鍼灸院でもカルテを使用しているところがあると思いますが、個人院だと他の人がカルテを見ることがないので、自分だけのメモになってしまっている場合も多いのではないでしょうか。
私自身もカルテは自分が分かることが中心だったのですが、少し見直してみようと思ってカルテの書き方を調べていたら、カルテの書き方でSOAPやPOMRというのがあったので、備忘録を兼ねてまとめてみたいと思います。
1.カルテの存在意義
カルテは単なるメモではなく、患者さんの情報、治療者の評価や考え方を継続して書いていくことで、自分の治療と患者さんの歴史になるので、同じような患者さんが来院したときに役立つ情報にもなります。
医師は、診療記録の記載が義務付けられていますが、鍼灸師は義務付けられていないので書かないという人もいるのかもしれませんが、身体の状態が治療によってどのように変化をしてきているのかという記録にもなるので診療録(カルテ)は書いた方がいいでしょうね。
保険請求を行う場合は、カルテ作成と保存義務があるので、既に書いている人も多いのではないでしょうか。
カルテを書くということは、身体に対する記録になるし、来院日が分かるので、万が一、治療の後で調子が悪くなったとしても、どのような治療が影響したのかを考えることができるので、自分のためにも書いておいた方がいいですね。
2.カルテの書き方
カルテを情報として役立てるためには、メモではなく整えた記載が必要になるので、SOAP(ソープ:Subjective, Objective, Assessment, Plan)が使用されることがあります。
患者さんの抱える問題に対して実践する医療はPOS(問題指向型システム:Problem Oriented System)であり、POSに基づいた診療記録の作成方法がPOMR(問題指向型診療記録:Problem Oriented Medical Record)であり、SOAPによって記載していきます。
詳細に考えると混乱しやすいですが、結論から言えばSOAPの形で記載をしていくことを徹底していけばいいのでSOAPを知る必要があります。
- S:Subjective(主観的な内容、自覚症状)
- O:Objective(客観的な内容、他覚所見)
- A:Assesment(考察、評価、判断)
- P:Plan(計画、方針)
具体的には以下の通りになります。
- S:主訴や患者さんが訴える内容
- O:身体診察・検査から得られた情報
- A:SとOから考えられること
- P:治療方針、内容、生活指導
カルテへの記載は以下のような状態になります。
- S:首肩の凝りと痛み。
- O:理学検査陰性、眼精疲労と頭痛があり、同じ姿勢が長い
- A:胸郭出口症候群ではないので局所の筋緊張によって生じている(僧帽筋)
- P:天柱、肩井、肩外兪に1寸1番で5mm刺入。僧帽筋のストレッチ指導。
3.SOAPの有用性
SOAPで記載をするということは、そのまま患者さんの病態を把握して治療まで結びついているので、患者さんへの病態説明に使用することができます。先ほどの例で言うと、
「首肩の痛みは、理学検査が陰性なので構造的な圧迫がないと考えられるので、同じ姿勢を長く続けたことにより、肩周りの筋肉が緊張をしてしまい、血流が障害され、神経が圧迫をされたことで生じていると考えられるので、肩周りの筋肉の緊張をほぐして、血流を改善し、神経圧迫を取り除くことで改善を図ります。日々の注意点としては、肩周りのストレッチをよくしてください。」
という文章にすることができるので、患者さんへの説明に役立つし、自分の治療を文章によってはっきりとさせることができます。次回に来院されたときに、再度、SOAPを利用することで、前回と何が違うのかを明確にすることができるので、継続した回数が増えれば、どういった治療を試していったのかが明確になるので、病態の把握にも役立ちます。
いろいろな本や資料が手元にあるのはいいですが、整理分類されていなければ、どこに情報があるのか分からなくなってしまうので、役立てることが難しくなりますよね。
SOAP方式も同様で、いろいろな情報を整理分類することで、自分の考えをシンプルにしていくことが可能なので、治療に役立つことが多いと思いますよ。
4.まとめ
普段の治療の中でSOAPを意識しておくと、患者さんへの病態説明をしやすくなりますし、自分の治療に対する考え方を整理していくことができるので、最初は大変でも、情報を整理する癖をつけるといいと思いますよ。
治療内容もどこに、どれぐらい行ったかをしっかりと書いておけば、次の治療のときに、深さや方法を変えてみるのはどうかと考えることもできますよね。気胸が生じた場合でも、鍼の長さと場所、方向をしっかりと書いておけば、自然気胸だろうという判断することも可能になりますしね。