鍼灸師は、鍼と灸を扱える仕事であり、美容やスポーツ、医療、介護と様々な分野で活躍できる資格ですが、大手の会社がある訳ではないので、独立していくのを視野に考えていく資格とも言えます。ということは、鍼灸という資格を取得したら、将来は独立しかないのでしょうか。
いきなり鍼灸師の未来という話を書いたのは、周囲を見渡して見ても、就職して数年したら開業、将来的には独立してという話が鍼灸師は多いなと思っていたのですが、何となく違う形が出てくるのではないのかなと思ったからです。
業界ニュースなどを見ていると、制度には変化がありますが、全体としては特に変わっていくなというのは感じないのですが、ネットを日々見ていると、鍼灸師も変わりつつあるのかなと思い始めました。今までは、鍼灸師同士が集まって治療や運営の情報交換していたのが、いつしか連携して何かをしようという動きになってきていて、学校や治療法を超えた動きになってきているのが鍼灸の若手の動きなのかなと思っています。
以前からある動きではあるのですが、その動き方が大きく、スピードアップをしてきているように感じています。理由と聞かれても全くわかりません(笑)
鍼灸師同士が集まるのはいいことでもあるのですが、結局、鍼灸師同士だけが集まっていても鍼灸師以外が参加していくことがないので、そこをどうしていくのかが重要になってくるのですが、何となくですが、鍼灸師以外も混ざって動きが出てきそうな気がしています。
どこから始まるのか、何が起点になるのかは全くわかりませんし、いつがスタートなのかを説明することはできないので、ただの勘でしかないです。
今後の日本の状況を考えていくと、高齢化社会で介護、医療の分野は伸びていくのは確かなので、その分野に関わることができる鍼灸師の将来は伸びるとしか言えないのですが、受療率という視点から言えば、伸びることがないです。
ただ、受療率が少しでもあがるだけでも、市場規模はとてつもなく大きくなるので、ちょっとした動きが大きな変化を生じる可能性があります。
この下地になったのは学校が増えて、鍼灸学校に入る、鍼灸学校を知る人が増えたので、言葉がより広く認知されやすい状況だったのと、美容鍼灸という分野が切り口となり、より普及したのでしょうね。
美容鍼灸は普及しても、それ以外の鍼灸はまだまだ知られている訳ではないので、美容鍼灸のようなわかりやすい鍼灸が出てくると、分野を切り広げられるのだろうなと思います。個人的には、医療の分野の中で一気に認知度があって欲しいところですね。周りが真似をしたいというところが出てくると、真似をしていくことで、一気に同じような物が拡大してくので、認知度はより高まりやすいです。
そういった点では、訪問鍼灸の分野も広がりには大きく貢献しているでしょうが、訪問マッサージがセットになっていることが多いので、広がりとしてはマッサージになってしまっているのではないかなと思うので、もう一息、何かが欲しいですね。
大きな広がりが出てくると、鍼灸師の将来は就職(修行?)して開業という道以外も多く出てくるのではないでしょうか。
個人的には鍼灸師は、雇用の形が、メンバーシップ型よりはジョブ型の方がいいのではないかと思っています。メンバーシップ型は日本企業独自の採用形式で、人を採用したら社内の足りないところに割り振り、そこでしばらく業務をさせたら違う業務につかせていき、社内で価値を高めていく方法と言えます。ジョブ型雇用は、欧米で採用されている形ですが、会社に勤めるというよりは、職や仕事に就く形です。
雇用の安定という点では、ジョブ型は仕事がなくなれば切られてしまいますが、メンバーシップ型は他の仕事への割り振りというやり方になるので、メンバーシップ型の方がよくなります。
鍼灸師を雇っている企業、治療院は大きなところが少ないので、数年勤めたら、メンバーシップ型だったとしても次の仕事がないことが多いので、結局のところ、就職と言っても、ジョブ型になるので、どうせなら全体としてジョブ型で定着してしまえば、大きく変わっていく力にもなるのかなと思います。
ジョブ型であれば、人の流動性が生み出されていくので、伸びていく鍼灸の分野に人が多く流れていくことができるので、成長性が高く、普及しやすい分野が一気にブレークアウトすれば、業界全体として伸びていくのではないかなという考えです。
鍼灸という仕事は、理論もありますが、最終的には使っていく人の個性も関係していくので、自分なりのやり方を見つけながら、鍼灸を主としたフリーランスとして活動できるような幅が増えてくると、業界全体として伸びるのではないでしょうか。
未来を考えていくと、面白いことが多いだろうなという思いもあるのですが、難しさも多いなと思ってしまいますね。例えば、鍼灸学校を卒業して、一人前として仕事をするのは経験不足が生じてしまいがちですが、その先の教育は、現代医学を主体でしたいのか、東洋医学を主体でしたいのかでも分かれてしまいますし、刺さない鍼がいいのか、刺す鍼がいいのか、浅い方がいいのか、深い方がいいのかという道具の使い方でも分かれてしまうので、鍼灸の基本の形がない現状だとジョブ型雇用の実現は難しいかなと思ってしまいます。
業界としてまとめていくのは難しいでしょうから、教科書を勝手に統一してしまって、鍼灸とはこういう形であるという定義してしまうのは、乱暴ですがありなのかなと思いますね。例えば、中医学はそれまであったバラバラの物を中医学という形でまとめ統一していますよね。
統一したことで失ったものもあるでしょうが、一つの知識と治療でまとまっているので理論の統一性には優れているので、日本の教科書だけではなく、世界の資格のベースとしても入れやすいので広く普及していますよね。
もちろん、中医学の考え、治療はいいと思うのですが、それが最上かというのは議論が必要だと思いますし、考えていかなければいけないですが、普及という点ではダントツな成果を出したのではないでしょうか。
ということで、教科書を勝手に統一して鍼灸治療のスタンダードというのを作ってしまえば、10年後は、教科書が全体の共通用語になりえるので、教育から変えるというのは大きな力になりますね。もし、そうなったら自分も学びなおさないといけないか、ひっそりとやっていくのかも考えないといけないですね。個人としては、変化はストレスですが、全体、将来としては、実行してもいいのかなという思いがあります。
ただ、私が受けた国家試験から現在の国家試験を眺めてみると、やっぱり西洋医学が中心ですよね。西洋医学はもちろん大切なのですが、代替医学という立場も取れる物でもあるので東洋医学が主体になって欲しいですが、治療と考えを統一しようとすると、より西洋医学化に進むのでしょうかね。
西洋医学化が進むぐらいだったら、統一せずにガラパゴスで東洋の神秘のままでいいかなという気がしますが、分かりにくさは普及の阻害要因となりえるので、若い力、動きに期待していきたいところでもありますね。
社会の変化は年を取った人が作るのではなく、若い人が動き、それば普及して文化になって変化という形で残るので、今後もいろいろな方の活動や動きには注目していきたいと思っています。
あくまで個人の独断と偏見なので、たくさんの異論もあるでしょうね。大切なのは、それぞれが考え、動ける範囲で動くのが全体として大きな流れにもなるので、日々の臨床に真摯に向き合い、それぞれが違う分野で力を発揮していくのがいいのかなと思います。