刺絡と瀉血の違い

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 刺絡と瀉血の違いは、学生時代から卒業してしばらくは何が違うのか明確に分からずに、説明を出来ない状態でしたから、多くの初心者の方も同様なのではないかと思いますので、どういったところが違うのかをまとめてみたいとおもいます。

 今回、このブログを書くに当たり、日本刺絡学会の学術部より、ご指導を頂くことができたので、御礼を申し上げます。このブログの内容では個人の意見も含まれていますので、詳細を学習したい方は、日本刺絡学会のホームページをご覧ください。

「日本刺絡学会」

 

 まず、結論から言えば、瀉血は西洋医学、刺絡は東洋医学(中国伝統医学)になります。では何故、違うのかということに関してはこれから説明をしていきます。

 

 瀉血という治療方法は、昔から行われていた治療方法であり、近代の欧米では、全ての病に効果があるということで盛んに行われていましたが、医学が発達することによって、現在では特定の疾患に対してのみ行われる方法で静脈に対して行われていきます。

 

 刺絡という方法は、中国伝統医学いわゆる東洋医学の中の治療方法に存在している方法になります。東洋医学の治療方法は、鍼灸、漢方、あん摩、導引(運動)がありますが、鍼灸治療の中に刺絡という治療方法が分類をされていると言えますね。

 

 このように刺絡は、東洋医学という考え方の中で用いられている方法になるので、その根拠は東洋医学の思想が重要になり、現代医学の瀉血と考え方が大きく変わります。

 

 現代医学の瀉血では、血液の量が多くて症状が起きている、または今後に症状が発生してしまうと考える場合に使われる方法であり、一時的な対処として使用をされています。

 

 東洋医学では、血の流れが悪くなってしまった状態を血瘀(けつお)と呼び、停滞が強くなってしまったことによって、停滞物が発生をした状態を瘀血(おけつ)と呼んでいきますが、この血の停滞に用いていく方法が刺絡になります。

 

 血瘀・瘀血が発生した場合は、どこから治療を行っていくのかを考えていくことが大切になるのですが、末端部は循環が悪くなりやすいところなので、末端部である井穴、皮膚、細絡に用いられる方法になります。

 

 ここでは血という話で説明をしていますが、身体には気血津液があり、相互に大きく関係をしていて、末端部にも気津液はあるので、血に対する治療で、気・津液にも変化が生じるとも言えるので、血以外の治療にも用いていくことができます。

 

 東洋医学の気血が全身に循環するという概念では、経絡が重要になるのですが、経絡には経脈という太い物、そこから分岐する絡脈、さらに分岐していく孫絡(そんらく)という考え方があります。ですから刺絡の対象は末端部である孫絡と対応していると考えることができます。

 

 陰陽という概念で考えたときに、末端部と中心部は陽と陰に分けて考えることができ、末端部へ向かう力は陽、中心部に向かう力は陰と考えていくことができます。身体には陰陽、気血が循環をしているという考え方を大切にしていく中で、末端部は外と内という力が交差をする場所であり、陰陽が変化をする場所でもあるので、東洋医学の治療の中では重要な場所になります。

 

 こういったところが、瀉血と刺絡の考え方の中の違いになるので、西洋医学は瀉血、東洋医学では刺絡という言葉で分けています。

 

 刺絡と瀉血の違いということで悩むことが多いのは、出血をするということで考えたら同じではないかというところがありますが、東洋医学では、陰陽気血という考え方のもとで、刺絡を用いていくので、出血をしなくても、陰陽気血の調整が行われれば治療目的を達成したとも言えます。

 

 刺絡では三稜鍼という特殊な道具を使って行うので、鍼が出来るからと言っても、簡単には出来ない方法になります。学生時代だと、古代九鍼の一つに鋒鍼(ほうしん)というのを教科書の中で学習していきますが、この鋒鍼を現代では三稜鍼と呼んでいます。

 

 鋒鍼の使用する範囲としては、頑固な痛みとしびれに対して使うと書かれているので、頑固な痛みとしびれは陰陽気血の循環に障害が発生してしまったものだと考えていくことができます。

 

 私は、運がよく刺絡と三稜鍼を知っている人に教わることができましたが、すぐに扱えるようなものではないので、しっかり勉強と練習をしなければいけないものだと思いますので、講習会に通うのがお勧めですね。

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