背中、お腹の治療をするときには、お腹や手足のツボを使って治療することもありますが、背中から治療することも多いので、背中のツボを探すのに、棘突起が非常に大切になります。
解剖額で骨の構造を学習するのは当然ですが、脊柱を学んでいくときに、棘突起についても学んでいきます。鍼灸師も解剖学を学習することが必須なので、1年生の授業の中で学習することが多いと思います。
カイロプラクティックや整体では背骨の歪みを見ることが多いので、手技での治療者の中でも棘突起は重要な物になりますね。そんなに重要な棘突起なのですが、棘突起があるということと、棘突起に付着する筋肉は学んだ覚えがあるのですが、何のためにあるのかについては、習ったのかなという疑問が湧いてきて、棘突起の存在する意味について最近に考えてみました。
棘突起は脊柱という構造の中の、各椎体の構造に含まれているのですが、椎体は身体の中心となり、S字状態のカーブを描いているので、上下の動きからの衝撃を吸収する働きがあります。他には、椎間板というクッションが椎体の間に存在しているので、S字状という構造と椎間板で衝撃吸収を行っています。
椎体には他には横突起がありますが、棘突起と同じような働きがあります。横突起と棘突起の働きは簡単に言ってしまえば、筋肉がひっぱるための土台としての役割があります。そんなの筋肉が付着をしているから当たり前だと思うかもしれませんが、どういう方向への動きに関与をしているのかを知っておくのは必要かなと思います。
横突起と棘突起は体幹の伸展・回旋に大きく関与をしています。身体の構造は骨でできていて、筋肉がひっぱっていくことに身体の動きが出てきますが、付着をする部位というのが重要で、その働きは他にも機能をしていきます。
例えば、上腕についてくる広背筋と言う筋肉は、起始がT6~L5の棘突起・仙骨・腸骨で、停止は上腕骨に付着をしていきますが、広背筋が働くと、肩関節の伸展・内旋・内転していくことができます。
動くためには筋肉が起始・停止にしっかりと付着をしていないと筋肉が短くなったときに、筋肉が切れてしまうか、構造が壊れてしまうので、筋肉の起始・停止の付着は非常に強いです。
例えば、二つのペンをゴムで接着している状態ですが、あまりに強い力を加えてしまえば、ゴムが切れてしまうか、接着している部分からゴムが取れてしまいますよね。
人の身体の筋肉の起始・停止は非常に大きな力が加わることになるのですが、構造が壊れてしまうことが少ないです。壊れてしまった場合で、付着部に問題が出てしまえば、はく離骨折、筋肉が切れてしまえば肉離れになってしまいます。
先ほどの広背筋の話に戻ると、広背筋が短くなって力を発揮すれば、肩関節の伸展・内旋・内転をすることができますが、さらに大きな力を発揮しようとしたときには、その他の筋肉の働きが重要になります。
今回は棘突起について考えていくので、広背筋が強く収縮したときには、T6~L5の棘突起にも力が作用することになります。例えば、右側の広背筋が強く収縮すると、上腕骨とT6~L5の距離を縮めようとする力が強くなりますが、強くなり過ぎてしまえば、棘突起が右側に移動をしていってしまいます。
棘突起が強く右側にひっぱられることになると、ややオーバーに表現をすると、身体が回旋をしてしまっていきます。極端に言えば、右腕でドアを強く握って、肩関節を強く伸展させようとしてもドアは固定をされているので、肩関節の伸展が出来なくなってしまいます。
さらに広背筋を強く収縮させたら肩関節を伸展できなくても身体を前に出していって、棘突起の右側をドアに近づけるようにすれば、広背筋を短くしていくことが可能です。その時に、左側の肩や背中は、棘突起を右側に動かしてしまったので、ドアから身体が離れるような状態になってしまいます。
こういった普段の身体の使い方の癖が棘突起に現れるので、整体やカイロでは棘突起の歪みを重視し、普段の生活習慣について考え、治療と予後指導を行っています。
身体が移動してしまえば、力をうまく発揮できない状態にもなってしまうので、本来は棘突起が右側に移動しないように、反対側の筋肉が棘突起を左に引くようにしていくと、右の広背筋にかかる力が増えるので、身体のバランスがついていきます。
棘突起は身体の動きで言えば、正中に存在しているものなので、身体の支点にもなるので、前後・左右・回旋の動きの中では非常に重要な働きを持っていきます。もし、棘突起がなければ、筋肉がついていくところがなくなるので、身体も動かせない状態になってしまいますね。
側弯症の方だと、手術で棘突起の動きがなくなってしまうことがありますが、そうなってしまうと、身体の力を他で助けたりしにくくなってしまうので、全身の筋肉が硬くなっていることが多いですね。
整体やカイロに関わらず、鍼灸でも督脈という経脈が左右にひっぱられてしまうと考えれば、どの経脈の問題が発生をしているのか考えることが出来るので、督脈の触診として棘突起の並びはしっかりと触れるようになることが重要だと思います。解剖学は臨床に出てからも大切なので、何度も忘れないように勉強するのが重要だと思います。解剖学に関してはこちらのブログでも書いています。