多くの物事は知識や経験が入ってくることによって上達していくのを感じますが、技術職となると、技術の状態を感じるのは成長を感じることであり、上達を感じなければ成長をしていないのでしょうか?
鍼灸では診察するというのも知識・経験を使って行っていくので、技術と言うことができますし、触る・鍼灸を行うというのは手先を動かすもので完全な技術として考えることが出来ます。会話術と言われるように知識を使った話も経験を積んでいくことによって上手くなっていくものなので、患者さんへの説明も技術と言えます。
技術を身に付けるのには、S字状態のカーブでの発達をするというのが一般的なので、勉強や練習をしていても、技術の上達を全く感じないことも多いと思います。同じことを何度も繰り返していくことによって、その違いに気づき、分かるようになっていくので、上達をしていくことになります。
自転車は乗り始めるまでは苦労をするものですが、乗れるようになってしまうと乗れない真似をするのは非常に難しいように、S字状で伸びた後では、伸びる前のことが分からなくなってしまいます。箸やスプーンだって、初めて使うときには、指の置き方も分からないし、上手く扱えなかったはずですが、使えるようになると、使えない状態を真似するのが困難になります。
鍼灸の技術も同様で、一度出来るようになってしまうと、出来ないような真似をするのが難しくなります。この成長を感じるのは数分で感じるものではなく、数日、時には数か月や数年かかって上達することもあるので、自分の上達を知るのが非常に難しいと言えます。
普段から、100%集中して全ての物事を行っていればいいのでしょうが、そんな生活は人間には不可能です。もし出来る人がいたとしても、普通は出来ないので、多くの人が少しずつの進歩をしていくのが普通だと思います。
技術の進歩を感じるためには、数日前と比較をするのではなく、昨年や数年前の自分と比べてみるのが一番分かりやすいです。私も、なかなか治療効果が出ない患者さんがいたのですが、それでも来院し続けてくれていたのですが、いつしか症状が少し変わったという話しをされ、自分でも気づかないうちに、昨年では取れなかった所見や症状を変化させられるようになっているのを感じました。
そこで、数年前に自分はどういった症状が苦手だったのかを考えてみて、治療で使っていた道具も考えてみると、以前と比べて技術が向上しているのに気づくことになりました。
技術の上達は伸びるときは一気に伸びるのですが、伸びないときには本当に少しずつの変化なので、気づくのが非常に難しいものになります。どんな人でも卒業してすぐには説明が出来ない、治療スムーズでない、刺入できなかったなどの経験を感じるはずですが、数年も経過すると、とりあえずかもしれませんが一通り何とか行っているのが分かると思います。
これは単純に慣れではないかと言いますが、慣れというのは不自然に行っていたものが自然に出来るようになったということで、技術を習得したということになります。
石の上にも3年と言う言葉があるように、何かを数年し続けてみると、初めのときの自分と必ず変わっているはずなので、それが技術の上達になります。
練習も技術の上達で必要なことなのですが、余程の緊張感や課題を持って行わないと、実際の治療に役立たなくなるので、練習を行うときには、スピードを速くする、手際をよくする、狙ったものに当てるというように目標を決めて行うことが大切なことになります。
職人は時間をかけて育成するというのが当たり前と考えられていますが、発想を転換すれば、技術だけに頼らなくても何かを成し遂げることが可能になります。
料理歴が少ししかなく、3か月の寿司修行を受けた人達がオープンしたお店がどうなると思いますか?
寿司職人になるには10年は必要だと言われますし、寿司を上手くにぎることができないはずだと思うのですが、その寿司屋は開店から11か月後にミシュランに掲載されています。
大阪府大阪市:寿司屋「鮨 千陽」
堀江さんがしっかりとやれば数か月で出来るというコメントをあげて、注目をされたので私も見ることになりましたが、凄いことですよね。
そう考えると技術の上達には数年かかるというのも一つですが、数か月でも十分であり、その後は、数か月で十分になった上にさらに技術が乗ってくるので、どんどんと上達をすると言えますね。
技術だけではなく、アイデアも大切になるので、柔軟な姿勢を持ちながら日々を過ごすことが大切ではないかと思うようになりました。