治療家になるためには手を作る必要がありますが、治療家の手は「感覚の手」「知識の手」「動く手」を鍛える必要があります。
「感覚の手」は触って分かる、「知識の手」は知識をベースとして分かる、「動く手」は自由自在に動かせることになります。
1.感覚の手
物を生産するときは機械によって作られている物が多いですが、仕上げや細かい作業は手で確認しないと正確な物が作れないことがありますが、手は機械よりも正確で細かい状況を確認することが出来ると言われています。
その段階までいくには簡単ではないので、熟練した職人という表現をされ、熟練にはかなりの時間を要します。治療家の手も同様で、細かい違いを触り分けられるようになるのは時間が必要になります。
治療家になったとしたらすぐに感覚の手を身に付けたいというのが誰でも思うでしょうけど、すぐに上手くなるということはないです。
感覚の手を鍛えていくために必要なのは集中力です。何に集中をしていけばいいかと言うと、「違いがないか」を感じながら触れていく必要があります。
例えば、肌のかさつきが気になっているのであれば、その場所は何度も触ることになり、変化がないかなと思いながら触れていくと、調子がいいときに違いがあることが分かりますよね。
人の身体の状態は同じ状態は二度と存在しないので、治療中においても少しでも変化がないかを絶えず気を付けながら触れていくと、違いが生じていることが分かるようになってくるので、治療前後も身体をよく触れていくことが大切です。
脈診への手を作るのも同様で、鍼や刺激をしたら脈に変化が出ていないかを何度も確認していくと、最初は違いが分からなくても、集中して脈診をすれば「何か」が違うということに気付くようになります。
微細な変化でも集中して触れていくと、ちょっとした「変化がある」というのが分かるようになるので、そこから「何が違うのか」と考えながら触れていくと感覚の手が作っていくことが出来ます。
2.知識の手
知識の手は自分が触っている物が何か分かるかという知識が大切になります。例えば、高齢な方であれば骨がもろくなっているので、変な方向から圧をかけてしまえば骨折するリスクもありますし、ましてや鍼を刺すのであれば胸膈は気胸を発生させるリスクが高い場所なので、知識として分かる必要があります。
分かるためには、事前に知識が入っていないと分からないですし、感覚が鋭くなったとしても、その感覚自体が間違っている可能性があります。
治療の現場にいれば、患者さんから先生と言われ、否定してくれる人が誰もいなくなるので、ついつい自分が正しいと思いがちですが、人は勘違いやミスをするのも当たり前なので、勘違いやミスが起きないためにも知識を再確認して、勘違いやミスがないかを確認し、知識と技術を結びつける必要があります。
ミスは初心者の内は発生しやすいのは当然ですが、慣れた頃にも発生をしてくるものなので、自分を律しておかないといけないです。
私も卒業するまでに体表の指標となるところは何となく分かったつもりでいて、臨床の場でも問題ないかと思う時期があったのですが、解剖学や経穴をしっかりと見直してみると、勘違いや覚え間違い、忘れが発生していたので、最近はまた確認を怠らないようにしないといけないと思い、知識の棚卸中です。
卒業すると誰にも言われない状況になるので、自分の中で数年に1回は確認するなど、ルール化して実行していくことが大切なのではないかと思います。
3.動く手
人の身体は平らではなく、円型になっていて、部位ごとに太さも違うので、手を身体に合わせて触れるようになっていかないといけないです。集中したりすると指先だけに力が入りがちですが、力を抜きながら動く手にしていかないといけないです。
人の身体は不整地のような物なので、手は身体に密着をさせながら、触れ続けないといけないので、自然な手にしないといけないです。
誰でも動く自然な手は持っているのですが、何かをしようとすると途端に緊張して動かない手に変わってしまうことが多いです。
例えば、動物や子どもを触れるときに指先だけで触らずに柔らかく撫でると思いますが、治療で患者さんの身体を触れるときも同様に優しく柔らかく触れないといけないです。
慣れていない内は、手が自由自在に動かしにくいですし、感覚や知識を使おうとして、余計に緊張してしまうので、意識は集中していても脱力していかないといけないです。
スキーで非常に上手な人であれば、雪の凸凹があっても膝をクッションにしながら、頭の位置は変わらずに滑りますが、身体を触る手の場合も肩の位置は変えずに、手関節をクッションにしながら身体の凹凸に合わせていかないといけないです。
柔らかい手を作るのには、意識としては、動物や子どもを触れるような手と思うといいでしょうし、手を作っていくのであれば身体を軽擦するのが凹凸も分かり、身体の反応を診る切経(せっけい)にも役立つのでいいでしょうね。
4.まとめ
治療家としての手という話しであれば、こちらの書籍が有名なのではないかと思います。というか、手を作るという書籍自体がそもそもないので、治療家の手についてはこちらの書籍にたどり着くしかないでしょうね。
『治療家の手の作り方-反応論・触診学試論』