澤田流太極療法は澤田健先生によって作られた治療法だとされていて、多くの書籍を出版されている代田文誌先生や中山忠直先生に紹介され有名になり、弟子たちにより澤田流太極療法として伝承されています。
・澤田流とは
澤田健先生は臨床の名人として語られている人でもあり、澤田流は全身治療においても特徴があるのですが、澤田流で紹介されている特効穴も広く普及しています。現在だとツボの話しとして澤田流の話しを聞くことが多いですね。
実際に私が学校で習ったときも、ものもらいに二間にお灸をするといいと習いました。多くの方と話しても、ものもらいは二間と話す方が多いので、有名な特効穴になっていると思います。
澤田流の書籍としては、『鍼灸治療基礎学』と『鍼灸真髄』が有名で、鍼灸の勉強をし始めるときに紹介されることが多いと思います。現在の流派を問わずに勧められることもあり、鍼灸治療に携わるのならば、一度は読んでおくといいと思います。私自身は、『鍼灸治療基礎学』の方が基礎、臨床と載っているので、お勧めです。『特殊鍼灸テキスト』にも澤田流が載っているのですが、その他にも多くの治療法をコンパクトにまとめているので、手元に1冊は欲しい書籍ですね。
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澤田流の特徴としては、病気の本質を考えた時に、その人の持っている生命力を高めていくことが必須であり、基本治療として身体の生命力を強め、さらに必要な経穴に治療を行うという標本同治の治療体系になります。
太極というのは、もともとは『易経』の言葉で、物事の本質をあらわすもので、生命の本質の治療に重点を置くとも言えます。
生命の本質は原気であり、この原気を生成するのが腎、サポートをするのが脾、全身に輸送するのが三焦ということで、三原気論とも言われる。
本質は精や気であり、先天の精が生命力の大本だろうということで、腎が重要で、そのサポートを行う脾、原気を全身に輸送する三焦を使うというのが治療の基本になります。
腎を先天系、脾を後天系、三焦を原気の別使としてツボを決定しています。じゃあ、どこを使うかということになりますよね。基本穴というのがあるので、下記にまとめます。
・先天系:気海、京門、腎兪、上髎、太渓
・後天系:中脘または章門、脾兪、太白あるいは足三里
・別使系:気海(関元)、中脘、膻中、三焦、陽池(左)
※太渓は澤田流太渓で、本来の照海の位置に取穴
※京門は澤田流京門で、本来の志室の位置に取穴
澤田流ではツボの位置が少し変わるのが特徴としてあり、ものもらいの二間も通常の二間ではなく、示指橈側PIP関節部の横紋の端に取穴をします。全身治療の考えだけではなく、ツボの位置にも特徴があるのが澤田流にあるので、独特でもあり、有名にもなったのかもしれないですね。
他にも原気の生成ということで、生命力の強化ということで臍傍八穴ということで、気海、大巨、天枢、滑肉門、水分を使うといいとも言われています。
特効穴だと、位置が変わるものとしては、便秘の神門があり、場所は心経と小腸経の間になるので、尺側手根屈筋のさらに外側になり、手関節内側部になるのも有名ですね。他にもあるのですが、結局、沢山あると覚えきれなくて、自分がよくみる疾患と関係するのしか覚え続けられないですけどね。
・流派を使う
澤田流ができた背景には、澤田先生の知識と経験が積み重ねら得たものなので、そのまま使えば、先人の経験と知識を引き継ぐことができるので真似から入るのもいいと思います。
昔なら辞書で調べたり知っている人を探して話を聞いたりしないと分からなかったことは沢山あったと思います。辞書を持っていない、買えないという状況であれば、分からないままになってしまうでしょうし、知っている人に会えないままなら同じように分からないままになってしまったと思います。
ところが、現在はスマホやパソコンを使って、簡単に情報を知ることが出来ます。この情報も先人が機械類を発達させ、記録してくれたことによって知ることができるので、先人の恩恵に上に現在があると言えますよね。
これが先人の行ったことを利用するということでもあり、澤田流を使うということも先人の恩恵を受けるということでは同じです。ただ、それだけではなく、自分自身の経験を重ねていくことによって、澤田流は形を変えて残っていき、変化をしていきます。
これは古典文献も同じで、過去に調べた内容をその後の時代で検証を重ね、情報を更新していき、また後世でまとめられていきます。
流派を正統で守るということでは、変化をするとダメにもなりますが、歴史から見たら、変化をしていくことが当然とも言えますね。
It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change.
生き残る種とは、最も強いものではないし、最も知的なものでもない。変化に適応できるものである。
ダーウィン
ダーウィンの有名な言葉ですね。変化するのは当然なのですが、変化して無くなってしまうのは寂しいのもありますが、ダメななこともあります。こういったものは成功や失敗などを積み重ねたものであり、治療の考えもあるので、それを失ってしまうと本質を見逃してしまうことがあります。
例えば、自然災害があったところには「物事を忘れないために残す」記念碑が設置されていることがありますが、時間が経つとその記念碑のことを忘れたりして、また被害が発生をすることがあります。
思いを引継ぎ、伝えるということは大切なので、書籍を手元に置くということは自分に対しての記念碑を作るとも言えます。ということで、私の家には記念碑が積み重ねられていっています。いわゆる積読(つんどく)ですね。