膀胱炎は、細菌感染により、膀胱に炎症が生じてしまって、排尿しにくくなったり、排尿痛が生じたりするものですが、猪苓湯(ちょれいとう)、竜胆潟肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、五淋散(ごりんさん)などが使用されることが多いです。
1.膀胱炎は女性に多い
女性の尿道は短く、膣や肛門と近いので膀胱まで雑菌が入りやすいために、膀胱炎は女性に生じやすいです。排尿は尿道の汚れを洗い流す役割もあるので、トイレに行くのを長時間我慢することを繰り返すと、尿道などで細菌が繁殖しやすくなるので、トイレに行く習慣を守った方がいいですね。
2.膀胱炎と東洋医学
膀胱炎を東洋医学で考えていくと、膀胱に湿熱(しつねつ)が停滞してしまった状態として考えていきます。湿熱と言ってもイメージがつきにくいですが、食事・生活習慣によって生じやすいものになります。
甘い物、油っこい物、濃い味の物は湿性が高いと考えられているので、食事習慣が偏っていると湿が身体の中に停滞してしまい、熱を帯びてきてしまいます。湿は下に降りる性質(下注性:かちゅうせい)があると考えていくので、膀胱に停滞すれば膀胱炎の症状と似てきますし、下肢に浮腫みが生じやすくなります。
辛い物の偏食は身体に熱を貯めてしまうので、湿性の高い食事もしていると、湿熱を停滞させやすくなると考えていきます。
東洋医学では身体の気血津液(きけつしんえき)が流れ続けていることで正常な状態になっていると考えているので、運動不足、冷えによる気血津液の停滞が生じた場合も、水(津液)の流れが悪くなり、湿が停滞をしてしまうと考えていきます。
3.膀胱炎と漢方
膀胱炎に使われやすい漢方は猪苓湯(ちょれいとう)、竜胆潟肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、五淋散(ごりんさん)と言われますが、東洋医学では、その人の体質に合わせた処方を用いていくことになります。猪苓湯は残尿感が強く、なかなか出ない感じがある人。竜胆潟肝湯は排尿痛が強い人、五淋散は体力がない人と簡単に言われることもあります。
1)猪苓湯
猪苓湯は湿熱を身体から取り除く働きと、身体を補う働きがあります。細かい状態としては、湿熱の熱によって、血熱になり、血熱は血の流れが加速して出血している状態になるので、猪苓湯を使用する人では血尿が生じていることが多いです。
血が身体の外に出てしまうということは、身体の血が不足をしてしまっているので、猪苓湯では、湿熱を取り除くことで血の流出を防ぐので、血を補う働きがあると言えますね。
2)竜胆瀉肝湯
竜胆瀉肝湯は肝鬱気滞から生じた肝火上炎に対する漢方薬になりますが、膀胱炎のような排尿障害に使用されることがあります。
病態としてはストレスによって肝気がうっ滞して、津液の流れが悪くなると、津液の停滞から湿になり、湿が停滞すると熱化して湿熱になってしまうので、肝火上炎と湿熱が合わさった状態と言えますね。
湿熱ということだけだったら猪苓湯と同じになってしまいますが、陰部の腫脹や疼痛、帯下(たいげ:おりもの)を伴うときに使用されます。
3)五淋散
五淋散の淋とは「小便がしぶって出にくく、ポタポタと出る」という意味があり、5つの淋に対して効果があると考えられています。5つの淋は、石淋(尿路結石のような状態)、気淋(前立腺肥大のような状態)、膏淋(尿の色がクリーム色)、労淋(過労による排尿異常)、熱淋(急性の膀胱炎のような状態)です。
湿熱に対する漢方薬なので、猪苓湯と同じような方に使用するのですが、排尿痛や尿の異常、排尿後の不快感が強い場合には五淋散になります。
淋という名前が付いているので、排尿障害の代表的な漢方薬とも言えますね。
4.まとめ
上記以外にも様々な漢方薬が使用されたり、他の漢方薬も組み合わされたりすることがありますが、その人の身体の状態を東洋医学で考えた結果によって行われることなので、診察を受けた身体の状態によって処方が決まると言えますね。
鍼灸では排尿障害は膀胱に湿熱が停滞してしまった状態だと考えていきますが、気血津液や臓腑を考えていくと、身体の状態によっては治療を工夫していくことができるでしょうね。