経乱(けいらん)―月経異常と東洋医学

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 月経周期が安定しなくて、早くなってしまったり、遅くなったりしてしまうことを東洋医学では経乱(けいらん)と言います。

 月経周期が安定しないと、病気じゃないかと不安になることも多いでしょうし、妊娠をしようと思ったときに、月経が安定していないと、排卵も読めなくなってしまうので、月経周期を安定させたいという人もいるのではないでしょうか。月経周期が乱れてしまう場合は東洋医学ではどのように考えるのかまとめてみたいと思います。

 

1.月経と東洋医学

 女性生殖器を東洋医学では女子胞(じょしほう)・胞宮(ほうきゅう)と呼ぶので、月経異常は女子胞の異常として考えることが出来るのですが、東洋医学では臓腑と気血によって生命が成り立っていると考えていくので、女子胞の異常は、臓腑・気血の異常として考えていくことになります。

 

 臓腑・気血の異常ということは、女子胞だけの問題ではなく、全身状態の現れとして症状が出てきていると考えることになります。月経は多くの臓腑の働きが関係をしてくるので、臓腑・気血・経脈について知っていくことが必要なのですが、月経のメカニズムは過去のブログで書いているので参考にしてみて下さい。

「月経のメカニズム―東洋医学で考える月経」

 

2.経乱を生じる原因

 月経周期が乱れてしまうということは、胞宮に関わる重要な臓腑の異常が関係しやすいので、肝・腎の異常が関係している場合が多いです。

 

 腎は生殖機能と多きく関係をしていて、成長・発育とも関係しているので、成長していくことで、生殖器機能が発達していくためには腎が重要になります。初潮の頃は月経周期が安定しないことがありますが、腎が充実していないために、胞宮も十分に成熟していないので、月経周期が安定しにくいと考えていきます。

 

 閉経前後も月経周期が乱れてしまうことがありますが、この場合は、老化によって腎の働きが低下をしてしまうことで、胞宮も十分に栄養されないために、月経が安定しにくい状況になると考えていきます。

 

 月経は肝の疏泄という働きによって管理・調節されているので、肝の疏泄は月経の司令塔のような役割があります。肝の疏泄が失調をしてしまうと、指令を上手くだすことができなくなってしまうために、月経周期が安定しにくい状況になってしまうと考えます。

 

 他には、心脾の働きが低下をしてしまっている気血両虚の場合も発生することがあります。月経は血が体外に出る現象ですが、血が体外に出ていくためには、気の働きが必要になってくるので、気血が不足をしている状態は月経にも異常が発生しやすいと考えていきます。

 

3.経乱と弁証

1)腎虚による経乱

 腎の働きは成長・発育と関与をし、生殖器の発達にも重要な臓になるので、腎の働きが低下してしまっている状態だと胞宮が十分に機能をできなくなってしまうことになります。

 

 腎の働きが低下をしてくるのは、成長過程・加齢が関係しやすいですが、疲労が強いときにも腎虚になってしまうことがあります。

 

例えば、日々の生活でも疲労が生じますが、一晩ゆっくり休めば回復することがあると思いますが、この場合は、気の低下と関係をしやすいです。とてつもなく忙しくて、寝る時間もない状態だと、生命力を削って仕事をしている状況と言えますが、この生命力が腎と考えていくと、無理を続けてしまうと、腎の働きが低下をしてしまうことになります。

 

2)肝鬱気滞と経乱

 肝の疏泄は月経をこさせる力になりますが、肝の疏泄が失調をしてしまった場合は、月経を発生させることが難しくなります。そのため、肝鬱気滞では月経周期が遅くなる経遅が発生をしやすいのですが、時には月経をこさせてしまうことがあります。

 

 例えば、秋の公園付近は落ち葉が溜まっている状態になりますが、人々の生活、風向きによってたまりやすい場所があると思いますが、風が吹くと落ち葉が舞っていろいろなところにいきますよね。肝の疏泄が失調をしてしまった状態はこの落ち葉が溜まっている状態とも言えるので、ときに舞うことがあるのが、この経乱になります。

 

 肝鬱気滞はストレスによって発生しやすいので、ストレスがかかった状態が続くと、肝鬱気滞が生じてしまうことになります。ストレスは原因を取り除き、ストレス解消を行えれば軽減していきますが、身体に入った刺激はすぐに改善されるわけではないので、しばらく持続してしまうことがあります。

 

3)心脾両虚と経乱

 脾は気血を生成する働きがあり、脾の統血は胞宮に血をためる力にもあります。脾の働きが低下をすると、気血の生成が不足をし、血が不足をしてしまうと、月経周期が遅くなる経遅が発生しやすくなります。脾気が低下してしまうと、胞宮に血をためる働きが低下をしてしまうために、月経周期が早くなる経早が発生しやすくなります。

 

 脾は統血という働きでは胞宮に直接働きかけていますが、血の視点からみると、直接的ではありませんね。しかし、胞宮に十分な量の血を生成するのは脾の働きと言えるので、脾の働きが低下をしてしまうと胞宮にも影響が生じます。

 

 脾の低下によって血が不足した場合は、心血に影響を生じやすくなるので、脾の低下によって気血が不足した場合は、心にも影響が出ることが多いです。

 

 脾と心は精神の状態とも関係をしやすいので、心労が生じた場合には心脾両虚を生じやすくなります。他には、出産後のように体力(気)と出血を伴う場合は、心脾両虚でもある気血両虚が生じてしまうことになるので、大病や慢性病も心脾両虚を生じやすくなります。

 

4.経乱の治療

 経乱の治療では、身体の状態を把握し、弁証を分けていくことが大切になるのですが、重要になってくるのは、腎・肝・脾と言えます。

 

 弁証が分けられれば、治療を分けていくことができますが、弁証を確定できないと治療が難しいと感じてしまうかもしれませんね。その場合でも、重要な臓は腎・肝・脾になってくるので、足三陰経の交会穴(こうえけつ)である、三陰交・中極・関元を使用していけば、経乱の治療をしたとも言えますね。

 

 中極・関元は異性に対して用いていくのは微妙な場所になるので、代用として下焦の働きを強める気海を利用するのもいいと思いますね。

 

 ストレスと心労は分けるのは難しいかもしれませんが、症状が出るようになって背景として日々の生活や仕事の状況などを訊ねていくと、判断できるようになるのではないかと思います。

 

5.まとめ

 今回は、月経異常についてということで、経早・経遅・経乱について続けてまとめてみましたが、月経異常ということを考えるときでも、臓腑・気血の働きを考えていくのはやはり大切だなと思いました。

 

 治療に関しては、いろいろなやり方があるので、詳細なところまでの記載はしなかったですが、治療は治療でまとめてみても面白いのかなと思ったので、気が向いたら書いてみようと思います。

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