気の働きには昇降出入という運動があると言われていますが、人が生きている状態を考えたときに、気の種類は作用ではなく、運動様式で考えることができます。
気の運動は気機と表現されることがあり、昇降出入は運動の方向を現すものになります。運動方向と言われると何だろうと思ってしまいますが、身体は一つのプールと考えてみると、気は人の中で動いているものなので、どの方向に動くかということになります。
昇降出入は2つずつに分けることが出来るので、気の運動に陰陽論を加えて考えているものになります。
- 陽:昇、出
- 陰:降、入
身体は上下に長い線になっているので、気は中焦で生み出されたのちに、上下に動かないと、身体に栄養がいかなくなってしまいます。そこで、上に行く力のことを昇とし、下に行く力のことを降としています。
昇ということは頂上までいけば降りるしかなくなるので、昇の働きは降を助けると考えることができます。例えば、お風呂でお湯をかき混ぜるときに、下から上に手を挙げてくれば、水も同じように上にいきますが、その流れは下にいきますよね。
お風呂だと上に熱い湯があるので、入った状態で上に水を動かせば、下に降りるのを体感できるので、これが昇降の説明になります。
出入は気が内側から発するという考えから体表に向かっていく力と考えることができ、入は栄養を取り込むと考えるとイメージがつかみやすいのではないかと思います。
分かりやすいものだと、呼吸がありますが、呼は外へ吐き出す力なので出になり、吸は内へ吸い込む力なので入になります。
こういった働きは生命現象を昇降出入だけで考えることが出来るので、先ほどの例のように食事や呼吸につなげていくことができます。
ただそれだけでは治療に結びつきづらいので、通常は臓腑の働きと昇降出入をセットにすることが多いです。
例えば、肝の働きである蔵血は血の調節もありますが、血を留めておく力が強いので、入と考えることができます。疏泄は身体の気機の調節という働きがあるので、出の力と関係をしやすいですし、昇りやすい性質があるとされているので、昇も当てはまります。
各臓腑の働きと昇降出入は関係をしやすいので、臓腑の働きが動きとしては、上下左右にどのように働きかけるかを考えていくと、昇降出入を当てはめることができます。臓腑の働きだけではなく、五行の性質からも考えていくことができるので、是非、ご自身で考えてみてもらいたいと思います。