鼻血は衄血(じくけつ)とも言われ、東洋医学の中でも度々出てくる表現です。どんなときに鼻血が出るかと言えば、調子が悪いとき、のぼせた時、知恵熱、興奮したときになるのでしょうが、どのような状態なのでしょうか。
1.固摂と統血(とうけつ)
東洋医学で考えたときに、まずは出血することがおかしいので、異常な状態だと考えます。その際に、基本に戻ると、気の働きがどうなのかを考えることが必要になります。気の作用には推動・温煦・防御・固摂・気化作用という働きがありましたが、出血しないようにしているのは、固摂作用になります。
この固摂作用が低下すると、体内にあるものを抑えることが出来なくなり、出血するので、体調が低下した場合は、固摂作用の低下が中心ではないかと考えることができます。さらに固摂作用の低下である出血は脾の働きと大きく関係しやすく、脾は統血と呼ばれる働きで出血をさせないようにしています。
疲れてくる鼻血が出た、体調が悪くて鼻血が出たというのは、この気の固摂作用の低下、脾の統血作用の低下が中心ではないかと考えることができます。これらの働きが低下すると、鼻血以外にも出血の症状として血尿、血便もあります。疲労が酷いと血尿が出るというのは固摂作用の低下によります。
内出血しやすい人というのは、固摂作用が低下しているので、脾の統血作用を強めていくのが治療方針になります。女性だと、血を留めておくことができないので、月経周期が早くなる経早(けいそう)や不正性器出血の崩漏(ほうろう)が起こることがあります。
2.血熱
出血するのは、固摂作用の低下だけではなく、血熱になってしまうと生じますが、血熱とはどういった状態なのでしょうか。
これは自然で観察したものを身体に当てはめたもので、水分に熱を加えるところを想像してもらうと、水が入った鍋をコンロに載せ、火をつけた場合を想像します。
だんだんと温まってくると、水の動きが活発になり、ブクブクと沸騰した状態になると、水分は徐々に減っていきますが、そのままにしておくと吹きこぼれてしまいます。この状態が身体に行ったのを血熱として考えていきます。
身体の中に熱が加わると、体内の水分である血に熱が加わり、血の流れが早くなってしまって、吹きこぼれた状態が血熱証と言います。暑くてのぼせたことにより、鼻血が出たのであれば、この血熱証になります。
血熱を引き起こすためには、熱の存在が必要になるのですが、熱の発生にはいくつかのパターンがあります。さきほど説明したように暑くてのぼせたことによる鼻血は、気候など外の環境の熱によって生じます。
他にどうやって熱が発生するのかを考えていくと、気・血・津液の流れが悪くなった場合と身体を冷やす力を失った場合があります。
生命は生きている・動いているという前提になるのが東洋医学なのですが、動きが止まるとどうなるかを考えたときに、物が腐っていく過程を考える必要があります。食べ物が腐るのには、温度・湿度が大切になるので、物の動きが止まる(生命現象が落ちるとも言えます)と腐っていくので熱が生じると考えるのが、気・血・津液から生じる血熱の状態になります。
空冷・水冷とありますがバイクや車も走っている間は、風の影響もあり、熱がこもるのは少ないですが、止まったら熱が強く感じませんかね。例えば、空冷のバイクがイメージとしては近いです。
バイクはエンジンをかけると熱くなり、動けばさらに熱くなり、走っていると風によって冷やされて温度は落ち着きますが、止まると熱がどんどんと強くなり、オーバーヒートをしてしまいます。
人間の身体も同じように動いている間は熱がこもることはないのですが、動きが止ってしまうと熱を持つと考え、その熱が血に影響をしてしまうと、血熱証になります。これが熱くもないけど、のぼせた時に該当しますね。
興奮も身体が熱を持つ状態と考えることができるので、興奮が続けば、熱が強くなり、発散できなければ、血熱証になってしまうので、興奮して鼻血はこの状態になります。
知恵熱も動きを止めて、考えるという静止した状態が続くので、気血津液の動きが停滞しやすく、熱が生じてしまうことがあるので、知恵熱はこの状態になります。
こういった状態のときは、発散するのが大切になるので、興奮が強ければ、落ち着けって言いませんか?知恵熱が生じたときも、考えるのをやめるのが大切ということで、静止した状態をやめることが大切になります。
血の働きは冷やすという機能もあるので、血が不足した場合は冷やす力が不足をして、熱を生じてしまうことがあります。そのような状態になると、熱が血に影響を与えて血熱証を発生させてしまいます。身体を冷やす働きは血だけではなく、津液にもあるので、津液の問題でも生じることがあります。
血が不足するということは調子が悪いときでもあるので、身体が悪そうで鼻血が出るのであれば、固摂作用の低下か血や津液の不足などによるものかを考えることができます。