東洋医学三大古典と東洋医学五大古典

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 東洋医学は中国古代から行われている治療法なので、中国医学・漢方医学と言われていますが、その元となった文献が存在しているので、三大古典や五大古典と言うことが出来ます。

 東洋医学の三大古典は、漢の時代(約紀元前206年~220年)に書かれたと考えられているもので、鍼灸だけではなく、漢方・あん摩も含めて基礎となる書籍です。

  • 『黄帝内経』(こうていだいけい)
  • 『神農本草経』(しんのうほんぞうきょう)
  • 『傷寒雑病論』(しょうかんざつびょうろん)

 

 書名からでは何が書かれているのか分からないですが、黄帝(こうてい)・神農(しんのう)は中国古代の神様(王様)の名前とされています。例えば、無名の人が書いた書籍だったら信用できないですが、有名な人が書いた書籍なら過ごそうと思うのは現代も同じなので、すごい本ですよと伝えたかったので、神様の名前をつけています。

 

 黄帝と名前が付く本は東洋医学の中では多いので、東洋医学では黄帝好きだと考えることができます。何故、そんなに黄帝と言う名前が多いかと言えば、東洋医学を作ったのは黄帝という考えがあるので、書名にも多く使われています。

 

 『黄帝内経』は『黄帝内経素問』と『黄帝内経霊枢』の2冊の書籍から成り立っているので、『素問』(そもん)・『霊枢』(れいすう)とだけで言われることがあります。『素問』は東洋医学の考え方などを書いてある書籍なので、教科書としては、東洋医学概論と考えることが出来るのですが、内容に混同があるので、読んでいても統一感を感じにくく、分かりにくいと思います。

 

 偉そうに書いていますが、私は翻訳書しか読んだことがないので、原文をしっかりと調べた訳ではありません。『素問』では陰陽・五行・臓腑に対する考えについてもいろいろと書かれているので、東洋医学でいろいろと説明される基礎がこの書籍にあるので、資格を取得した後に、一度、目を通してみると、試験で勉強したことも忘れなくていいと思います。私は、読みながら寝るのを繰り返したので、最後まで読むこと自体が非常に大変でした。

 

 『霊枢』では、鍼の使い方や経脈についての話しが多いですし、内容としてもまとまっている感じがするので、鍼灸の資格を取ってから古典でも読んでみたいという人には『霊枢』の方が分かりやすいことが多いのではないかと思います。

 

 私のイメージとしては、『素問』が概略、『霊枢』が実用書になるので、使いやすさは『霊枢』で、読み込む楽しさは『素問』なのかなと勝手に思っています。

 

 『神農本草経』は、薬に関しての書籍になるので、鍼灸師が見ようとすると漢方薬の名前が多いので、漢方の名前が分からないと何を言っているのか分かりにくいと思います。「本草」と名前が付く書籍は、草や実などにはどのような働きがあるかというのが書いてあるので薬膳を勉強してみたいというのであれば必要な書籍になると思います。

 

 『傷寒雑病論』は『傷寒論』と言われることが多いもので、『傷寒論』『金匱要略』の2冊に分けて考えることがあります。特徴的なのは、傷寒という寒邪によって身体が壊れていく過程を書いてあるのが『傷寒論』でそれ以外の病気に対する記載が『金匱要略』の中に書かれています。

 

 『傷寒論』の中では、寒邪が身体に侵入してくる過程についても書かれているので、病が経脈毎に進行するという考え方があり、六経弁証につながっていくものです。病気に対して、「こういう症状にはこれが効く」と書いてあるだけではなく、「よくならないとこうなるよ」ということも書いてあるので、考え方として参考になることが多いので、一度は読むといいのですが、内容は漢方中心になっています。

 

 『神農本草経』では、薬に対する知識になるのですが、『傷寒論』では使い方が出てくるので、東洋医学的な病気の考え方を学ぶのには非常に重要ですし、八綱弁証についても書かれています。

 

 八綱弁証については過去のブログの中に書いてあるので参考にしてください。

八綱弁証とは何か

 

 ここまでが東洋医学三大古典ですが、これ以外に2つ加えて東洋医学五大古典と言うこともあります。

『黄帝三部鍼灸甲乙経』(こうていさんぶしんきゅうこうおつきょう)

『難経』(なんぎょう)

 

 『黄帝三部鍼灸甲乙経』は正式名が長いので、『鍼灸甲乙経』や『甲乙経』とだけで表現をされることがあります。この書籍は、『素問』、『霊枢』、『明堂孔穴針灸治要』を参考にして書かれたとされているもので、ツボの書籍と言われています。

 

 『霊枢』に経脈の話しは出てくるのですが、ツボの話しは非常に少ないので、ツボに関する学習をしようとするのであれば、『甲乙経』が必要になります。『甲乙経』では、ツボの作用と意味、鍼灸の仕方が書かれているので、ツボの学習では必須の書籍となります。

 

 『難経』は経絡治療の中で非常によく使われているもので、日本の流派でよく使われているものなので、重視されています。中国書籍の中でも『難経』の話しは見られるのですが、他の重要な書籍もあるので、それほど重視されていないのではないかと思います。

 

 内容としては、非常に短い文章で、疑問に対して答えるというもので、例えば、有名なところでは内臓の解剖はどのぐらいか?という質問に対して答えが書いてあったりします。

 

 読み込もうと思うと大変ですが、文章も短く分かりやすい内容が多いので、読みやすい書籍の一つではないかと思いますよ。

 

 古典を勉強しようとすると、なかなかやる気が出ない人もいるかもしれませんが、『霊枢』と『難経』は実用書の部分も多いので、この2冊を読んでみるのもいいかもしれません。

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