接触鍼と刺入鍼の結果の違い

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 鍼の治療では、身体に触れるだけの接触鍼(せっしょくしん)と身体の中に刺していく刺入鍼(しにゅうしん)がありますが、結果に違いはあるのでしょうか。

 治療方法としての考え方はいろいろあるでしょうから、ここでは、鍼の持つ特殊性について、接触・刺入と分けて考えていくので、初学者の参考になればいいかなという内容です。誰かについて本格的に指導を受ける場合は、治療の中での使い分けなどは、その方を参考に行っていくといいと思いますよ。

 

1.接触鍼

 接触鍼は、身体に鍼を触れていくだけの治療になるので、通常の鍼や鍉鍼(ていしん)だけではなく、凸の状態の物であれば何でも利用することが出来るので、簡便な方法と言えますが、治療をしている側は際している感が少ないし、治療を受けている側は治療されている感が少なくなりやすいので、扱うのは難しいと思います。

 

 身体の反応を診られるようになってくると、鍼によってどれぐらい変化をしたかを分かるようになってくるので、治療に慣れてきたら、接触鍼を利用していくのもいいでしょうね。

 

 一穴だけで利用することも出来ますが、多数のツボを利用したり、面全体に鍼を当てたりすれば、全体での刺激量が増えるので、治療後の変化も診やすくなってくると思いますよ。

 

 接触鍼を行うときは、通常の鍼と同じように鍼を刺入するつもりで行っていかなければいけないので、入らない鍼だからといって、適当に当てていくのではなく、通常の鍼と同じように扱わないといけないですが、入らない物なので、集中力はより必要だと思います。

 

 接触鍼を行う場合は、鍉鍼を使う人が多いでしょうが、鍉鍼だと刺入する鍼と比べて尖端の点が大きいので、ピンポイントではないので、その分、時間や鍼の重さなどで代用しているのではないかと思います。

 

 通常の鍼で接触鍼を行う場合もいいのですけど、刺入するように扱っていると入ってしまうことが多いので、入れないという選択肢を取るときに、接触鍼で鍉鍼を利用することが多いのでしょうかね。

 

2.刺入鍼

 刺入する鍼に関しては説明が要らないかもしれませんが、皮膚、皮下、筋肉と刺入する場所を細かく分けることが出来ますし、皮下のみに刺入していく水平刺なども行っていくことが出来るので、治療の幅は非常に広いです。

 

 しかも刺入する鍼は太さ、長さを変えていくことが出来るので、治療の中で使い分けられるようになるといいのですが、いろいろな鍼を直刺、斜刺、水平刺と使い分けていかないといけないので、技術的に向上させていくのは難しいでしょうね。

 

 特に、刺激に弱い治療者だと、刺激が強いと感じるような治療を嫌う傾向があるので、接触・浅鍼系の治療者は、多くの鍼を使用しないのではないかと思います。

 

 刺入する場合は、深部の構造についても知っておかないといけないので、現代医学系の治療をする人であれば、しっかりと刺入していくことが多いのではないでしょうか。

 

 整骨院・整形外科での鍼灸治療の場合も、刺入鍼を使用することが多いでしょうから、刺入鍼は一般的だと思います。刺入鍼のいいところは、刺して置いておくという置鍼(ちしん:留鍼:りゅうしん)というやり方があるので、目的の場所に鍼を刺入して、置鍼によって身体が変化するという時間を味方につける治療でもあります。

 

3.接触鍼・刺入鍼の効果の違い

 接触鍼・刺入鍼の効果の違いは、治療方法が設定されているところであればあるのかもしれませんが、道具と治療という点だけで考えれば、どちらで開業している人もいるでしょうから全体から見れば、大きな違いはないのではないかと思います。

 

 では、何故、治療で使い分ける人がいるのかと言えば、治療方法として確立していない場合は、表層から深層からのアプローチの違いを、イメージしているのではないかと思います。

 

 私自身は、基本的には刺入鍼ですが、鍼が苦手な人であれば、接触鍼を行うことがありますし、仕上げや調整で利用することがあります。仕上げで使う場合は、全体治療が終わっているので、局所やどこかに刺入鍼を行っていくと、刺激が残ってしまってしまうというイメージがあるので、仕上げでは接触や切皮のみのような軽い鍼を行うことが多いです。

 

 調整で利用する場合は、治療全体で変わらないときや変化をもう少し出したいときに、接触鍼で様子をみて、効果が高そうであれば、刺入鍼を利用しているので、そのまま刺入または入っていけばいいかなという程度で利用します。

 

 入らなくて、どうしても刺入したい場合は、鍼管を利用して刺入していくこともあります。これは治療でのイメージや使い方になるので、人によって使い分けのルールがあると思いますが、言語化で分けている人はどれぐらいいるのでしょうかね。

 

 海外の論文で鍼灸の効果があるかどうかを確認するために、刺入鍼を治療群、接触・切皮を対照群として設定した結果、効果が変わらないので、鍼に効果がないのではないかという話しがありますが、接触鍼・刺入鍼を使っている我々からしてみたら、それは変わらないだろうと思いますけど、一般的にも海外からも刺入鍼が鍼治療であって、接触鍼は一般的ではないし、広まっていない治療方法ですね。

 

4.まとめ

 初心者のうちは刺入する鍼で治療効果を出すことに専念して、その後、治療に慣れてきたら、接触鍼を利用するのが身に付きやすいのではないかと思っています。なぜかといえば、接触で効果がなかったとしても、刺入に変えれば変化を出せるという保険がありますし、接触だけで行わないといけないと考えたら丁寧な扱いになるので、接触鍼に必要な丁寧さを出せるからです。

 

 接触鍼を丁寧に行うことが分かると、刺入鍼でも丁寧さが生じるので、刺入鍼の治療効果が変わり、接触鍼も扱えるようになるので、相互効果もあると思います。

 

 もちろん、逆に接触鍼から行うのもいいのでしょうけど、一般的ではないので、余程、上手く治療を組み立てないと、治療を受けた感がないので、患者さんから指示をされにくいので、治療の中外での工夫が必要だと思います。

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