東洋医学の治療は疏通経絡―不通則痛・不栄則痛

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 東洋医学の治療で特に中医学で言われる治療方針に疏通経絡という表現がありますが、これは東洋医学の真実を付いている表現だと思います。

 東洋医学で病を考えていく場合には、気血津液精陰陽・臓腑・経絡の問題を捉えていくことが非常に大切になっていきますが、治療方針は疏通経絡であると断言してしまうことが出来てしまいます。

 

 気血津液精陰陽は身体の中に必要なものであり、全身くまなく循環をしていることによって生命現象が成り立っているので、気血津液精陰陽に問題が生じてしまうと様々な症状が現れていきます。そう考えると、身体の中にあるものが体表や体内に病能として発生してしまうのは、気血津液精陰陽の状態を伝える経絡にあると考えることが出来るので、経絡の流れをよくするという意味の疏通経絡という言葉を用いれば、気血津液精陰陽に対して治療をしていると考えてしまうことが出来ます。

 

 臓腑は様々な機能があり、気血津液精陰陽にも大きく関係をしていて、臓腑の機能が低下をすると、気血津液精陰陽の問題を生じさせてしまうので、臓腑に関係する症状というのがあります。

 

 臓腑は必ず経絡と繋がっていて、全身を循環しているという考えなので、気血津液精陰陽・臓腑の異常は必ず経絡の問題として現れているので、経絡を疏通したら、臓腑の調整を行っていけると言えます。

 

 東洋医学の特徴は臓腑という概念だけではなく、体表と関係する経絡が臓腑と体表・内部を結び、経絡同士が相互につながっていくことで生命現象は循環しているという概念を形成しているので、病の中で特に痛みに関しては、この循環が悪くなってしまったことにより、気血津液精陰陽が巡れなくなり、不通則痛・不栄則痛になると言われています。

 

 極端なことを言ってしまえば、どんな病、どんな痛みがあったとしても治療方針の基本は疏通経絡になってしまいます。

 

 それでは東洋医学の治療方針は疏通経絡という一言で終わらせてしまえばいいのではないかとなりますが、東洋医学の基本は経絡によって気血津液精陰陽・臓腑の機能が働いているので、大正解と言えますね。

 

 もし患者さんの治療方針を疏通経絡と書いて、しばらく来院されなくて、次に来院したとしたら、治療方針が「疏通経絡」だけだったら、その当時に何を考えたか分かりますか?

 

 カルテの枚数が100枚になって、その中でたまにしか来ない人もいると思うので、疏通経絡だけでは大正解ですが、意味不明の単語になってしまいます。

 

 治療方針の根底の考え方として疏通経絡は東洋医学の特徴から考えれば正解になるのですが、使い物にならない言葉になってしまうので、現実的には疏通経絡という表現はあまり使わずに、気血津液精陰陽・臓腑の話をしないと分からなくなります。

 

 東洋医学は中国で産まれたものであり、さらに近代中国でまとめられたものが中医学になりますが、疏通経絡という真実を一言で言い表す単語を作るのは凄いことだなと思います。もちろん、経絡の調整、全身調整という表現を使うことも出来るのですが、気血津液精陰陽・臓腑の機能は流れのなかで発揮をしているので、流れを整えるという表現が入っているのがやはり卓見ではないかと思います。

 

 他の人に取って疏通経絡はそんなものかという印象の言葉なのかもしれませんが、考えれば考えるほど、真実を言い得て妙な言葉だと思います。

 

 鍼灸を現代医学的に用いて表現をする場合は、沈痛、血流改善、神経興奮などと表現をしていくことが出来ますが、こういった治療方針の用語では病能や治療目的はよくわかりますが、鍼灸や東洋医学って何かという答えがないので、どういうものなのかが分からないですね。

 

 現代医学的に治療効果を考えていく場合は、いろいろな効果があるので、やはり鍼灸は現代医学の中では物理療法の一種になるのだと思います。

 

 こんなにいろいろ書いていますが、最初に疏通経絡という言葉を聞いたときに、私は見事にスルーしました。だって、単純すぎて、それで?という気持ちになってしまったのが最初でしたからね。

 

 最近、ブログを書くことによってもう一度、書籍を読みなおしたり、考えたりしてみて実は奥が深いことを一言で表している単語なのだと気付きました。ということで、ブログを書いている直前に自分の中で理解をした内容になります。

 

 自分の中で腑に落ちるって、ふとしたときで、学んでいるときではないものですね。

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