ハンター管とジョン・ハンター

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 解剖学を学ぶときに、内転筋管のことをハンター管と呼びますが、ハンターとは一体だれなのでしょうか。

 解剖学は原始時代から存在していたのかもしれませんが、現代と同じような用語で使われるようになったのは、1500年代からだと考えられています。それまでは、解剖をした記載や絵も残っているのですが、身体を開けたらいろいろな物が出てくるので、一つ一つに用語をつけていかないと後で分からなくなってしまいますよね。

 

 例えば、新しい星を見つけたら名前を付けていいと言われますが、解剖学にも名前が多く付けられています。そのために、カタカナの用語も度々出てくるので勉強する側からすると、同じような名前が多くて意味が分かりにくい状態になりますね。

 

 漢字であれば、他の名前と同じようなものが付いていれば、どの辺りのことかという見当をつけられますが、カタカナだと全く見当出来ないですよね。

 

 例えば、内転筋管と言われれば、内転筋は大腿内側にあるので、大腿内側にある管のことではないかと予想することができますが、ハンター管と言われたら、さっぱり分からないですよね。

 

 病気も同じで、発見した人の名前が付けられるので、カタカナ用語として名前が出てくるので、意味が分からない物が増えていきます。日本人でも1912年に慢性甲状腺炎を発表した橋本博士がいるので、慢性甲状腺炎と言えば、橋本病になります。

 

 学習する側からすれば、慢性甲状腺炎という名前で統一してもらえれば、何の病気かというのがすぐにイメージしやすいのですが、名付けた人の名前だと、病気に関する知識として名前も覚えないといけないので、学習する側からしてみれば、労力になることでもありますね。

 

 歴史を知って、過去の人達に感謝をするというのはもちろん大切なのですが、勉強しているときでは、苦労をすることの一つですね。

 

 そんな原因を作った人にジョン・ハンターという解剖学者がいます。ジョン・ハンターは『ジキル博士とハイド氏』や『ドリトル先生』のモデルにもなったということで、ジョン・ハンターの伝記があります。

『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』

 私自身は出版された頃に変わった書籍があるものだなということ気になっていたのですが、『ジキル博士とハイド氏』や『ドリトル先生』は読んだことがないし、解剖学の歴史をそこまで知りたいという気持ちがなかったので、読まずにいたのですが、数年前にふと図書館で検索をかけたらあったので借りて読んでみました。

 

 気になった本は、データとしてまとめておいて、購入するときなどに検索に使っているのですが、たまたま図書館で検索をかけたら出てきたのですよね。

 

 買った訳ではないですが、借りてみたので、読んでみるかと思ったのですが、最初の数ページを見てカタカナがよく出てくるから読みにくいなと思って、一度、閉じてしまいました。

 

 カタカナが多いと名前を覚えるのも大変ですし、面倒に感じてしまうことが多いのですよね。

 

 図書館から借りた物は当たり前ですが、期限があるので、返却日が近づいてきたので、一気に読んだのですが、意外と面白い書籍でした。ジョン・ハンターは1728年から1793年に生きていた人なので、その当時の医療に対する考え方も書かれているので、医療全体の歴史も学べました。

 

 亡くなったのが1793年なので、今から考えると、250年前の医療はすごく原始的で危険な状態だったのだというのが分かります。例えば、水銀は危険な物というのは現在では当たり前の知識になっていますが、その当時では水銀による治療や梅毒の感染が当たり前の状態だったというのが分かりました。

 

 たった250年という時間しかないので、現在では、画像で身体の中を見ることが出来るし、感染症が起きた場合は、原因の菌やウイルスを見つけて、治療薬を作ることが出来るので、科学技術の進歩は速いし、すごい物だと思いましたね。

 

 ジョン・ハンターの話からそれてしまいましたが、その当時は解剖学の重要性は低く捉えられている中で、遺体を探して積極的に解剖をしていって、その情報をまとめた功績は凄いことだと思います。

 

 解剖学が当たり前ではない時代に遺体を集めて解剖しているというのは、周りからしてみればおかしな人に見られて当然ですよね。しかも収集癖があって、珍しい動物などがあれば買って、手元に置いておくということなので、博物館としては勉強になりますが、近所に見たこともない動物などの標本が沢山あったら、知らない人からしてみれば怖いですよね。

 

 当時では変わり者として評価をされていた人が、自分の道を曲げずに生きたことをしっかりとまとめた書籍ですし、カタカタが多いですが、読みやすい書籍でしたね。

 

 変わり者と言われる人がイノベーションという革命を起こすというのはどの分野にも共通することかもしれないので、ビジネス書として読んで見てもいいのかもしれないですね。

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