですが、大人の場合だと、お腹の皮下が小児よりもしっかりとしているように感じることが多いと思いますよ。

 

 掌全体を当てることが出来れば、後は深部を探っていくことになるのですが、指先を立てるのではなく、掌全体を当てたまま、四指のDIP関節付近で深部を押して触るようにしていくと、1点で押さないことになるので、スムーズに触れていきやすい傾向があります。

 

 指先で触れていくのが感覚としては優れているのですがDIPで探るように押しながら指先で感じるというのが正しい言い方かもしれないですね。DIPで押しているのに、始めは指先に集中するというのは難しいと思うかもしれませんが、段々と慣れていくものなので、最初は触りにくくても継続していくと理解が出来るようになります。

 

 同じ小児で調子がいいとき、悪い時でお腹を触らせてもらうのが、分かりやすいので、小さなお子さんがいる患者さんには、子どもも連れてきてもらって、お腹を触らせてもらうのがいいですね。

 

 何度も見慣れている顔だと小児も安心して触らせてもらえるようになりますし、何度も小児の対応をしていると小児への対応も理解できるので、既存の患者さんから練習できる場をもらうのが一番いいでしょうね。

 

4.まとめ

 腹診は東洋医学に取って大切な診察法ですが、身に付けようとするには時間がかかるものでもあるのですが、正常な状態が分かれば、異常な状態を理解していくことにもつながるので、健康な小児のお腹は何度も触って、正常なお腹を手に覚えさせていくことが腹診の上達には大切になります。

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