陽蹻脈と陰蹻脈

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 奇経八脈についての概略はこれで最後になりますが、残っているのは陽蹻脈と陰蹻脈の2つの蹻脈になります。蹻という漢字には「かかと」と言う意味があるので、蹻脈はかかとに関係をします。

 陽蹻脈は足太陽の別脈と呼ばれ、陰蹻脈は足少陰の別脈と呼ばれます。足太陽は膀胱、足少陰は腎になるので、膀胱と腎の経絡と関係が深いとされています。膀胱経と腎経は足指から踵の内外を通過してくるので、蹻脈との関係が深いと言えます。

 

 奇経八脈では表裏という概念がないと言われているのですが、維脈と蹻脈は陰陽に分けて考え、それぞれは内外に関係をしています。陽維脈は身体の外、陰維脈は身体の内、陽蹻脈は踵の外、陰蹻脈は踵の内に関係をするので、表裏として捉えていくことができます。

 

 陽蹻脈の八脈交会穴は膀胱経の申脈になるので、陽蹻脈と膀胱経の関係が深いと言えます。陰蹻脈の八脈交会穴は腎経の照海になるので、陰蹻脈と腎経の関係も深いと言えます。

 

 膀胱・腎の経脈上の治療を行おうと考えた場合に、膀胱・腎経から選ぶのが通常行われる方法ですが、蹻脈とも関係するので、膀胱・腎経の治療で申脈・照海を用いることもできます。

 

 古典や学校の学習では「陽が緩んで陰がひきつる、陰が緩んで陽がひきつる」と言われますが、よくわかりにくかった思い出があります。現在は、陰陽についての理解もできているので、悩むことはなくなりましたが、陽蹻脈の病は陽側がひきつる、陰蹻脈の病は陰側がひきつるという単純なものだと理解しています。

 

 陰陽は身体の部位に分けて考えることが出来るので、内・前が陰、外・後が陽なので、内側や前側がひきつる場合は陰蹻脈の病として考えて、外側や後側がひきつる場合は陽蹻脈の病として考えます。

 

 陰陽は引き離せるものではないので、陰がひきつるということは陽側が緩むことが必要ですし、陽がひきつるということは陰側が緩むことが必要になるので、考えてみれば当たり前なのですが、最初に頭に入るまでは時間がかかるところにもなります。

 

 前屈がしにくい場合は、後側のひきつりがあると考えられるので、陽と関係する陽蹻脈の病になるので、申脈で治療をすることができます。逆に後屈制限がある場合は前側にひきつりがあると考えられるので、陰と関係する陰蹻脈の病になるので、照海で治療をすることができます。

 

 左右のバランスで考えるときに左側屈に制限があるようであれば、右は外、左は内がひきつっている可能性があるので、右申脈、左照海で治療を行うことができます。

 

 右側屈制限があるときは、この逆になるので、左申脈、左照海で治療を行うことができます。応用範囲はその人の症状によって変わるので動作を見たり、症状の増悪をきいたりすることによって細かく使い分けることもできます。

 

 奇経八脈の組み合わせによる治療や郄穴の話は書いていないので、またの機会にまとめて書いていきたいと思います。

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