痃癖は肩癖(けんぺき)と表現されることもあり、いくつかの意味があり、肩こりの意味や腹部の硬結として使われています。
1.痃癖
「痃」という漢字は筋肉が引きつる病と考えることができ、「癖」は偏ったことにより生じる何かになるので、何かの原因により、筋のひきつりが生じたことにより、何かが発生した物が痃癖と言えます。漢字単体の意味として書くと意味が分かりにくいので、どういった使い方があるのかも書いていきます。
2.肩こりの痃癖
肩こりの痃癖の意味としては、どうやら日本の中で使用されていたようですね。原文を探しだすことができなかったのですが、『大辞林』を参考にすると日本の小説などの中に含まれているので一般的な用語だったようです。
『南総里見八犬伝』では「目の病は痃癖の凝り・・・」と書かれているようで、今風に治せば「目の病は肩凝りが関係する」というところでしょうか。
『誹邪柳多留』では「よし町の痃癖に成るいろは茶屋」と書かれているようで、文章全体の意味が分からないので、何とも言えないのですが、『大辞淋』によると、肩が凝るほどの心配ごとを示しているようです。
『浄瑠璃・新版歌祭文』では「艾も痃癖も大掴みにやってくれ」と書かれているようで、痃癖は肩凝りを示しているようで、艾と何かをするということで、あん摩を示しているようです。
痃癖と言えば、肩凝りで、あん摩の人に痃癖と言えば通じたぐらいので、有名な単語だったのでしょうね。それとともに、そんなに昔から肩凝りがあったのかと思うと、パソコンだけが原因なのではなく、日本人の特性なのではないかと思いますね。
3.腹部の硬結と痃癖
古典文献では痃癖がどこに書かれているのかを調べてみると、中国のサイトで、『外台秘要』巻十二と『太平聖恵方』巻四十九に痃癖についての記載があるとのことで、臍から肋付近にある筋肉の筋状の硬結で痛みが生じるものだそうです。
『外台秘要』では、痃癖は気血の循環が悪い、経絡の流れが悪い、食滞、寒凝によって生じるものだという説明が書かれているようで、痃癖に対する処方や治療についての記載もあります。
中国のサイトで痃癖についての説明を見てみると『太平聖恵方』に書かれているとあるですが、『太平聖恵方』の原文を中国サイトでみてみると、「癖」についての説明が書かれていて「痃癖」ではないのですよね。原文が手元にないので確実ではないですけど、どうなのでしょうか。
原文を見てみて分かるのは、「癖」は気の滞りによって発生をしていくもので、臍の左右にある筋状の痛みのことで、寒邪によって気の滞りが生じ、積聚となって発生するものという話しになっていますね。
痃癖について調べていってみると、『鍼灸資生経』巻四にも記載があるのですが、内容は「癖」について書いてありました。癖は腹部の硬結と関係をしているので、積聚の話しや腹部系症状を治療するのには何がいいかという記載になっています。
4.まとめと疑問
東洋医学の古典と言われている物を調べていくと痃癖は腹部の硬結という意味になっていくのですが、日本の歴史で考えると肩こりなのですよね。『漢方用語大辞典』だと腹部の意味についての記載もあるのですが、肩凝りのことで、うちかた(打肩、内肩)とも言うという説明が出ています。
『漢方用語大辞典』
日本ではいつから肩こりが痃癖と呼ばれるようになったのでしょうか。痃癖についてのブログも見つかったのですが、「痃癖は肩こりの別名」という前提に立っているものなので、「痃癖がいつから肩こりになったのか」という私の疑問については解決しませんでした。