東洋医学は、生活の仕方、生命という話も出てくるし、目に見えない気を扱って、身体の説明などをしていくので、一般の人にはわかりにくいでしょうし、直接的に見えず、触れられない物を信じていくという点では宗教のようだと感じる人も多いのではないでしょうか。

１．宗教とは

　宗教を一言で定義するのは難しいのですが、やや乱暴に簡潔に表現してしまうと、「何かを強く信じる」ことではないでしょうか。この「何か」が「神秘的」「依存」「真理」などとなり、「何か」を「神」として表現していくのではないでしょうか。

　一般的な宗教だと、「神などを信じる団体」や「組織」と言え、集団であり、教科書となるような教義を持ち、儀礼、施設を伴うことが多いのではないでしょうか。

　代表的な宗教は、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教になりますが、様々な民族・地域によって信仰されているのが、キリスト教、イスラム教、仏教であり、日本だと中心は仏教ということになります。

２．東洋医学とは

　東洋医学は、東洋という伝統と医学の二つが合わさっているものになり、昔の人達が生き方、生命について考えていきついた捉え方をもとにして、医学を行っていくのを東洋医学といいます。

　東洋医学は、広い意味で言えば、アジア全域の医学になり、中国伝統医学だけではなく、インドのアーユルヴェーダなども含みます。現在の日本では東洋医学というと、中国伝統医学の鍼灸・漢方・按摩（あんま）になります。

　東洋医学という呼び方は比較的新しいもので、昔は、漢方（漢、現在では中国から来たもの）と呼ばれていました。何故、変わっていったのかは分かりませんが、現在は漢方というと、漢方薬のことを指していますね。

　東洋医学は、科学技術を用いている現代医学とは違い、生きている人、病気の人の観察から、どういった薬や治療を加えるとよくなるのかをまとめた観察から生じた医学になります。科学技術が発達する前に出来ているので、伝統医学と呼ばれ、世界各地にも伝統医学があります。

　伝統医学は、その成立した場所の人や生命に対する考え方の影響を強く受けているので、中国伝統医学は中国哲学思想の影響を強く受けています。世界各地の伝統医学は、それぞれの国の生命とはという哲学思想の影響を強く受けているので、似ている部分が出てくることがあっても違う物になります。

３．宗教と医学の違い

　宗教は人の生死と関わることであり、どういった生き方をするかについて考えていくと言え、医学は身体の仕組みから病気と治療を考えていくと言えるので、全くの別物になります。

　宗教では、信じる神がいて、医学では信じる物がないのですが、精神的な部分も重要になってくるので、互いに見えない物を信じるという部分があるのは共通していますが、現代医学は、数値や画像など見える物が中心になるので、見えない部分については意識しにくいのではないのでしょうか。

　東洋医学は、気血津液という現代医学では見えない物を規定し、さらに異常が生じてしまった場合についての話も出てくるので、分からない物に分からない物を重ね、「病気の原因は気である」という定義が出来てしまうので、一般の人からしてみれば、怪しいと感じてしまうでしょうし、宗教のようだと感じてしまう人もいるでしょうね。

　東洋医学に限らず、伝統医学は、科学技術の発達する以前に成立している医学になるので、現代医学の視点が普及している現代日本においては、目に見えない物について話しをする伝統医学が怪しく感じてしまい、「分からない」というカテゴリーに分類されてしまいやすい宗教と同じようだということになるのでしょうね。

　伝統医学は自然や生命に対する考え方も大切で、構成要素に含まれていくことも多いので、自然との関連性という話しも怪しいと感じてしまうところでしょうか。

４．まとめ

　東洋医学は宗教のようだという話しをされた鍼灸師は比較的多いのではないのでしょうか。私自身も、話しをすると、何か怪しい、宗教みたいと表現されることがあり、論理的に説明をすると、そういう考え方をするのかと納得してもらえることがあります。

　ただ、そういう方に、鍼灸を受けてみる？という質問を投げかけると「いやー」という中途半端な答えが返ってくることが多いですよね。やっぱり鍼灸は資格としての歴史は長いですが、まだまだ一般的ではない状態になっているのではないでしょうか。

　美容鍼灸が普及してきたことで、鍼灸に対しては知っている人が増えてきていますが、まだまだ一般化している状態とは言えないですよね。この現状にくるまでもかなりの年月が必要になっているので、普及していくという点では、一人一人の努力という点が線として繋がり、面として拡大していかないといけない状況なのだろうなと思います。