陰虚は精血の不足によって生じやすく、陽虚は気の不足によって生じやすい傾向があるので、臓腑の性質によって陽虚と陰虚を起こしやすいかどうかがわかります。
陰虚は身体の持っている冷やす力不足してしまっている状態なので、身体がほてりやすい状態になります。陽虚は身体の持っている温める力不足してしまっている状態なので、身体が冷えやすい状態になります。陰虚と陽虚については過去のブログを参考にしてください。
陰虚は水と関係している臓腑に生じやすい傾向があるので、精血津液に関係している臓腑に起こりやすいと言えます。精血津液に関しては以下を参考にして下さい。
「気血津液弁証」
「精と精気の違い」
例えば、脾でも陰虚が生じますが、脾は気血津液精を生成している臓なので陰虚は比較的生じにくいと言えます。代わりに気の働きを大きく関係をしやすく、昇清という昇る性質が強いので、気虚と陽虚が生じやすい臓になります。脾の表裏である胃は地面から生成されるということで、陰の力が強い水穀と大きく関係をしやすいので、陰虚が生じやすいところになります。
「脾の働き」
肝は血を貯蔵している臓で、気の不足は生じにくいですが、血の不足が生じやすい傾向があるので、血不足からの陰不足が生じやすい臓になります。臓腑弁証でも肝血虚、肝陰虚の名前はよく出てきますし、肝陰虚から生じてくる肝陽亢進(肝陽上亢)もよく出てきています。
「肝の働き」
「肝虚は血虚」
心は血の運行と大きく関係する臓で、血が滋養する精神(神志)とも関係をしやすいので、血の不足が生じやすい臓になりますが、気の不足も生じやすいという傾向があるので、陽虚と陰虚が生じやすい臓になります。
「心の働き」
肺は主気という宗氣の生成に関与をしているので、気の不足が生じやすいところになるのですが、呼吸と主気という気を生成することにも関与をしているので、陽気の不足は生じにくいという特徴があります。気虚があっても陽虚がない特徴的な臓になります。肺は、水の上源と言われるように水が豊富にないといけない所なので、陰気の不足が生じやすいところなので、陰虚も生じやすい臓になります。燥邪という水(陰気)を損傷しやすい働きには弱いということから陰虚が生じやすい臓です。
「肺の働き」
腎は蔵精という働きがあるので、精の不足は陰気の不足につながりやすいのですが、精は原気にも変化をするので、気の不足も生じやすいです。腎は陰陽の根源、水火の宅とも言われ、身体の寒熱バランスを整える働きがあるので、陰虚と陽虚は両方とも生じやすい臓の一つになります。
「腎の働き」
ここまで書いているように、陰虚と陽虚は、臓の持つ生理機能や特徴と大きく関係をしやすいので、基本の生理機能と特徴をしっかりと抑えておくと陰虚と陽虚に対するイメージが出やすくなるので、どの臓の問題かを考えやすいものになります。
陰虚と陽虚は身体の寒熱バランスを見る上でも大切なので、『傷寒論』の中にも裏虚寒・裏虚熱という表現で多く出てきているものなので、昔から人の身体は寒熱バランスが大切だと考えていたのだと思います。