学校にいるときは授業時間内に出来ればいいでしょうし、試験で合格を出来ればいいですが、臨床の中では試験がないし、正解もないし、誰にも注意を受けなくなるので何が大切なのか分からなくなります。
刺入するスピードが速いのが上達なのでしょうか。
痛くない鍼を出来るようにすることが上達なのでしょうか。
もちろん、スピードも痛みを出さないのも基礎の技術として必要なことなので上達しないといけないことですが、これだけでは全然足らないです。臨床の中での鍼の上達は、自分が上手く出来ればいいというものではなく、相手があって成り立つものなので、一つの治療として成り立っていくのが上達とも言えると思います。
治療においては鍼を刺すのに押手を使うことが多いですが、治療の中では押手の上達も大切な要因になります。鍼を刺すということに集中していくと刺手の方が重要に思うことがありますが、患者さんに取っては触れられているのが治療として認識をしていくので、触る押手の上達は不可欠だと思います。
鍼灸をやっていくためには「按摩10年」とも言いますが、身体を自然に触る手が出来てくるのにはやはりこれぐらいかかるのだろうと思います。
揉みの基本となるのは押圧操作と考えがちですが、身体に触り続けることも基本です。どういうことかというと、押している間は手を離さないですが、腰部から下肢に移動するとき、右足から左足に移動するときでも必ずどちらかの手を触れ続けた状態が基本になります。
身体の変化していくのを読み取ることとしても大切ですが、寝ている患者さんに取っては、どこに施術者がいるのか分からないですし、いきなり押圧操作をされると驚いてしまうので、触り続けていくことで施術者がどこにいるのかという安心感にも繋がります。
これを鍼灸で考えていくときは押手で身体を触ったとしても手を離さないで施術を続けていくことになります。慣れていないうちは治療をしている最中に手が離れる時間が多くなるので、鍼をシャーレから取るときも押手は身体に触れていく方がいいですね。
使い捨ての鍼を使っている場合は、あらかじめ鍼をシャーレに出しておくと手を話すことが減ります。もし、鍼と鍼管が一体化しているタイプであれば、一体化しているまま小指と薬指の間か薬指と中指の間に4~5本持っていくと、手を離すことが減っていきます。
ディスポの鍼は滅菌されて包装されているので、鍼をシャーレに出すよりは、そのまま押手に持っておく方が衛生的だと考えることもできますね。鍼管の先端に触れてしまうのが不衛生という考えであれば、全てシャーレに置くことになりますが、この辺りの衛生に関してはどこまで拘るかで分れてしまうのではないかと思います。
衛生のことを徹底するのであれば医師のように完全防護をした状態でやるべきということになってしまいますが、鍼灸治療で同じにしようとするのはかなり難しいですよね。
これで患者さんの身体から手を離す時間が少なくなるので、患者さんは安心をしやすいですね。取穴をする際も指先が身体から離れてしまうようだと安心感を持ちにくいので、手を離さないように、取穴をした方がいいです。
鍼の上達には切皮痛を出さないことも大切になりますが、技術的な要素だけではなく、道具の問題もあるので、自分がよく使う道具に関しての知識もあった方がいいです。
例えば、ディスポの鍼を使ったみたときに、メーカーによっては身体に当たる部分の鍼管に凹凸が残っている場合があるので、その場合はどんなに切皮痛に気をつけたとしても鍼管を置いたときに痛みを感じてしまうので、患者さんに取っては痛い鍼になってしまいます。
鍼の上達というと刺すということに視点が向きがちですが、実際の臨床の中では相手がいることなので、相手はどうなのかを考えていくことが必要だと思っています。ネットで鍼の上達を調べてみると細かい技術的な要素があるのですが、初心者のうちは、丁寧に話を聞いて、丁寧な対応を心掛けることが大切だと思います。
キャリアがついてくると自分のスタイルになってきますし、鍼の技術が上手くなっていますが、もっと上を目指していくのであれば、基本に戻って何が大切なのかを考えていくのがいいのかなと思いました。
そういう意味で、今回のブログは自分の反省を込めて大切なことって何だろうなと考えなおしてみました。