身体の芯から熱い―陰虚潮熱・骨蒸発熱

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 身体に熱がこもったような感じがして、熱く感じて眠れないのは辛いですよね。こういった場合は、東洋医学では陰虚(いんきょ)として考えます。この陰虚の原因と治療についてまとめます。

 

夜に身体が火照って眠れないと、睡眠不足が続き集中できなくなってしまうので、早く改善したいという気持ちが強くなり、焦りも生じてしまうことがあるでしょうが、日々の疲労から生じたものであるので、養生をしっかりと行って、徐々に軽減させていくことが大切です。焦りや不安は症状を一層悪化させることがあるので、「疲れているようだし、休まないといけないのだな」と考えるようにするのが大切ですね。

 

 あまりにも熱い場合は、冷やした方がすっきりして眠れるという人も多いので、足底が強いほてりの方の場合は、足を冷やして寝るという人もいるのですが、極度の疲労が原因のことが多いので、身体の芯から温まるまで入浴をして、十分リラックスをして休むようにすると症状が弱くなっていくことが多いです。

 

1.東洋医学で考える身体のほてり

 東洋医学では、身体は自然の影響を受けると考えていて、夜は陰が強く、昼は陽が強いのが正常です。この場合の陰陽は、陰が冷やす力、夜が温める力ということです。夜の方が涼しくて、昼間は気温があがっているので、人の身体も夜は冷えて、昼間は熱くなります。

 

 夜に身体が冷えてしまうのは、気の循環によって発生します。気には種類があり、身体を温め・守る働きの衛気(えき)は、昼間は活発に活動しているので、身体の外側を巡り、環境から守る力となり、身体を温めます。夜は、活動が低下して就寝している状態なので、衛気は身体の中をめぐり、身体の内側を温め、内臓を守る働きがあります。

 

 夜は身体が冷えて、衛気は内側をめぐらないといけないですが、身体を冷やす働きである陰が不足している陰虚の状態だと、夜に十分に冷やすことができないので、身体がほてりやすくなってしまいます。

 

 陰虚では、身体がほてる傾向があるのですが、特に生じやすい場所は、手足と胸になり、夜に手足がほてって眠れないという症状が出ることが多いですし、寝汗をかくこともおおいです。東洋医学では手足のほてりは五心煩熱(ごしんはんねつ)、寝汗は盗汗(とうかん)と言って、陰虚の代表的な症状になります。

 

 寝汗は夜に陰が不足していることによって、身体を夜に冷やすことができないために、寝ているときに身体が熱くなり、寝ている内に、汗を奪われてしまうので、寝汗を盗汗と言います。普段から寝汗をかきやすい人、眠るときに手足を出さないと落ち着かない人は陰虚の傾向があるので、注意しておくことが大切です。

 

 身体に熱がこもっていて芯から熱い感じがあまりにも強い場合は、骨蒸発熱(こつじょうはつねつ)と言われることがあり、陰虚が進行した状態になります。骨蒸発熱が生じている人は、骨蒸発熱が生じる以前に、五心煩熱・盗汗が出ていることが多いです。

 

 骨蒸発熱の発生機序は、身体の中心は陰であり、陰が強くないといけないのですが、陰気が不足をしていくとだんだんと、身体の陰気が不足をしていってしまい、身体の深部の陰気が不足をしてしまいます。そうなると、身体の深部を冷やしていた陰気も不足をしていってしまうので、陽気が強くなり、深部から熱くなってしまうことになります。

 

 陰虚による身体の熱さや発熱は、午後や夜間に生じやすい傾向があるので、寝ようとすると身体がほてるという状態が生じやすいです。

 

 手足のほてりは、手足と体幹を比較して考えると、手足は体幹に比べるとよく動くところなので、手足は陽と関係しやすく、体幹は手足より動きが少ないので陰と関係しやすいです。陰が不足すると、手足の陰も体幹に集められてしまうために、手足は陽だけになってしまうために発生します。

 

2.陰虚を生じる原因

 陰虚を生じる原因は、様々な物があるのですが、寝不足、肉体疲労、精神疲労、加齢があります。寝不足は身体を休めることが出来ないことで、身体に必要な気を充実することができないために、気が不足しやすいです。

 

 陰だけではなく、陽の不足も生じることがあるのですが、寝不足が続いていくと、身体が乾燥しているような状態に見えるために、潤いでもある陰の不足が生じやすいと考えています。

 

 睡眠時間のバランスも崩れていると、十分に身体を回復することが出来ないので、陰虚を生じやすくなります。肉体的な疲労も極度になってくると、身体の力がどんどんと低下してしまうために、気の不足が発生してしまいます。

 

 精神は東洋医学では陰の働きが重要だと考えていて、精神的な活動は陰を消耗しやすいために、陰虚となりやすいです。加齢は年とともに気が不足していくのですが、身体を潤す陰の働きと関係しやすいです。現代医学でも、生まれたては身体の水分が多く、年により低下していくので、この状態を東洋医学では陰の低下として考えていきます。

 

 更年期障害で夜にほてって眠れないというのは、加齢によって陰が不足してしまい、陰虚の状態となり、陰虚の症状が発生していると考えていきます。

 

 身体の疲労が強く関係していることも多いので、ほてりが生じている場合は、身体の疲労がたまっているのだと考えておくことが大切ですね。

 

3.陰虚に対する治療

 陰虚を改善させるためには、陰陽の根本でもある腎の働きを改善すると変化が出てくることもあるので、太渓(たいけい)や復溜(ふくりゅう)に対して円皮鍼(えんぴしん)を添付しておくと、持続的な刺激にもなるので、治療後に円皮鍼を使っていくのもお勧めですね。自宅で利用するのであれば、鍼がついていないタイプの円皮鍼も紹介しておくといいでしょうね。暑くて落ち着かないような状態だったら手首の神門(しんもん)も足すといいと思いますよ。

 

4.まとめ

 夜に身体がほてっていて眠れない、夜になると手足がほてるのは、治療をしているときいはよく聞く話しなので、鍼灸師や漢方を専門的に扱っている医師・薬剤師に相談してみるのもいいと思いますよ。

 

 治療を継続していくと、段々と改善していくことが多いのですが、体質改善とも言えるので、治療期間は数か月という期間は必要だと思います。

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