東洋医学を学んでいると頻繁にみかける言葉に気逆と逆気がありますが、何が違うのでしょうか?
気逆は「気が逆になる」ということで、逆気は「気が逆になる」ということを示します。何だよ、同じじゃないかと思った方もいるかもしれませんというより、誰が見ても同じですよね。東洋医学では、用語に違いがあっても同じような意味になるものがあり、気逆と逆気も用語に違いがあっても意味は同じになります。
気逆に関しては、「気逆という考え方」というブログで書いていますが、気逆という言葉を用いていく場合は、特定の症状と関係することが多く、身体の中にある気の状態と臓の働きについてまとめてあるものになります。気の話や臓の働きに関しては以下のブログを参考にしてください。
「気の分類」
「気の種類」
「蔵象のまとめ」
気逆を学ぶときには、臓腑についてもそうですが、気血津液弁証という身体の気血の問題に何が生じているのかを判断するときに役立つものになります。普段は気血の状態について考えることがあっても、気逆は症状と関係をするので特徴的でもありますが、頭の中に入るまでには時間がかかるのではないでしょうか。
私も学校で気逆という話は聞いたことがあるような気がするのですが、あくまで気がするだけなのでそれほど集中して学習した記憶がありません。中医学の書籍を読んでいると当たり前のように存在しているので、段々と慣れてきて忘れなくなったという状態ですね。
中医学は近年の中国でまとめられたやり方で細かくは「中医学」のブログを参考にしてください。
気逆は気血津液弁証との関係があるというのはこれで分ると思いますが、逆気は気逆と使い方が違うので混乱しやすいものですね。同じ意味なのに使いところが違うのはどういうことだと思うでしょうが、そういう物なので仕方がないのです。
逆気という漢字を見るのは、「逆気而泄」という一文で目にすることが多いと思います。さてさて、どこにこんな一文があるかと言うと、経絡経穴の話の中で目にする内容になります。
経絡経穴は経絡に何のツボがあるかを学んでいくのですが、ツボにはいろいろな作用だけではなく、名前もいろいろと付けられています。例えば、ツボは一人の人と同じなので、正式な名前があるのはもちろんですが、東京に住んでいる・鍼灸師・男性というように複数の呼び方が存在しているものがあります。
「逆気而泄」が出てくるのは、五兪穴・五行穴という分類の合穴というところで出てきています。ツボの中で合穴という名前が付くものは、「逆気而泄」という症状に対して治療効果があるということになります。
逆気は、のぼせ・悪心・嘔吐・咳などのことで、泄は下痢のことなので、体調が悪くて、頭がのぼせていて下痢もしてしまった場合には、合穴で治療を行うことになります。
気逆についてのブログを読んだ方からしたら、気逆と逆気は同じ症状ではないかと気づいたと思いますが、同じで構わないものなのです。
逆気という言葉は、古典文献の中にも見られているもので、身体には気がスムーズに流れている必要があるが、それが崩れてしまった状態を逆という言葉で表現をしたものになります。そのために、逆気は体調が悪いという内容が含まれているのですが、体調の悪さを全て逆気としてしまうと、意味が分からなくなってしまうので、頭部系に気が昇り過ぎてしまった状態を逆気という言葉で定義をしています。
逆気という言葉が古典文献に存在するのであれば、気逆という言葉がいらないのではないかと思う人がいるかもしれませんが、気逆という言葉は、気血津液弁証の中では、気の病態を示す用語として存在しているので無いと困ってしまうという事態になっています。
勉強する側からすれば、用語が何種類もあるのは混乱する原因にもなるのですが、東洋医学は長い歴史があるものなので、同じような意味に対して、違う用語というのは多く存在しています。
例えば、五兪穴・五行穴のときに説明したように、人に名前、住んでいる場所、仕事などで多くの呼び方が存在していますが、これと同じように単語だけでは説明できない状態になってしまうので、分類をしてその中で整理をするようにしています。
何を言っているのか分かりにくいと思いますが、例えば、人には名前がありますが、名前だけだと同姓同名がいたら、他に情報が必要になりますし、その場合は年齢というカテゴリ分けを加えたり、居住地を加えたり、職業を加えることによって、その人というのを断定しているので、気逆・逆気という言葉も同じ意味になりますが、使う場所が違うというのが重要になります。
勉強し始めてすぐは紛らわしくて面倒に感じることも多いのですが、覚えて慣れてしまえば便利なものは言葉になるので、気逆と逆気も使いなれると便利なものになりますよ。
五兪穴・五行穴についても話をしたので、治療対象も表として載せておきます。
井穴 | 滎穴 | 兪穴 | 経穴 | 合穴 | |
主治 | 心下満 | 身熱 | 体重節痛 | 喘咳寒熱 | 逆気而泄 |