身体の芯から寒い原因と対策―陽虚と畏寒

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 夏は冷房で寒くて、冬は寒くて辛いので厚着をしているけど、それでも寒く感じてしまい、しかも、手足の冷えが強すぎて、なかなか眠れないと、1日中、1年中冷えに苦しむことになってしまいますよね。冷えだけの人、のぼせを伴う人もいますが身体はどのような状態にあるのでしょうか。

 冷えを感じるのは女性が多いと言えますが、若い男性でも冷え症の人は多くいます。夏場は冷房で冷やされ体調を崩してしまいやすく、冬は寒さが辛くて元気が出ないし、手足にしもやけが出来てしまう人もいます。夏の場合は、外が暑いので、冷房だけではなく、日々の生活で冷たい物を摂取したりすることによって、身体を冷やしてしまうことなります。日々の生活を注意していっているつもりでも、身体のリズムを壊してしまうことがあるので、冷えをなくしていくためには、原因と状況を把握して、自分にあった対処の仕方を理解していくのが大切になります。

 

1.冷えの原因

 冷えの原因と考えられることはいくつかありますが、基礎代謝が少ない可能性もあります。筋肉は身体を動かす物で、動くと熱が発生するので、筋肉が多いと熱を生み出す力が強くなるので、冷えづらくなります。年を取ると、寒さに弱くなってしまいますが、基礎代謝が減っているので、熱を生み出す力が弱くなってしまっているために、寒さに負けてしまう状態になっていると言えます。

 

 冷えの大きな原因として考えられるのは自律神経の乱れもあります。自律神経は身体のいろいろな機能と関係していますが、血管の働きとも大きく関係しているので、自律神経が乱れてしまうと、血流も乱れ、冷えを生じてしまいます。

 

 自律神経は、疲労、食事などの生活の影響を受けていくので、自律神経が乱れてしまった場合は、日々の生活の見直しなども必要になり、状態が安定していくまでも時間がかかってしまうことが多いです。

 

 その他にも病気によって冷え症が生じてしまう人もいるので、冷えの原因はこれだけと断定するのは難しいところですね。

 

2.東洋医学で考える身体の冷え

 東洋医学では、身体の体温を正常に維持するための力を陰陽で表現し、陰気(ひやす力)と陽気(温める力)のバランスが崩れてしまった状態を冷えやほてりとして考えていくので、身体が冷えるということは、温める力になる陽気が不足してしまった状態になるので、東洋医学では陽虚(ようきょ)と表現しています。陽虚の場合だと強い寒気があるし、寒いのを嫌がる状態も生じてしまうので、畏寒(いかん)という寒さを嫌がると言う表現もあります。

 

 陽気は身体を温める働きがありますが、睡眠中は働きが低下しているので、身体が冷えやすいので、布団をかけて陽気を補います。昼間は太陽の力によって気温があがりますが、その働きは人にも影響しているので、昼間は陽気が補われ、身体も活動状態になるので、陽気が活発になり、身体が温かくなります。

 

 陽気が不足した陽虚の状態になってしまうと、身体の中には冷えが生じてしまい、冷えは下に向っていく性質があるので、小便の量が増えたり、下痢をしたりしてしまいます。寒い時に小便の量や回数が増えたり、下痢をしたりしてしまうのは、陽気が一時的に弱くなってしまったためになります。

 

 陽虚だと身体を温める力が弱くなってしまっているので、人よりも寒く感じ、衣服を重ねたり、暖房をつけたりしたくなります。陽気の不足が少しであれば、人よりも厚着をする程度ですみますが、陽気の不足が強い状態になってしまっていると、どんなに温めてもすぐに寒いと感じてしまうことになります。

 

 陽気が不足すると寒い状態になっているので、顔色が悪くなりやすいですし、元気よく動く気力もなくなってしまうので、活動が低下してしまいやすいです。

 

3.陽気を生じる原因

 陽虚は身体を温める働きが低下した状態として考えていきます。身体を温める働きである陽気は気の働きによって成り立っているので、気が不足している気虚の人は陽虚になっていきやすいと考えていきます。体調が普通でも寒いところにいれば、身体を温める働きである陽気を大量に利用してしまっているので、寒い状態が長いと陽気の不足に繋がってしまうことがあります。

 

 気が不足してしまう状態としては、栄養を取っていない場合を考えていくこともできますし、仕事などを長くすることで身体のエネルギーである気を消耗してしまった場合もあります。

 

 身体を動かさない状態だと、気を全身に循環させることがなくなってしまうので、休み過ぎてしまうのも気の循環不全、食欲の低下から気虚、陽虚を生じてしまうことになります。

 

 陽虚の状態だと、身体を温める力が少なくなってしまっている状態なので、手足の冷えが強く生じたり、腹部や腰部に強い冷えを生じたりしてしまいます。身体を温める働きの低下なので、軽い状態だったら温めたら楽になりますが、酷くなってしまうと、温めても温めても、深部から寒さが襲ってくることになるので、強い冷え症の状態になってしまいます。

 

 温める力が低下した状態は陽虚と言いますが、身体の力が弱くなって寒い状態になってしまっているので、虚寒の状態とも言われます。東洋医学では当たり前の用語なのですが、一般的ではないので、最初は理解しにくい単語の一つですね。寒いのではなく、熱い状態は陰虚や虚熱という表現もあるので、言葉を詳細に知りたければ、過去のブログを参考にしてみてください。

「虚熱と陰虚、虚寒と陽虚」

 

4.陽虚の対する鍼灸治療

 冷えは自律神経の問題として考えていくと、鍼灸治療は自律神経を介して身体の働きに変化を加えていくので、冷えは鍼灸ではよく総合する物で、治療をしている人も多い傾向があります。冷えに鍼灸が有名ではないのは「鍼灸」という単語は知っていても、「鍼灸を受けて知っている」という人が少ないからなのでしょうね。

 

 冷えに対しては鍼よりもお灸の方が温めるというイメージもあって理解しやすいと思いますが、冷えの場合は、下腹部や腰部、足関節の内側、外側、踵でアキレス腱がついているところの内側、外側は利用されやすいです。この場所にお灸をすると、経絡の働きも関係するので、その場所だけではなく温かさが広がり、持続することが多いです。冷えているところにお灸をするのもいいのですが、血流の流れにくいところと経穴は関係があるので、効果的なツボを利用していくことで症状の変化を狙っていきます。

 

 冷えが酷い場合は、治療院での施術だけではなく、自宅でもお灸をしてもらうために、お灸を渡したり、購入してもらったりすることが多いですね。専門的な道具だと大変なので、シール状になっている物が火傷をしにくくていいですね。

 

 鍼も同様の場所を利用していくことが多いのですが、身体の状態によっては手や背中、頭などを利用することで冷えの状態が変化していくことがあります。ただ、これは身体の状態を把握して行っていかなければいけないので、信頼できる鍼灸師の人に行ってもらうしかないですね。

 

 自分で出来る方法だと、お灸で少し冷えが良さそうならば、その場所に持続的な刺激を加えていくために、シール状の鍼(パイオネックス、円皮鍼)を貼付していくのがいいのですが、鍼が出ていると痛みも感じてしまうので、突起だけになった物がいいですね。他にも類似品が多くありますが、シールの性能がいいので、かぶれやすいかたでも利用しやすいです。

 

 

5.まとめ

 私は、暑さは比較的強いのですが、寒さには弱く、手足が冷えやすい傾向にあったのですが、いつの間にか冷えを感じる頻度が低下し、寒さに弱いぐらいで済んでいます。特別なことはしていないので、日々、行っている鍼灸のおかげなのかなと思っています。

 

 自分なので、しっかりとした治療というよりは、適当に練習などを兼ねてやっていたので、どれぐらいでよくなったかという印象はないのですが、患者さんにやっている感触だと、継続していくと、気付けば昨年よりはいいというのを繰り返して、冷えの状態が改善していっていることが多いなと思います。

 

 長期に渡って通っている人が多いので、この状態ですが、定期的なカラダのメンテナンスとして、月2~4回通うのでもいいのかなと思っています。4回だと週に1回の程度になるので、身体の変化も出てきやすいという感触があります。もちろん、酷い場合だと、週に2回から初めて、段々頻度を下げていくこともあります。

 

 何をするのも身体が資本ですし、身体の問題で生活や仕事に不都合が生じるのであれば、損失も大きくなってしまいますね。もちろん、日々の生活でも気を付けていけば、体調も変化していきやすいので、鍼灸と生活の改善を合わせていくのがいいと思いますよ。

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